第3話
早めに起きたが、どうする
腹を満たして排出すべきもの済ませた後、考える
そして雪舟を引いて洞窟へ向かう
洞窟の大きな穴は丸太を組み合わせた扉で塞がれている
両側には丸太の壁があり天井もある
扉の内側から声とは聞こえない怒号がもれている
その近くにキングストンが居て誰かと話をしている
大勢いる中で、自分に気づくと人をかき分けてやってくる
「来たか、雪舟まで持ってくるとは。」
キングストンは困惑した顔をする
「自分の天幕の場所に置いていればいい。」
「すまなかった。」
「気にするな。悪いがもうしばらく待ってくれ、やることが終わったら人を紹介する。」
またも返事を聞くそぶりもなく戻っていった
ちょっとの間を置いて毛の中に目と口があるというような顔の男が大声で話し始めた
「挨拶はなしだ。今日もいつものように扉を開けるぞ。弓隊準備しろ。長槍隊、構えろ。扉を開けろぉ!」
大きな扉が少しずつ動いていく
隙間に細いものが飛び込んでいく
いつの間にかキングストンが側にいる
「弓矢を見るのは初めてか。」
「ああそうだ、弓矢というのか。」
きっと大口をあけて観ていたに違いない
「飛んでいくのが矢で、そいつを放つのが弓だ。」
扉からでかい何かが現れた
「弓隊さがれ、長槍隊前進!」
先ほどと同じ声が響いた
矢をこれでもかと射こまれた
それは矢がささりまくった
長槍ごと何人かを吹き飛ばす
「あいつ、あれで急所を守ってたのか。」
キングストンが呻く
その
闇に隠れる寸前、片目がつぶれた
扉が完全に開ききった
中から出てくる獲物はもう居ない
何人かが入り口付近を確認する
「よし、朝の狩りは終わりだ。回収班と護衛班は作業開始。油断するな。止めを刺すまで、死んでないと思え。」
「終わったか、やっとだな。」
キングストンが充実したように言う
「けが人がでたニャ。」
いつのまにか後ろからイドゥナが喋る
「自分の時は気を付ける、それしかないな。」
キングストンは平気な顔で言う
「どうだ、感想は?」
「驚いた、大勢で作業、役割を分担して、凄すぎてよく分からない。」
上手く答えられない
本当に、自分は何も解っていなかった
「さあ、紹介するぜ、いくぞ。」
キングストンに付いていくが、イドゥナは別方向に行こうとしている
「じゃあニャー」
また、変な返しをして去っていく
「イドゥナは寝に帰ったか、あいつはいつも寝てる。」
少し怒ったように言ってこっちを見る
「グディソンを紹介するぞ。そうだな、ここの、ボンボネーラに一番詳しい人だ。」
グディソンは横長の甲羅を頭、背中、腰、背面の至る所に張り付けた男だったが、少し小柄で、ゆっくりと話し出す
すでにキングストンは帰った
「トラフォードさん、朝食は食べました?」
「食べましたけど。」
「私はこれからなんですよ。食べながら話しましょう。」
連れられた場所は少し離れた場所で、広く区分けされた場所がいくつかあった
先ほど仕留めた
「炎がある。」
雪が降り、ガクガク震えてこのまま死んでしまうのではないか
そんな日に父と一緒に木を燃やして暖をとったことを思い出した
「
グディソンがうれしそうな声で言う
「
「おやおやそうですか。今日は最高の日になりますね。」
その言葉通り、今までに食べたことがない味だった
ひたすら腹につめこんでしまった
朝食は食べたはずなのに、気づいたら夕食の時間になっていた
おかげでグディソンの話はぼんやりとしか頭に残っていない
張ったばかりの天幕に横になる
『
そんなことを言いながら一緒に組み立ててくれた
『なぜ、グディソンはトラフォード“さん”と呼ぶんだ?』
『それは尊敬される相手に対して使う言葉です。』
『ん?』
『ずいぶん遠くから来たようですねトラフォード“さん”』
『そうするしかなかった、そうでなければ死んでいた。』
やるべきことをやった
そう思い込もうとする
『私も遠くから来ました。ここは天国ですよ。』
あの言葉には同意する
『私は、ここをもっと何とかしたいと思っています。この場所しか知ら居ない人も居ます。』
グディソン、若作りしているが、何歳だ?
『広い世界を知っている人、あなたみたいな人の力が必要です。』
『そんな、……自分が育った場所とここに来る途中しか知らない、なんで自分なんかが。』きっと、自分は天国には行けないだろう
そんな思いを巡らすうちに寝てしまったようだ
目が覚めると地獄ではなかった
「起きるニャー。」
変な音がする
イドゥナに連れられて朝食を食べる
「何をするのか決まったのかニャ?」
「…正直判らない。」
グディソンから具体的には言われてない
どうしょうか
それにしても
「
「イドゥナは語尾が変だ。」
「これは家の方言ニャ、お母さんのそのまたお母さんのずっと前のお母さんからの遺言ニャ。」
「なんだそれは。最初はまともだったぞ。」
「猫をかぶってたニャ。」
「猫ってなんだ。獣人のことじゃないのか?」
「あたいも知らない、見たことニャイ。」
「意味が解らない…。」
「とりあえず、ボンボネーラを見て回るニャ。」
食事を済ませてうしろをついていく
しっぽが左右に揺れている
広場があった
弓矢の練習をしている者がいる、他にも訓練している者がいた
黄色と黒、キングストンだ
長い槍ではなく、短槍を扱っている
「イドゥナ、たまに起きてるかと思えば散歩か。」
「ひどいニャ、トラフォードを案内しているニャ。」
ひたすら槍をふるっている
「俺は、やつを倒す。片目の
「あれは強いのか?」
やっと動きをとめて話し出す
「やつは手ごわい、奴の話をよく聞く。長生きして経験豊富なんだろう。今朝は居なかったが。」
「ニャッ、キングストンは今朝も仕事したのか?今日は休みなのに。」
「イドゥナ、たるんでるぞ。俺は対策案を考えている。提案して認められれば、奴を倒す。」再び、槍をかまえて、訓練を続ける
その目の瞳孔が鋭く尖っている
「交易班を見に行くニャ。」
訓練を見るのに飽きたらしく、別の場所に連れて行かされる
「交易班が帰ってきたのか?」
「匂いで判るニャ。」
連れられた先には、何台もの荷車があり、荷物が降ろされている
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。