第319話 会議①
久々にアデルから招集を受ける。
なんでも正式な会議をやるらしい。
やることは宇宙とあまり変わらないが、平時の会議内容はほとんど報告に近いらしい。
楽な会議の分、マナーに厳しいらしい。宇宙であろうと、この惑星であろうと、重苦しい場であることは一緒だ。
玉座の間へ行くと、群臣が立ち並んでいた。
王都を奪還してから知ったのだが、正式の場では、よほどのことが無い限り立つ位置が決まっている。
俺の場所は……。
自分の位置を探していると、
「閣下、こちらです」
気の利く部下が声をかけてくれた。財務卿の姪エルメンガルドだ。内務卿の令息エドガーも一緒だ。
二人は内務卿、財務卿が気を利かせてくれて、正式な場には必ずお供するようになっている。敵対派閥対策だ。
慌てず動じず急いで進む。王族の威厳も忘れずにっ、と。
「エルメ、ありがとう。おかげで恥をかかずにすんだよ」
「当然のことをしたまでです」
深窓令嬢然とした財務卿の姪はやんわりと優雅に答えた。
立ち位置につき待つこと十分。アデル陛下を先頭にエレナ事務官、三姉妹、四卿とつづく。それにリッシュら大臣と、なぜか最後にエメリッヒもいた。
我らが軍事顧問殿は大臣級の扱いらしい。
内務卿が声を張りあげる。
「これより、アデル陛下の御前で会議を行う。本日の議題は王都の復興、および南部の現状についてとなっている。誰ぞ、これ以外に重要な議題はあるか?」
「「「…………」」」
沈黙する群臣。
アデルは、じっくりと時間をかけて群臣を見渡す。それが終わると軽く手をあげた。
それを合図に会議開始が宣言されて、会議のお題目だ。
「ほかに議題も無いようなので、会議を始める」
王都の復興は九割五分の完成と、ほぼ復旧したと報告され、それから目覚ましい活躍をした者たちが評せられる。
そこには開墾・灌漑事業を手掛けたジェイクやトベラの名も挙げられた。これによりジェイクは準男爵、トベラは領地の追贈となった。ちなみにマロッツェの領地問題も解決した。先代の王とアデルとの板挟みだった問題が解消される。
ミルマン子爵も肩の荷が降りるだろう。いいことだ。
「スレイド侯の手柄は無視できん。爵位を上げる。侯爵の上、公爵だ。王女二人と婚姻したのだ、文句はあるまい」
それから魔道具開発でライフラインに貢献した俺に、褒美の番が回ってきたのだが、またしても敵対派閥が噛みついてきた。
「王族は、臣下と手柄を争ってはならぬのでは?」
革新派の媒妁貴族カニンシンだ。
王道派のマスハスは、王都攻めの不手際や息子の不祥事もあり、あまり強く言えないようだ。
対して、カニンシンは金銭的な貢献で、自派閥の元帥暗殺や王都攻めの不手際について追及されないらしい。その証拠に、さらなる文句を言ってきた。
「
比較的あっさりと引き下がったと思うと、今度は別の貴族が発言した。
「臣も、よからぬ噂を聞いておりますぞ。なんでもスレイド侯とよく似た人物が城下で女性と逢い引きしているとか……。それも一人ではないと聞いております」
お忍びデートのことだ! そこまでやるか? 絶対、ティーレたちのことを知ってて言ってるだろう。……まるで質の悪いストーカーだ。
言い訳しようにも、王都復旧という大事な時期にデートしていたと言えるわけがない。またしても敵対派閥にしてやられた。
窮地に立たされ沈黙することしかできない。
追撃はさらにつづく。
資金の出所や、有りもしない
それらが終わると今度は東部の領地に関して、監督が行き届いていないだとか、商会と
よくそこまで、でっち上げられるものだと感心してしまうくらいだ。
おそらく数打ちゃ当たる的な考えで列挙しているのだろう。しかし、俺に疚しいところは無い!
その辺は王族たちも理解してくれているはずだ。
なので挑発に乗らず辛抱するに務めた。
「なぜ第二王都から運べば良い食糧を東部から運んでくるのですか? 東部で商いをしている商会を通していろいろ購入している様子。王都の経済を考えるのならば、王都の商会をつかうべきでは?」
頭が痛い。
その理屈はわからないでもない。しかし浅はかだ。それをすれば近隣から食糧を買い尽くすと形になってしまう。農業が休耕状態だったので、直近の収穫量も見込めず、食料品は品薄になり価格が跳ね上がる。物価高騰だ。
商人は儲けられるだろうが多くの民が苦しむ。
そのことを考えず金の話ばかり、まったく買爵貴族らしい発想だ。
商会の件もそうだ。王都の商会を優遇しようものなら、先回りして生活に必要な物資を買い占めるだろう。カルテルを組んで高値で売れば、莫大な利益になる。
行き渡るべき物資の値段をつり上げると、これも民が苦しむ。
おそらくだが、革新派はそのことを王家の失策と槍玉にあげるつもりだろう。
見え透いた汚い手……と言いたいところだが、事前にエレナ事務官から知らされていたから、俺でもわかるのだが……。ほかの貴族の反応はどうだろう?
まあ、敵対派閥がどんなに頑張っても帝室令嬢には敵わないのだが……。
アデルと並び座る、頼れる上官へ視線を飛ばす。
相手もこちらを見ており、返事をするように軽く頷いた。
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