第16話 コラボすたーと!
●REC――――《GM》専用攻略済みダンジョン1階層
コラボ当日。リリィ先輩の魔法で連れてこられたのは、とあるダンジョンの中だった。
「ここはわたしがダン協から買い取った、わたし専用ダンジョン」
ダンジョンは購入できる。
ダンジョン協会は、ダンジョンが発生した場合、発生した土地の所有者からダンジョンの所有権を買い取り、それから一般探索者に解放する。この時、上位の探索者に調査が依頼される事があるが、何を基準で依頼してるのか俺はよく知らない。俺の初配信は依頼パターンだ。
そして、ダンジョンを攻略した場合どうなるか?
選択肢は二つ。
一つ目はダン協から多額の報奨金を即金で貰うケース。
上位のダンジョン探索者が超金持ちなのは、ここら辺も影響している。
もう一つは攻略済みダンジョンを買い取るケースだ。ダンジョンを、莫大な金を払って所有権ごと貰い受ける。上位の探索者かつ、金を稼ぎまくってる歴戦の猛者にしかできない事だ。
リリィ先輩が言ってるのはこれだろう。俺も幾つかのダンジョンを攻略してるため、金には困ってない。しかし、探索者になって一年の新人ではダンジョンを買えるような額ではないのだ。いつか、自分のダンジョンから配信したいな。
「よく買えましたね……」
「ふふ、先輩は大金持ちなのだ」
可愛い。彼女が人気なのも納得の可愛さだ。俺とシトリンに足りなかったのは可愛さだった……??
「それで、今日はどうするんですか?」
コラボ内容は何も聞かされてない。
「ん、シル坊は喋りがかたい。配信の時みたくかるくして??」
まあいいか。どうせ配信するんだし。
「分かったよ。コレで良い?」
「まんぞく。シトちゃんはもっと喋っていいよ?」
「シトリンどうかした?」
様子が変だ。リリィ先輩の事をジト目で見てる。
「……何でもございません。今日はよろしくお願いします」
ふむ。最近のシトリンはよく分からない。不思議ちゃん度合いに拍車がかかっている。家ではキリッとしたメイドさんなんだが。
「とりあえず、DMサイトの設定で【配信】スキルは限定公開でつけたけど、良いんだよね」
「ん、今日は長丁場だから。あとでアーカイブを編集してコラボ動画としてこうかいする」
ちなみに今回のコラボについて、視聴者達は、まだ何も知らされてない。いやぁ楽しみだな。S級同士のコラボなんて話題性抜群だ。今は俺の初配信で、S級への注目度がただでさえ高まってる。人気の起爆剤になってくれるだろう。
余談だが、俺はあの初配信後、毎日エゴサをしている。そして俺を褒める言葉を見て身悶えするのが、最近の日課である。
「それで、コラボの内容はなんですか?」
リリィ先輩はゲーム好きだ。配信でもゲームばっかりやっている。確か、最近流行りのVRだとか、 ARだとかを用いた新技術ゲームを好んでいたはずだ。
てっきり、コラボゲーム配信でもするのかと思えば、連れてこられたのはダンジョンの中。なぜ??
「よし、これより! 『ダンジョンブートキャンプゲーム』をとりおこなう!!」
え?
「新兵一号! 新人S級探索者シルバー!」
え???
「へんじ!」
「は、はい!」
勢いで返事してしまったが何コレ?? ロリっ子の先輩が声を張り上げてるのは可愛くはあるが、よく分からない。いつの間にか、軍服に着替えてるし。【換装】スキルか?
「二号! 新人メイドのシトリン!」
「メイドですが、何か?」
「よし、これで縁ができたな! アカウント登録完了! 【遊戯魔法】、『げーむめいく』すたーと!」
リリィ先輩の固有魔法が発動し、目の前が光に包まれる。
展開が急すぎやしませんか????
***
目を開けると、俺とシトリンは迷彩模様の軍服に着替えさせられていた。周囲には俺達と同じく軍服に身を包んだ恰幅のいいマッチョメンが立ち並んでいる。なんで???
『よお新入り。地獄のブートキャンプへようこそ。俺はジョンソン。お前らの先輩ブートキャンパーだぜ?』
俺の隣に立っていたマッチョ――ジョンソンが肩を組んで話しかけてくる。ブートキャンプやってる人の事をブートキャンパーって言うのか。初めて知った。
『ここでは教官の言う事が絶対だ。逆らう者は死、あるのみ。お前らも気を付けろよ……ほら、教官がやってきた』
テクテクと、並んでいる俺達の前に歩いてやってきたのは――――
「そろっているな! 私はS級教官のリリィ! これから三日間。おまえたち雑兵を、奈落でも通用するレベルまできたえあげてやる。けいれー!」
すぐさまビシッと周囲のマッチョメン――ジョンソンも含めて――が敬礼をした。
「む、おまえ、おそいな! 死ね!」
キョロキョロと周囲を見渡していて、敬礼が遅れた俺は先輩に殺された。
シトリンはしれっと敬礼をして乗り越えていた。
なんでぇ??
――こうして俺の初コラボ……三日間のダンジョンブートキャンプゲームはスタートした。
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