3.休日デート(途中で同級生に見つかりかけて……

//SE 街の喧騒と貴方のやや速い足音。


「あ、来た」

「遅ーい。こういう時に待たせる男の子はモテないらしいよ? 少女漫画の受け売りだけど」

「――え? 『待ち合わせの十五分前なのに、どうしているんだ。もしかして、ずっと待ってたのか』?」

「そ、それは、その……ち、ちょっと、先に寄る所があったからっ! ただ、それだけだからっ!!」

「ほーら! 細かいことを気にする男の子もモテないよっ! さ、早く行こう!!」


//SE 光が貴方の手を取り、一緒に街の中を歩き始める。


「ふふ♪ こうして貴方とお出かけするの、久しぶりだねー。最近は土日ず~っと雨だったし。貴方もレポートで忙しかったし……」

「だ・か・ら! 今日は夜まで付き合ってもらうよ? 覚悟してよね」

「さ、まずは」


//SE 光が更に身体を密着させ、声も近づく。


「今日の格好、どうかな? 似合ってる?? 学校の友達には『王子様! 完璧っ!!』って褒められたんだけど」

「――え? 『キャップに、シャツと長ズボンは凄くカッコいいけど……以前買ってたワンピースはどうしたの? 楽しみにしてたのに』??」

「…………た、試しはしたんだよ、うん。ママも、似合ってるって褒めてくれたし」

「だけど、さ」

「――……や、やっぱり、此処まで着て来るの、は、はずかしくて、その……ボ、ボクにはああいう可愛い服、似合わないし…………」//消え入りそうな声で。

「! ち、ちょっと、いきなりそんな大声出さないでっ」

「も、もうっ……人前で、『可愛いし、絶対似合うっ!!』だなんて…………う、嬉しいけど……バカ」


//SE 横断歩道で立ち止まる。

隣の貴方へ気を取り直した光が問う。


「それで――ボクが行きたい場所は伝えたと思うけど、貴方は? 何処へ行きたいの??」

「――へっ?」

の私服を選びに行きたい?」

「マ、ママにも頼まれて、軍資金も託された?? ただし『可愛い』系限定???」

「くっ! は、謀ったねっ!? お、幼馴染を嵌めるなんてっ!」

「……え? 『行きたくないなら、無理強いはしない』」

「………………」

「――い、行く」//逡巡しながらも、嬉しさが勝り小声で。


//SE 横断歩道が青になり、人々が渡り始める。

隣の光が顔を伏せブツブツ。


「……もう、ママったら。別に、こーいう援護いらないのに」

「! あ、うん。青だね。渡ろー。そうしようー」



//SE 自動ドアが開き、二人して中へ。


「わーわーわー! この服、可愛い~♪ あ、こっちのも!!」//さっきまで躊躇っていたのに、いざ店に行くとはしゃぐ光。

「ねね」

「どっちが良いかな?」

「――ふふふ~♪ 真剣な顔~。普段もそうならもっとモテるよ? きっと」

「じゃあ、ちょっと試着してみる――待って」//切迫感のある声。

「……まずい。こっちへ!」


//試着室のカーテンが閉まる音。

光と密着する。小声。


「しー! 静かにしてっ!!」 

「……さっき、ちらっと見えたの」

「うん。学校の子達だと思う。あの子達も週末、買い物へ行くって言ってたし。でもまさか、同じ店だなんて……。」

「……え? 『俺は隠れる必要があるのか??』」

「……だって」

「(そんなの――貴方をあの子達に見せたくないからに決まってるでしょーっ! 絶対っ、絡まれたら色々言われるんだからっ! 私以上に、貴方がっ! 少しは自分の容姿を確認しろー。家の鏡を見ないんですかーっ! この鈍感ーっ!! 朴念仁ーっ!!! )」//光の内心の声。


//少しだけ光が離れ、隙間から様子を窺う。


「……行った、みたいね」

「はぁ……驚いちゃった」

「…………(でも、身体大きかったな)」//光の内心の声。

「え? な、何でもないよ。うん、大丈夫。ちょっと、熱くなっただけ」

「今度こそ着替えるね」


//着替え終わり、試着室のカーテンが開く音。


「その……どう、かな…………?」

「! そっか。えへへ♪」

「え? 『そのまま着て帰れば?』」

「……えっと、新しい帽子も買っていいなら」

「あ、あと! あと、ね」

「――……帰り、ずっと手を繋いでくれる?」



//SE 小洒落たジャズが流れる、少しだけ高級なカフェ。


「えへへ♪ 何だかんだ沢山買っちゃったね。あの子達に見つかりそうになった時は、ドキドキしちゃったけど。ん~このショートケーキ、おいし~」


//SE カップに光が紅茶を注ぐ音。

ソーサーがテーブルへ置かれる。


「今度、家では着てあげるから」

「……え? 『外でも着ないと駄目?』『今のワンピースも凄く似合ってる??』」

「…………そ、そう、かな?」

「な、なら……あ、貴方とお出かけする時だけは、わ、私もこういう服を着るようにする、ね?」

「か、勘違いしないで。ま、毎回じゃないからっ! まだ……その、は、恥ずかしいし」

「ねぇ……何でもかんでも『可愛い』『似合ってる』って言えば済むって、思ってない?」//ジト目をして、不服気に。

「! ひゃん」//突然、貴方に口元をフキンで拭われ驚く光。

「い、いきなり、な、何――」

「え? クリームが唇についてたから」

「……う~」

「…………バカ」

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