第217話 subroutine スッコ_偽マリモンと見下げた仲間たち



 スッコといういやしい農民の名前を捨てて、俺は貴族様になった。それも男爵や子爵みたいな下っ端じゃない伯爵だ!


 優秀な頭脳を持つ俺だから成り上がることができた。無能で馬鹿な平民ではこうはいかないだろう。


 ああ、自分の才能が怖ろしい。


 ディラ家の跡取り息子マリモンを殺して、入れ替わったのっだが、ガーキという悪党に弱みを握られたのは手痛い失敗だ。


 まあ、それすらも利用するのが優秀な俺なんだけどな。


 手始めにガーキの手下を借りた。タガーズとかいう豚みたいな鼻をした醜男ブサメンだ。手下どものまとめ役をしている。

 手間賃は法外だったが、荒事に慣れてた連中。これで自分の手を汚すことなく悪事を働けるわけだ。


 ベルーガ西部――マーフォーク地方は俺の庭だ。金を持っていそうな貴族の居場所は知っている。農民たちに代わって、奴らに仕返しをしてやるつもりだ。頂くのは金と命。税という名目で領民どもから金を絞り取ってきた汚い連中だ。たんまり持ってるだろう。


 俺の殺したマリモンみたいな引きこもりのクソでも、魔宝石を持っていやがった。当主ともなればそれ以上のお宝を持っているはず。シケた銅貨や銀貨の稼ぎじゃない。金貨以上の稼ぎだ!

 考えるだけでよだれが垂れてくるぜッ!


「おい、スッコどこの貴族を襲うんだ?」


 タガーズの豚が生意気に人の言葉をしゃべった。それにしても臭い息だ。


「男爵は貧乏だ。辺境伯は腕の立つ奴が多い。狙うなら伯爵か領地持ちの子爵だ」


「チョロそうな金持ちを狙うんだな!」


「当然だ。俺がもぐり込んで手引きをする。屋敷の連中をぶっ殺してくれ」


「大丈夫か? 俺たちは十人もいないぞ。伯爵の私兵を相手に勝てる自信はない」


 タガーズの豚野郎が急に怖じ気づく。つかえねぇブタだ。


「馬鹿野郎、正面からやり合うんじゃねーよ。頭をつかうんだよ、頭を」


「頭突きか?」


「ちげーよ、寝込みを襲うんだよ」


「おまえ、頭いいな」


 ガーキが周りに無能しかいないとため息をつくはずだ。信頼できる手下がこれなんだからな……。

 面倒臭ぇ連中だが、物は考えようだ。側近はタガーズ程度のウスノロばかり。うまく立ち回ればガーキに次ぐ権力者になれるかもしれない。そうなれば、あとは奴の警戒が薄れるのを待って、後ろからブッスリやれば……。ガーキの手下と財宝は俺の物! 悪くないな。


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