第2話 聞いてください、私のヒミツ
生徒会室にて。
「どうぞ先生、お掛けください」
ぱっと見、いつもと変わらないパーフェクトお嬢様の伊都に見えるが。
「……あ、あの! いったあ!?」
立ち上がった勢いで思いっきり膝をぶつけてしまったようだ。
「お茶、入れてきます……」
肩を落としたまま、生徒会室に備えられた給湯室へ向かう伊都。
「どうぞ、粗茶ですが」
様子はおかしいが、身体に染み付いた所作は忘れないらしく。茶道部顔負けの優雅さで伊都がお茶を出してくれた。
「がんばれわたし……! ゴーゴーわたし……!」
またぶつぶつとひとりごとを呟いている。何この子こわい。
「こ、こほん。それでは! わたくしが設立、と言っても手続きはまだですが……。えー、設立予定の、同好会についてご説明をさせていただきましゅ!」
「……すみません、なんだか異様に緊張してしまって。生徒会長の選挙でも緊張しなかったのに……」
「そ、その。気にしないでください」
「こほん。それでは、同好会の名称からですが」
「…………」
「………………………………スーッ」
よっぽど言いづらいのだろうか。伊都は目を泳がせてばかり。
「……タイツ研究同好会です」
この世のものとは思えない静寂が、生徒会室を包んだ。
「……えっとぉ。…………た、タイツ研究同好会、です……」
「後生ですから、何かリアクションをくださぁい……」
ここまで泣きそうになっている伊都を見るのはそれこそ数年ぶりだ。
「お、脅されている!? 決してそんなことはありません! 正真正銘、この黒田伊都が正式に! こっそりと! 設立した同好会です!」
「わかっています! 自分がおかしいことは!」
「それでも、この衝動を……タイツへの愛をどこかへ吐き出さずにはいられないのです!」
「先生はご存じだと思いますが、家ではどうしてもこういったことをおおっぴらにできませんので」
「それに、先生にしか頼めないんです。本当のわたしを知っているのは先生だけなので……」
「どうか、お願いできませんか……?」
「ほ、本当ですか! ありがとうございます! 嬉しい……!」
「それでは、さっそく明日から活動を開始いたしましょう! ええ、善は急げといいますから!」
「ささ、先生! ですから今日は早めに帰りましょう! さあさあ! そしてゆっくり寝てください!」
「ああそうだ。書類関係はわたしが全てやっておきますから、先生の手は煩わせませんよ。サイン? そんなものわたしのほうで何とでもなります。先生方からの信頼だけは厚いんですから」
「さ、それでは職員室に先生の荷物を取りに行きましょう。先生が帰るまでわたしも帰りませんからね。さあさあさあ!」
「ふふっ、明日から忙しくなりそう♪」
来た時とは打って変わって、るんるんスキップで職員室へ向かう伊都であった。
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