第47話 変わる世界

【適正?】探索者協会について語ろう【ピンハネ?】


52365:

まさかの!


52366:

ちょっとコア破壊してくる


52367:

>> 52366 通報しました

冗談はさておき、コアを壊す必要はないそうだぞ


52368:

だれか情報まとめて

スキル覚醒についてだけでいい




52375:

・特定の条件を満たせばダンジョンの外でもスキルが使えるようになる。これを便宜上、柚子缶と光の螺旋は「スキル覚醒」って呼んでる


・覚醒する条件は確定していないが、コアルーム内でコアを嘗める(コアペロ)ことだと思われる


・スキルが覚醒するとスキルに対する理解度、解像度が高くなり威力や範囲、燃費などが飛躍的に上昇する。ダンジョンの外でスキルが使えるようになるというのはその副次的効果と考えられる


・覚醒に必要なコアにダンジョンの深さやボスの強さ、有無が関係あるかは不明。例えば柚子缶カンナの場合は鎌倉ダンジョンで破壊したコアの破片を一瞬嘗めただけで覚醒したが、光の螺旋サクヤの場合はボスどころかモンスターすらいない超小規模ダンジョンの小石のようなコアを数時間口にいれたら覚醒した


52376:

>> 52375

サンクス!


52377:

毒にも薬にもならないはずの超小規模ダンジョンが一転して大当たりになる日が来るとはな


52378:

田舎のばーちゃん家の畑に超小規模ダンジョンあったかもしれない! 明日行ってみるわ!


52379:

俺も爺さんの持ってる山にダンジョンあるって聞いたことあるかも


52380:

たった数時間で都会住みと田舎民の立場が逆転とかまじでヤバすぎ情報だったな


52381:

結局コアペロは確定でいいのか?


52382:

サンプルが少ないから詳細条件までは分からないけれど、少なくとも柚子缶と光の螺旋はコアを嘗めることで覚醒したんだろ


52383:

詳細はこれから検証していくんだろうな


52384:

柚子缶と光の螺旋も協会の検証にできる限り協力していくって言ってたから細かい条件とかどんどん判明していくだろ


52385:

でもその条件が開示されるかどうかは分からないよね


52386:

協会が隠して一般公開はしないかもな


52387:

いやするだろ?

しないのか?


52388:

分からん。でも公開しないならなんで今日はさわりだけでもぶちまけたのか謎になる


52389:

しかも配信してたから全世界に同時に情報公開だろ?


52390:

よく分かんないんだけど、こんな重要な情報を個人の判断でペラペラ喋って良かったん?


52391:

一応協会側とは相談してるって言ってただろ


52392:52390

それでもだよ。確かにダンジョン外でスキル使ってたのは気になってたけど、こんな風にコアさえあれば誰でもそれが出来るようになるとかそんな情報を軽々しく公開するとかちょっと考えが足りなく無いか?


52393:

>> 52392 お前みたいなタイプは情報開示してなかったらそれはそれで文句言ってたんだろうな


52394:52390

>>52393 それは否定しきれないけど、情報が無かったら気になるのは仕方ないだろ

俺が言ってるのは国家機密クラスの情報が政府を通さずに全世界に公開されたことに対する責任だよ


52395:

そもそもドラゴン討伐の時点で世界中にダンジョンの外でスキルを使っている事がバレちゃってるんだから隠すも何も無くない? 下手に黙ってて無理する人が出るのは良くないって説明は個人的には納得感あったけど


52396:

これだけでかい話なんだからそりゃ賛否はあるだろうさ


52397:

だよな

俺たちはそれを受けてどうするかだよ


52398:

確かに文句言ったところで情報は出ちまったんだしそれを受けて何するかだよな


52399:

協会が検証するとしたら、また一般人探索者のモニター募集とかしないかな


52400:

>>52399 協会所属の探索者を優先するだろ




52515:

仮にスキル進化リングって拾えたらいくらで売れるかな?


52516:

ああ、柚子缶マフユが使ってたやつか


52517:

鎌倉ダンジョンのボスが落としたって言ってたな


52518:

もう鎌倉ダンジョンは無いから同じ方法での入手はできないけど、もしも他のダンジョンで手に入ったら一生遊んで暮らせるぐらいの価値はあるんじゃ無い?


52519:

海外には買取り募集出してるサイトはあるぞ

$1,000,000,000,000 だってさ


52520:

十億ドルって日本円にしていくら?


52521:

よく見ろ、一兆ドルだ。今の為替レートに一兆掛ければいいから計算簡単だな


52522:

日本の国家予算軽く超えてね?


52523:

強い探索者が使えばそれぐらいの価値はあるってことだろうな


52524:

それを柚子缶は使い潰したのか……


52525:

まあ柚子缶の使用実績があってこその一兆ドルだろうから、柚子缶が入手してすぐに売りに出してたらかなり買い叩かれていたとは思うけどな


52526:

一兆ドルって百人で分けてもひとり当たり百億ドルだろ? これからの探索者業はますます夢が広がるな


------------------------------


女性配信探索者について語るスレ


19996:

光の螺旋もこのスレでいいの?


19997:

細かい事はみんな気にしてないよ

アリスたんハアハア


19998:19996

>> 19997

キモいけどサンクス!

柚子缶と光の螺旋は全員がスキル覚醒ってやつをやってるでいいんだよな?


19999:

今日の会見を信じるならそうなるな


20000:

やばすぎるだろ……誰でもスキルの威力があがるうえにダンジョンの外でもスキルが使えるとかパラダイムシフトってレベルじゃねーぞ


20001:

まだ細かい条件がわからないのと、そもそもどれだけの探索者がコアペロ出来るかって話ではあるけどな


20002:

コアペロってダンジョンコアを嘗めることだよな? いつの間にそんな言葉が作られたの?


20003:

柚子缶が会見直後にSNSに投稿した


20004:

「今日の記者会見配信、ご視聴ありがとうございました! 急な話でびっくりした人も多いと思いますが、正直私たちもよくわかってない事が多いです。コアペロするために無理なボスに挑んだりしないでくださいね!」


20005:

これ命名イヨちゃんだろ


20006:

わかるw


20007:

てか柚子缶と光の螺旋ってこれまでもダンジョンの外でスキルが使えてたんだよな? なんか悪さしてたりしたのかな?


20008:

ダンジョンの外でスキルが使えてできる悪さってなんだよ


20009:

体育祭で『身体強化』して大活躍……とか


20010:

ささやかすぎてワロタw


20011:

言われて考えてみたけど、仮にダンジョンの外で自分のスキルが使えてもそんなに役に立つケースが想像できないな


20012:

基本的に武力だからな。日常生活で役に立つ場面ってあんまりないと思うわ


20013:

逆に言えばそう言った武力を行使できる人間がそこら中を闊歩するようなるのが問題なわけだが


20014:

結局ダンジョンの外ではスキル使用禁止の法律とかが出来そうな気はするな


20015:

そこまで考えて柚子缶も情報公開したのかな?


20016:

彼女達の場合は、ここで情報公開しなかったら危険だったってのもあるんじゃないか?


20017:

確かに、スキル覚醒の条件を知るために強行手段をとる組織とか国とかあるかもしれないから、そういったところに対して先に情報を渡しちゃったって考えもあるな


20018:

そんなヤベェ組織に情報公開するのってヤバくね?


20019:

遅かれ早かればれるなら全世界に対してイーブンな条件で情報を公開するって考えも分からないでもない


20020:

その辺りの意図も次の配信で話してくれると嬉しいんだけどな


20021:

配信といえば、柚子缶も光の螺旋も一気に100万人超えたな


20022:

探索配信よりもスキル覚醒のことを知りたいやつが大半だろうけどな……古参ファンとしては嬉しいけどちょっと複雑な気分だぜ


20023:

古参ファンなればこそ、変わらずに応援してやれよ


---------------------------


 総理官邸では政府重役達が集まり今後の政府としての対応について議論を白熱させていた。


「少なくともスキル使用に関する法規制は絶対必要だ」


「法律があっても警察取り締まる側もスキルが使える必要があるな」


「拳銃では対応不可能か?」


「スキル覚醒者の練度によるとしか言えないな。例えば光の螺旋や柚子缶がスキルを使って悪事を働いたとしよう。現場の警察官が取り押さえられるか? ノーだろう」


「あれを基準にしていいのか? ドラゴンと正面から戦って討伐する実力者だろう?」


「それぐらいを想定しておかなければ治安維持もままならないということだ。少なくとも多くの国民はあのレベルを想定するだろう」


 探索者はモンスターを倒すからこそ、強大な力を持っていても畏怖の対象とならない側面があった。剣を振るい炎を打ち出してもそれが自分に向かないから人々は探索者を認めていたし探索配信はエンターテイメントととなっていたが、ひとたびスキルによる犯罪が起こればそれは羊の群れに放たれた狼である。そうなれば大衆は全ての探索者を狼と見なし社会全体が探索者を忌避する流れになりかねない。


 既にダンジョンに依存している世の中で、そのような流れは当然好ましく無い。故に政府は悪意を持った覚醒者に対する強力な抑止力を持っていなければならない。


「正直、当面は柚子缶と光の螺旋に協力を仰ぐ事で乗り切るしか無いだろうな。何かあれば彼女達に制圧してもらう。今やドラゴンキラーとしてちょっとしたヒーローである彼女達なら、正義の味方の看板を背負ってもらうには相応しい広告塔にもなるだろう」

 

「並行して公安や自衛隊員の覚醒、ゆくゆくは現場警察官の覚醒を目指していくという流れでいくしかないな。一刻も早く覚醒条件を確定させなければ」


「協会とは既に調整中です」


「あとは人選か。もともとある程度スキルを使いこなせている人間の方が覚醒しやすいのか?」


「それも含めて検証が必要という話だ」


「ああそうだったな。全く、面倒な話だ」


 政府が一刻も早くスキルを覚醒させたいような立場の人間は、国を、つまりダンジョンの外を守るために訓練を積んできた者達だ。つまりスキルに対する練度は一般的な探索者達よりも低い。


「大企業と協力して覚醒条件を詰めるか?」


「まあ企業側もいい気はしないだろうが、補助金を出せばある程度は協力してくるか」


「むしろ企業側には数ヶ月は覚醒の検証をしないように通達するべきでは? 警察側に力がないのに一般人が先に覚醒するという事態を避けた方が良いかと」


「却下だ。どうせ禁止したところで勝手にやるだろう。そうであれば、いっそ協力して監視した方がいい」


 考える事は山積みだった。とにかく今は目の前の状況に対応するしかなく、そこに利権だの派閥だのを介入させる余裕は無い。それこそが探索者協会会長がスキル覚醒に関する情報をさっさと公開するべきと判断した理由のひとつであった。時間と状況に十分な余裕があればどうしたって金儲け考えてしまうのが政治家だが、それこそ災害時には信じられないほど迅速に最善手が打てるのもこの国のトップだったりする。その状況を強引に作り出した探索者協会会長は後年、「スキル覚醒の父」と呼ばれる事になる。


---------------------------


「……例の部隊はもうトーキョーに発ったか?」


「まだです」


「大統領からの命で計画は一旦中止だ。彼らをダンジョンに向かわせろ」


「何故ですか」


「例の娘達が記者会見を開いてダンジョン外でスキルを使う方法を開示した。ご丁寧に全世界に向けた配信でな。拉致して無理やり吐かせる前に、念のため検証しろとのことだ」


「配信? でまかせじゃないんですか」


「それを確かめるのが君と、君の部下達だ。正直あれだけ注目されている人間を拉致するリスクは低くないし、下手をすれば外交問題に発展する。

 先にコアを嘗める方法を試してからでも遅くはないだろうという事だ」


「コアを嘗める? 比喩ですか?」


「いや、ダンジョンコアを口に入れてキャンディーのように嘗めるとスキルが覚醒してどこでもスキルが使えるようになるそうだ。 アドレスを送るから配信を見てみろ。分かっていると思うが軍の回線は使うなよ」


「了解しました」


---------------------------


 コンコン、と病室の扉をノックする音が聞こえた。


「はい」


「ユズキ、入るぞ?」


 扉を開けて入ってきたのはユズキの兄、父、母の三人であった。


「遅くなってごめんな、お見舞いにきた」


「……わざわざありがとう。でも兄さん達は車で避難してたんじゃないの?」


「娘がドラゴンに立ち向かっている中、自分達だけさっさと逃げるわけないだろう」


「父さんの言う通りさ。とはいえあのまま残るって言ったらそれはそれでユズキ達が気にすると思ってね、素直に逃げたふりをしてホテルにとんぼ返りしてユズキ達が戦うところを見ていたんだよ」


 だからこれ返すな、と車のキーをユズキに手渡した。ユズキはキーを受け取ると小さく「バカ」と呟く。


「それにしても探索者って危ない仕事なのね。お母さん、ずっとハラハラして見てて何回も倒れそうになっちゃった。特にユズキが吹っ飛ばされちゃった時には思わず「ヒィッ!」って言って目を瞑っちゃったもの」


「母さん、隣で大変だったんだぜ」

  

「でもユズキ達のおかげでひとりも犠牲者が出なかったんですってね。テレビで言っていたんだけど、こんな都心で魔物溢れオーバーフローが起きて、しかもドラゴンなんてモンスターが出たって言うのに誰も死なずに済んだ事は奇跡なんですって。専門家の見立てでは何万、下手すれば何十万人って犠牲が出た可能性もあった中でこれは世界中の魔物溢れオーバーフロー対策のお手本になるかも知れないって」


「私達だけの力じゃないわ。被害が出なかったのは協会や自衛隊の人がきちんと避難させてくれたおかげよ」


「もちろんそうだけどね、それでも原因の大元を取り除いたのはあなた達でしょ? それは凄いことなんだからきちんと誇りなさい。お母さん達も鼻が高いんだから」


「……わかった。ありがと」


 ニッコリ笑い合うユズキと母。そこに父が声をかける。


「だけどくれぐれも無茶はするな。本当に、寿命が縮む想いをしたんだからな」


「うん、気を付ける」


「……記者会見もみたぞ。カンナさん、堂々としていたな」


「でしょ?」


「ああ、立派だった。……ユズキ」


「何?」


「ドラゴンは倒したが……だからこそ、これから色々と大変だろう。以前話したとき(※)にお前はそんなつもりはないと言っていたが、いつでもウチアマクラを頼ってくれていいからな。会社として云々ではなく、娘を護るのは親の役目なんだ。何かあったら遠慮なく言いなさい」

(第4章 7話)

 

 カンナさんも一緒にな、そう言って目を細める父に対してユズキは黙って頭を下げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る