第14話 怒り
「やっ…やめて…」
上着…スラックス…次々とアキの身から剥がされた衣類が投げ捨てられていく。
「止めろ!」
低いその声に男たちの手が止まる。
アキは危うく丸裸にされる手前で何とか助かった。
「その女は特務だ。わたしが直々に尋問する。お楽しみはそれからにしろ」
現れた男は見事なまでのプラチナブロンドで、天然の巻き毛が肩にかかっている。
アキを抑え込んでいた男たちが慌てて立ち上がり敬礼する。バイザーで目元を隠したこの男がどうやら幹部らしい。
「その女を連れていけ」
彼女は男の部下に無理矢理立たされ、引きずられるように連れて行かれた。
グレジアを殲滅させた後、逸る気持ちを抑えつつもスパルナをフル加速させリュブラナへと急いだ。
アレスの現在位置を示す信号は暫く前から動きがない。厭な胸騒ぎが段々と大きくなっていくのが判る。
その予感が適中した事をリュブラナの街に入った所で確信する。
アレスが止まっているのが見えた。
グロックはスパルナをアレスの側へ降下させると、直ぐ様状況を確認していく。
アレスに損傷はないが、後部のハッチが開いたままで、中を確認しても彼女はいない。
辺りを見回すと少し離れた場所に彼女の軍服が散らばっているのが見えた。
当然、彼女が自分で脱いだ訳じゃないのは明らかだ。
グロックの背筋に冷たいものが走る。
それと同時に、彼女の軍服を握る手が怒りで震え出す。
グロックは愛艦スヴァンヴィートの独立回路であるザクレウスへと通信する。
「ザレス! 総攻撃だ!!」
彼はアレスに向かいながら尚も指示を飛ばす。
「俺はノース訓練生の救出にむかう!
ザレスは上から容赦なく叩き潰せ!出来るだけ派手にやって敵の目をそっちに向けてくれ。塵ひとつ残すなよ!!」
動き出したアレスは根拠地リュブラナに向け物凄い轟音をたてて侵攻を始めた。
自分への激しい怒りと後悔が込み上げてくる。
『罠かもしれないと判ってて簡単に行かせた俺のミスだ!』
グロックは自分の配慮の無さを呪った。
『俺は…こんな謂れのない辱めを受けさせる為に行かせた訳じゃない!』
リュブラナの根拠地に近づくと攻撃を開始した。ザレスの総攻撃の中、彼女を救出し退却しなければならない。
『仮にも俺の部下に手をかけたんだ!
一人残らず報いを受けずに済むと思うなよ!!』
グロックは砲撃をしながらアキが居る方向へとアレスを進ませていく。
決して攻撃の手は緩めない。容赦なく攻撃する。逃げ惑うテロリストをアレスで踏み潰し装甲が鮮血で塗れても構わず進んでいった。
一度戦闘モードに火が着いたグロックは誰にも止められない。
『通信機はそのままでいてくれよ…』
アキの手首につけている通信機が奪われていなければ彼女の元に着けるはずである。
せめて命だけはと、目の前に向かってくる敵を倒しながら進んでいった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます