第378話 新商品



 叡智の魔女の手助けもあり、レールという難題をクリアした。


 これで列車開発に乗り出せる!


 あとは問題点である動力の選定と効率化を進めれば完成だ。動力機構に関しては、古代地球史のデータがある。それをもとに試行錯誤すればいい。丸い金属の加工も再現したコンパスを用いれば問題ない!

 完成は見えている。あとはトライ・アンド・エラーを繰り返すだけ!

 だから適当に人員を見つくろって『一任』した。


 靴も量産体制がととのい、乳液も完成が見えてきた。気難しいエメリッヒの注文――マッサージチェアも最終段階の試作品を納入済み。


 ふぅ、一仕事終えた。


 残るは医療機器とスパだけ。

 医療機器の開発は、まだまだ時間がかかるだろう。スパについては名産品やこれといった産業の少ない北での開発となった。収入の乏しい北での目玉――観光資源にする予定だ。


「ぶー、それ狡くない?」

 エレナ事務官があまりにも不満を垂れるので、試験運用は王族の庭ロイヤルガーデンで行うことにした。


「それだと毎日入れないじゃない」


「まあまあ、あまり大っぴらにすると観光資源としての価値が無くなりますから」


「そうね。アルシエラにはその分、働いてもらいましょう」

 なかなか渋い王妃様だ。


 ともあれ、かなりの品々を開発した。

 ついでといってはなんだが、衣料品にもあらたな革命が起きた。伸縮素材だ。


 この惑星では石油がダブついている。魔石というエネルギー源があるので、環境に優しくない資源の出番は無いだろう。それだとあまりにも可哀想なので、おいしくいただいた。

 これによりビニールや合成ゴムが量産できるようになった。あぶれた鉱物油は工業機械のメンテにまわして、つかえない粗悪な油はスライムの餌になっている。


 魔物とはいえ、彼らも生きている。粗悪な油を処理してくれているので、十日に一度はご褒美にスイーツを与えている。

 喜んでいるのかどうかはわからないが、感謝する気持ちは大事。


 スライムたちの働きもあって、産業廃棄物についての心配は無い。


 石油から生み出される樹脂の恩恵は大きく、ベルトや吊りバンド無しでもズボンが穿けるようになった。


 合成ゴムの発明を皮切りに化学繊維も。ジャージ、スパッツ、スポブラ、タイツなどが市場に登場した。


 恩恵はそれだけではない。工業機械のベルト機構、消しゴムが誕生した。


 エレナ事務官はゴム製の髪留めに狂気乱舞し、女性騎士たちはフィットするスポーツウェアに大喜びした。カーラも胸の揺れないスポーティブラに満足の様子。ホエルンも胸の谷間を生かせるブラにやる気を出している。


 スパッツやタイツがあれば、マリンの野暮ったい長ハカマをミニスカタイプに勧められる。

 いいことずくめだ。


 みんなハッピー、俺もハッピーな開発となった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る