第13話 誤算
翌日、二人は別行動で作戦にあたる。
グロックは小型戦闘機スパルナで出撃。
アキがキレウを敲いた後、グレジアを殲滅したグロックがリュブラナでアキと合流する手筈だ。
キレウは小さな拠点なので、作戦通り上手くやってくれさえすれば殲滅は簡単だ。
だがリュブラナは…見かけは小さな軍事工場の様だが多分、もっと規模は大きい筈。
寧ろ…罠の可能性が高い…
今回の任務は、元々決まっていたスパイ捜しを先送りし、アキを転属させるために選んだ仕事だった。
『俺がグレジアを敲いた後、直ぐに向かえば支障はない』
しかし、グロックの中に、何かが引っ掛かっていた。
それを払拭するように先へ急いだ。
グロックとの作戦通り、キレウの拠点は全滅した。
夥しい数の死体が散らばっている。
アキは胸が悪くなり、今にも吐きそうだったが、次の地点に向かうアレスの中で何とか気持ちを奮い立たせていた。
『これは…これからのわたしの第一歩なんだ。
ここで引いちゃいけない…』
そこは経験のない素人のすること、どんなに綿密な計画であったとしても完璧に熟せる筈もなく、
アレスがリュブラナの街に入った途端、待ち構えていたテロリスト等に包囲されあっさり捕まってしまった。
屈強な男たちにアキはアレスから引きずり出され地面に思いきり叩きつけられた。
左の頬は擦りむけ、打ち付けられた躰はいたるところが痛みで悲鳴を上げる。
「まさか乗っていたのが女一人だとはな…」
「全くだ…俺たちも舐められたもんだぜ…」
腹ばいの状態で背中には男が体重をかけて片足を乗せているので、地面に押し付けられ、顔も満足に上げられない。
周りを何人もの男たちに囲まれ、皆気色の悪い目でアキを眺めている。
「よくもキレウを落としてくれたな」
男が背中に乗せた足で、思いきり踏みつけた。
「ああっ!」
踏みつけられた激痛と圧迫で、胃の中のものを吐きそうになる。
『だ…大丈夫!大佐が必ず来てくれる…それまで時間を稼がないと…』
アキは涙目になりながらも、何とか打開しようと考える。
だが、特出した能力がある訳でもない19の女の子が荒々しい男たちに敵う筈もない。
猫が鼠を弄ぶように、力で捻じ伏せられ甚振られた。
「はっ…あっ…あっ…」
男たちに叩かれ、蹴られ、いいようにあしらわれ躰中の痛みと共にアキの意識も朦朧としてくる。目尻に涙が滲んでくる。
『た…大佐が…大佐が来るまで…』
アキはもう一人で立ち上がることも出来ない。
「嬢ちゃん、キレウを落とした礼はまだ済んじゃいないぜ」
意味ありげな笑いがあちこちから聞こえて来る。
力を振り絞って逃げようとする彼女に男が手をかける。
散々甚振られ汚れてしまったアキの軍服は、見る間に剥ぎ取られていった。
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