第333話 subroutine ロッコ_久々の仕事


◇◇◇ ロッコ視点 ◇◇◇


 旦那が王族になって、アッシらもお役御免かと思っていた。


 のんびりと王都の道端で昼寝をしていたら、見覚えのある小僧が声をかけてきた。

 アッシらと同じく、旦那に助けてもらった小僧だ。東部にいたはずなのに、なんで遠く離れた王都に?


「……ロッコ。お願い助けて」


「おめぇさんは、たしか…………」


「ヤグーだよ」


「東部の孤児院にいたはずじゃなかったのか! 追い出されたのかッ!」


「ちがうよ。領主様の知り合いのところで働いている」


 孤児院を追い出されたのではないと知りほっとする。


「で、おめぇさんが、アッシに一体なんの用だ?」


「領主様が大変なんだ! びしょびしょの服を着せられて、はやくしないと縄でぶらされげられるんだ!」


「おいおい、落ち着け。アッシにもわかるように説明してくれ」


 動揺していることから、ただごとでないのは理解できた。しかし、喋っている内容がわからない。小僧には難しい話らしい。となると王城で起こっていることか?


 ヤグーは鼻息荒いながらも、落ち着こうと大きく肩で息をする。


 そして、思い出したかのように一通の手紙と大金貨を差しだした。

 子供が大金貨だぜ! おったまげた!


「おめぇ、大金貨なんてどこで手に入れた」


「お姉ちゃんが渡せって」


「お姉ちゃんって?」


「おっぱいがバインバインで短い髪のお母さんみたいなお姉ちゃん」


 意味がわからねぇ。


「名前は?」


「難しい名前だった」


「…………」


 難しいか……たぶん貴族だろう。小僧からしてお姉さんということは十代~二十代。三十ってことは無いだろう。ああ、でもお母さんとなるとな……。


 とりあえず手紙を読む。

 旦那が収賄の罪に問われていることが判明したッ!


「あの旦那を嵌めようって輩がいるのか……貴族様ってのは信じられねぇ阿呆だな」


 国のてっぺんにいるお偉方の話だ。てっきりアッシらの出る幕はないと思っていたが……こりゃ、アッシら向きの仕事だな。


 一度、ヤグーの言う姉ちゃんって貴族様に会って話をしたいところだが、小僧を遣いに出すということは、敵に目をつけられているって証拠だ。


 迂闊に出ていったら、足下をすくわれちまう。


「ヤグー、そのお姉ちゃんに返事を頼む。〝はい〟だ」


「それだけでいいの?」


「ああ、それだけでいい。間違えるなよ〝はい〟だぞ!」


「うん、わかった」


「確認するぞ。返事は?」


「うん」


「…………」


 手紙の裏に炭で返事を書いて、ヤグーに手渡した。


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