第6話 放課後タイツで足先すりすり
「おはようございます。先生」
「はい、15分程度といったところでしょうか。そんなに時間は経っていませんよ」
「もう少しなでなでを? ふふっ、今日はとんでもなく甘えん坊さんですこと。わたしをからかってばかりの意地悪な先生はどこに行ったのかしら」
「冗談です♪ ああ、脚ですか? はい、とくにしびれたりはしてませんし、大丈夫です」
「気にしてくださってありがとうございます。嬉しいです」
「タイツの感触もクセになりそうですか? それなら本望。これで先生も立派なタイツマニアですね。こら、どさくさに紛れてにおいをかぐな」
「うーん、このままなでなでを続けてもいいんですけど。他にもなにかタイツを使ってしてほしいことはありますか?」
「え、今履いてるタイツですか? ま、まあ今日だけは特別に使わせてあげましょう。今更断ったところで、もう手遅れ感がありますし」
「NG行為? そ、それはあの……。ほ、本番、とか……? は、まだはやいと言いますか。えっと……。って、誰がむっつりですか!」
「とにかく! わたくしにできることであれば可能な限りのことはさせていただきます。もちろん、タイツを使ってですが!」
「はい、はい……え、ええええ!?」
「い、いいですか! 絶対後ろを見ないでくださいよ! 絶対ですよ!」
「それと、鼻呼吸も一切禁止します! に、ににに匂いなんて嗅ごうものならマジで人間として生まれてきたことを後悔させてやります!」
「ここまでするつもりなかったのに……。ひざ枕ですらこの黒田伊都、一世一代の大勝負だったのに。どうしてこんなことに……」
「な、なんでもありません。この黒田家の跡取りに二言はありません。ええありませんとも」
「そ、それではい、いきますよ」
「……あの、最後に確認なんですけど。ほ、本当に、ほんとのほんとーうに、いいのね!?」
「う、うう。もうどうにでもなれ……!」
ぎゅっと、手とも太ももとも違った生暖かく、ほんのり湿った感覚が両耳を覆った。
「ああ、わたし、本当に自分の足で先生の、お、お耳を……」
「わ、わかっています! 動かせばいいんでしょう! このヘンタイクソ教師!」
「まったくもう、まったくもう……!」
「恥ずかしすぎる……」
「……痛かったりしたら言ってくださいよ。こんなのやったことありませんし、その、加減とか、うまくできませんから」
「も、もっと強く!? このインラン教師!」
「んっ、んっ……はぁ。これ、思ってたより、脚が、疲れます。んっ、んっ……」
「ああもう……こんなの、死ぬまで一生お嫁にいけませんわ……」
「……え? な、ななななななな」
「何をおっしゃって!?」
「……本気ですの?」
「生まれ変わったその先も……? そんな冗談を女性に、ましてや自分の教え子に軽々しく言うものではありませ、ん……!」
「あら失礼、こんな状況でプロポーズまがいなことをしてくるあまりのバカさ加減に呆れてしまい、思わず足に力が」
「……分かっています。あなたが冗談でこんなことを言う方でないのは。十分に分かっています。当たり前です。わたしが入学した時から、決して短くない時間を過ごしてきたのですから」
「きっと他の誰にだって負けないくらい……一緒の時間を」
「……もう少し、時間をください」
「わたしが、わたしを好きになれるまで」
「仮面を被ったままでは、自分のこともあなたのことも、ちゃんと見てあげることができませんから」
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