第3話5代目の憂鬱(中級)
今回の問題は比較的分かり易い中級です。
殺人事件と断定できるのかが、カギをにぎります。
その晩、カマボコ工場の経営者5代目の社長神宮音彦(50)と、妻美代子(47)、息子孝太郎(24)の家族と、専務の吉田多江(52)、社員の田中聖司(38)は、神宮の家に集まり、酒を飲みながらの会議を開いていた。
「社長、もう会社は半年持ちません。早々に破産手続きをしたほうが良いのでは?」
と、専務の吉田が進言した。
「私もそう考えいるが、5代続いたこの工場を私の代で潰すとは、情けない」
と、神宮は呟く。
「父さん、まだ、余力のある時期に工場閉鎖を考えた方がいいよ」
「そうよ、あなた」
「社長、工場跡地をマンションか何かにして、不動産収入で人生を送るのも悪く無いと思いますが」
吉田が言った。
「吉田君。30人の転職先も探さなにゃならん。君たち、今夜は遅いから泊まっていきなさい。私は、今から書斎で考える、美代子、ちょうど夜中の12時に熱いコーヒーを持ってきてくれ」
と、言うと、
「はい。後、2時間後ですね」
「あぁ。そうだ」
音彦は書斎に向かった。
残された4人は酒を飲みながら、話を続けた。
美代子はトイレで席を離れ、3分後に戻ってきた。
孝太郎は、自室のワインセラーからシャンベルタンとキリッシュを持ってきた。
途中、二度、吉田は電話で席を離れた。
田中も二度、トイレに立ち、みんな2、3分だけ席を経った。
ゴーン、ゴーン、ゴーン
振り子時計が12時を知らせた。
美代子は書斎にコーヒーを運んだ。ドアをノックしても反応がない。
リビングに戻り、
「孝太郎、お父さんの返事が無いの。どうしたのかな?」
孝太郎は、書斎やドアを叩いた。反応がない。書斎のカギは音彦しか持って居ない。残された4人がかりで書斎のドアを壊して、書斎いを見た吉田は悲鳴を上げた。
部屋は散らかり、音彦は血の海の中で死んでいた。
孝太郎はすぐに救急車を呼んだが、既に死亡している為に、警察の捜査が始まった。
「皆さん、どうかリビングでお待ち下さい」
と、黒井川警部は4人を部屋に戻した。
「大塚さん、今回の事件は難事件ですよ。この部屋は9階。ベランダの窓は施錠されていなったが、真上の10階の部屋は老夫婦が住んでいた。ドアはカギが掛けられていた。完全なる密室殺人事件です。まさか、9階のベランダから入り込む事は難しいかと……被害者は、ナイフで何者かに頸動脈をバッサリ。部屋を荒らした割には、自殺に偽装して、ナイフからはこの方の指紋しか見つかりませんでしたしかし、部屋を荒らしたと見られる手袋の後はありました。手袋は階下の駐車場で発見しました」
大塚はリビングの4人に話を聴きたいと言い、黒井川警部と大塚探偵はリビングに向かった。
「え〜と、今夜はとんだことで」
「こちらは、探偵の大塚さん」と黒井川警部が紹介した。
「皆さん今夜は何の集まりで?」
と、大塚が言うと、吉田が
「会社の破産手続きをすべきか、話し合っていました」
大塚はメモを取る黒井川警部を横目に、
「皆さん、ここの部屋に居られたんですね?」
「はい。みんなでお酒を飲んでました」
「席を立った方は?」
「みんな、1、2度席を立ちました。3分位です」
「奥さま、あの部屋のカギがかかっていたのですね?」
「はい」
「合い鍵は?」
「誰も持っていません」
「奥さま、失礼ですが旦那さんは死亡保険をどのくらいのを契約していますか?」
「1億円です」
「なるほど〜そういう事か、解りました」
黒井川警部は、
「大塚さん、もう、謎は解けたんですか?」
「はい、簡単に」
問題。
さぁ諸君、神宮音彦を殺したのは誰か?そして、密室のトリックの謎を解きたまえ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます