第240話 subroutine ガーキ_報酬減額
◆◆◆ ガーキ視点 ◆◆◆
スッコの野郎が、ベルーガの王族を殺した!
これで聖王国の王様からたんまりと褒美がもらえる!
そう思って、俺様はタガーズのことを放って王都に舞い戻ったのだが……。
「暗殺の褒美? 陛下が命じたのは現国王アデルとその姉妹の暗殺だ。先の国王の兄は勘定に入ってないぞ」
「でも王族は王族だろう。こっちは部下を潜り込ませるのに、いろいろと金をつかってるんだ。せめて経費くらいはくれよ」
貴族様に下げたくもない頭をペコペコ下げた。その甲斐あって、小金貨一枚をもらう。
ちげーだろ! ゴミみたいな王族でも二人も殺したんだぞ! この千倍もらっても足りないぜ! それをクソ貴族どもがぁ!
気にくわねぇから、闇に
「どいつもこいつもシケてやがる」
十人近く貴族様をぶっ殺したのに、大金貨一〇枚も稼げなかった。本当にクソみたいな貴族様だ。きっとマキナの国教になってる星方教会に金が流れているんだろう。
「次は教会の豚どもか……聖堂騎士は強いからな、リターンが見合わねぇ。聖堂騎士の下の聖騎士も面倒だし、あいつらは金目のものは持ってないだろう。……聖職者様は金目の物を持っている。信仰心の塊で、弱いし馬鹿だ。あいつらは成金以上に承認欲求が強く、それを見せびらかしたがる生き物。ある意味いいカモと言える」
「おい、ガーキ考えていることが漏れてるぞ」
自称親友のイカサが、嬉しそうな顔で言う。
どうやらこいつも乗り気らしい。
「王都の外で網を張ろう」
「名案だな。やるのは街道か?」
「街道だ。教会の連中は馬鹿が多い。ろくに警戒せず目立つ街道を行くだろうさ。ベルーガの王都攻めが始まる。さぞかし多くの馬鹿どもが逃げてくるだろう」
「そこを美味しくいただく……いい案だ」
「だろう?」
「ところでガーキ、スッコに渡した水晶玉。勿体なかったな」
「あの逃走用の転移魔法を封じ込めた水晶か?」
「そう、それ。売ればかなりの額になったんじゃないか」
「本物だったらな」
「ん、どういうことだ?」
馬鹿な男だ。イカサはスッコに渡したのが、ただの水晶玉だと気づいていない。
「スッコに渡したのはな、偽物だ。ただの水晶玉。見た目は綺麗だがよ、魔法を封じられるほどの強度はねぇ。おまけにカス魔法すら込めちゃいねぇ」
「おいおい、そんなガラクタ持たせて暗殺に行かせたのか?」
「途中で死なれちゃ勿体ないだろう。目当ての王族にたどり着くまでに死ぬと思ってたからな」
「ガーキ、おまえ酷ぇ奴だな」
「酷いも何もスッコは仲間じゃないからな」
「ハハッ、ちがいねぇ」
ぶっ殺した貴族様から頂戴した金をどう分配しようかと考えていると、タガーズの野郎が戻ってきやがった。
チッ、空気の読めない男だ。
「ガーキ、ベルーガの王族暗殺の報酬はもう手に入ったか!」
「ハズレだ。国王とその姉妹じゃないと払えないんだと」
「そんなことならスッコに魔法を封じ込めた水晶玉なんかやらなきゃよかったのに」
この馬鹿も気づいてないらしい。
イカサのほうをチラリと見ると、自称親友のカスは笑っていた。いい機会だ、第二のスッコを仕込もう。
眉を上下させてイカサに知らせる。
するとカスはニヤついて応えた。
「そうなんだよ。おかげでとんだ出費だぜ。イカサ、それで支払いをすませておいてくれ、俺はこっちの支払いをすませておく」
分配した稼ぎを、支払いだと嘘をついた。
「ガーキ、俺も支払いがあるんだ金をくれ」
「んだよぉ、タガーズの出費なんてたかが知れてるだろう。俺らは高価な水晶玉――魔道具の仕入れや、貴族連中に取り入るためにかなりの額を払ってんだ。ちょっとは遠慮しろや」
「で、でもベルーガの王族を二人も殺ったんだ。
勘の鋭い男だ。面倒なのでぶっ殺そうかと思ったが、短剣に伸ばす手をイカサが掴んだ。
役立たずのカスが喋る。
『ガーキ、タガーズはいつでも殺せる。第二のスッコとしてつかおう』
なかなか気の合う仲間だ。
イカサの案に乗ることにした。ただし、第二のスッコはイカサだ。
俺の手元には扱いやすい馬鹿だけでいい。妙に頭が切れるのはシャマだけでいい。つまり、イカサは要らないカードだ。大切に持っていてもブタの役にしかならないゴミ札。
そろそろベルーガとマキナの決戦の日も近い。イカサには最後の稼ぎ頭になってもらおう。
心優しい俺様はいざという時のためにタガーズという盾も忘れない。運がよければ
ああ、俺はなんて優しい男なんだ!
問題はイカサだが……。こいつはタガーズみたいな脳筋とちがってうまくやってくれるだろう。
いつも大口を叩いているイカサのことだ、スッコよりもうまくやるはず。あの農民上がりのカスみたいに失望させてくれないことを切に願う。
さあ、イカサよ。おまえの命はいくらになる!
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