第503話 subroutine ホエルン_鬼教官もニッコリ
◇◇◇ ホエルン視点 ◇◇◇
パパのあまりの
軍の規則に則れば、上官への抗命は犯罪行為である。それも帝室令嬢に向かっての抗命だ。
軍人としての生き方が染みついる私には考えの及ばない凶行を、夫は躊躇うことなく実行した。
驚いたことに、私に抱きついてまでエレナ様に抵抗したのだ。
愛を感じた。
とても深くて大きな愛だ。
強引に妻の座についた自覚はある。だからそれほど愛されていないと思っていた。
しかし、現実はちがった。
エレナ様はブラッドノアの軍事機能を掌握していない。しかし、その気になれば懲罰システムでパパを葬ることができる。
士官学校を出ていなくても、軍属なら誰でも知っていることだ。
それなのに彼は帝室令嬢の命令に背いた。
女として、これ以上の幸せはない。
目が見えないのはいただけないけど、おかげで夫から多めの愛を注がれている。
まあ、見方によっては手厚い介助を受けていると受け取れるが……。
そこは置いておこう。人間、慣れないことに注力すると、かえって碌な結果にならない。
いつにも増して激甘な愛情に甘んじる。
人の目なんてどうでもいい。楽しんだ者勝ちだ。
若いピンク色の世界を楽しんでいると、無粋なパパの側付きが喋りかけてきた。
「閣下、アデル陛下がお待ちです。お急ぎください」
「ホルニッセ、わかっている。でもホエルンは目が見えないから段差を登るのに時間がかかるんだ」
「でしたら自分が、奥様の介助をします」
「それは困る。これは夫の仕事だ」
「ですが、時間が……」
パパのお荷物になりたくないので、ホルニッセの提案を受け入れようとしたら、
「ホエルン、俺の首に手をまわしてくれ」
「手?」
「いいから」
言われた通り、彼の首に手をまわした。
次の瞬間、身体がふわりと持ち上がり…………。
これ知ってるわ! 伝説のお姫さま抱っこよねッ!
ワイルド過ぎる夫に、年甲斐も無く興奮してしまった。
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