第393話 レンタル探偵



 気になることがあったので、冒険者ギルドにやってきた。

 あることを確認するためだ。


 今回は護衛のジェイクに加えて、優秀なブレーン、リュール少尉を連れてきている。彼なら謎を解き明かしてくれるだろう。


 慣れた口髭を指で摘まみながら、受付嬢に問う。

「カマンベール男爵ですが、依頼のことでいくつか聞きたいことがありまして」


 俺の素性を知っている受付嬢は、例の如くクスリと笑って、

「込み入った話のようなので、奥へどうぞ」


「そうしてくれると助かる」


 応接室に通され、ギルドマスターであるメラニィから、


 それとは別に、ある事件についても知らされた。

 ダーモットが酒場で起こった暴動に巻き込まれて死んだのだ。


「暴動? あまり聞かないな。治安は良くなっているはずだけど」


「ええ、私も初めてです。酒の勢いでのケンカはままあるのですが、暴動が起きるなんて……。戦災で受けた国民の心の傷はまだ癒えていないのでしょうね」


「…………」


 本当に暴動だろうか? 岩場で取り逃した一人。ダーモットの死。そういえば、彼は何か伝えようとしていた。それが関係しているのかも。


 尋ねるべき相手はすでに死んでいる。真相は闇のなか。謎は解けるどころか、深まるばかりだ。


「リュール少尉、わかるか?」


「なんとなくは……しかし動機がわからない。確定ではありませんね」


「少尉でもわからないのか……」


「そう悲観されなくても、あとワンピースですべて解明できます」


「ワンピース?」


「ええ、ワンピース。俺の仮定を証明する物証があれば」


 査問会で見たのと同じ、自信に溢れる顔で答える。

 この男を信じよう。


 となると物証を探す必要性が出てくるな。


 探すといえば、あの三人組だろう。

 ちょうど冒険者ギルドにきたことだし、聞いてみよう。


「『紅蓮の咆哮』の人たちと連絡はとれますか? 頼み事――依頼を出したいので、一度話をしたいんですか」


 メラニィではなく、職員の一人が答える。

「ああ、あの三人ならギルドにいますよ。採取した素材の鑑定待ちです。ホールへ行けば会えると思いますよ」


 あの三人組とは縁があるらしい。


「ありがとう、急いでいるからこれで。いくぞリュール少尉!」


「ちょっと、出されたお茶くらい飲ませてくださいよ」


「あとでいくらでも飲ませてやるって。いまは時間が惜しい」


「ちぇっ、俺も話があったのに…………」


 渋る少尉の手を引いて、俺は応接室を出た。


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