第244話 黒歴史が解放されました



 会議室から出ようとしたら、エレナ事務官に引き留められた。

「スレイド大尉、私とエスペランザ准将はしばらく留守にするから、その間のことは任せるわ」


「な、なんで! どこへ行くんですか?」


「武器の調達よ。北の古都カヴァロに小型艦を置いてあるから、そこからいろいろとね」


 小型艦か……さすがに俺の乗ってきた降下艇みたいには運べないな。


「だったらドローンを持ってきてください。俺の手持ちは軍の裏切り者の監視につけていて、情報を得る手段がないんですよ」


「わかってるって、一応、十基ほど起動させるつもりよ」


「そんなにあるんですか?」


「宇宙仕様だけど、必要な分を起動させても二〇基ほど余るわ」


「セントリーは?」


「自立型のセントリーガンね。あれの在庫はあと十六基」


「そっちはどれくらい持ってくるつもりですか?」


「私の手持ちが四基あるから、追加で四基ってところかしら」


「高出力のハンドグレネードとかありませんかね。エネルギーパックとレーザーガンは腐るほどありますから」


「ホエルン大佐から聞いてるわ。塩湖に落ちた区画から回収して千人分ほどあるのよね」


「ええ、それくらい」


「この際だから、ナノマシンを譲渡したお嬢様方にも外部野を支給したら? 暴動鎮圧用のレーザーガンだったら、個人認証のセキュリティはかかってないし、面倒臭い手続き無しでつかえるわよ」


「それも考えています。ですが、軍事用のアプリを使用できないとロスが多いのでは……」


「だったら限定的にアプリを使用できるようにしましょう」


「そんなことできるんですか?」


「可能よ。帝国法で緊急の場合に限り、公爵以上の許可があれば軍事アプリを使用できるって特例があるの」


 そ、そんな特例があったんだ。そういえば、フェムトの奴、ティーレにあれこれデータを解放していたな。アレも特例とか?


「願ったり叶ったりですね。これでティーレたちも安全だ」


「そう喜んでばかりもいられないわよ」


「どういう意味ですか」


「情報を共有するから個人データを覗き見られる可能性があるの」


「それなら大丈夫です。セキュリティはガッチガチにしてありますから。AIが叛乱を起こさない限り大丈夫ですよ」


「ならいいわ。ちょっとはやい気もするけど、訓練も兼ねて何日か軍事アプリを解放するわね」


「お願いします」


 安易に考えていた俺だが、これが原因となって個人情報が流出した。それも俺とリブだけ。


 犯人は特定できていないが、目星はついている。俺とリブの妻たちだ…………。

 闇へほうむりたい過去の黒歴史まで掘り起こされて、俺とリブは恥辱ちじょくと後悔にむせび泣いたのはいうまでもないだろう。


 こうして俺たちは、ますます妻たちに頭があがらなくなってしまった…………。

 ……結婚は墓場である。


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