夏の終わりに咲く花に
梅林 冬実
夏の終わりに咲く花に
太陽の熱にあてられて
萎れてしまった桔梗の群れ
「夏ももう終わりだね」
私の声に君は軽く微笑む
そうだね、なんてセリフは
遂に聞けなかった
ずっとずっと君が好きだった
ずっとずっと君だけを見ていた
だから
君に思いを打ち明け
受け止めてくれた時には
舞い上がるほどに嬉しかった
ずっと好きだった
うん
君の隣にいたい
いいよ
永久に忘れない 私の大切なものがたり
君の手をとって道なりに進む
君は黙りこくって
少しだけ空を仰いでみせ
夕方の風に吹かれている
握り返してよ
ちょっと前まで言えてた
ふざけた調子で
君は「ああ」と微笑んで
握り返してくれた
私がお願いしたからね
それをきいてくれたのね
萎れた桔梗に別れを告げて
私たちは道を歩く
夏の終わり 少しだけ強い風が吹く夕暮れ
君と歩く道
君は嘘吐きだね
そして私は愚かだ
私のことなんてちっとも好きじゃないくせに
好きって言ってって頼んだら
「好き」って言ってくれるんだもの
喜ぶななんて言われても無理よ
私は君のことが大好きだから
知ってるよ
私たちもう終わりなんでしょ
本当はね そんな気がしてた
そうじゃないかなって思ってた
でも気付かないふりをしてたの
迷いも不安も何もかも
心に仕舞い込んでた
君とこうしている間
私がずっと笑っていさえすれば
君に好きだと何度も伝えさえすれば
君と一緒にいられると
思い込みたかったんだね
嘘吐きは私か
君の本当の気持ちを知っているのに
知らん顔していたんだから
でもね
さよならの時「ごめんね」なんて
絶対言わない
私が君に打ち明けた思いに
嘘はないから
だから
さよならって言われても
「じゃぁね」って笑顔で言ってやる
萎れた桔梗
歩く君
握り返さない手を
それでも離さない私
私は嘘吐きだ
そして 愚かだ
夏の終わりに咲く花に 梅林 冬実 @umemomosakura333
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