第17話 ブサイクばかりがいる世界

「う~ん」


「主様、おはようございます」


「ご主人様、おはようございます」


 目が覚めると、布団の横には奴隷の首輪だけを身につけた二人が、正座をして俺の目覚めを待っていた。


「床に正座って...足が痛いでしょ?それに、何も着ていないなんて...まだ寒いし風邪をひいちゃうよ?」


 あまりに驚いて、逆に冷静になって二人に聞いた。


「いえ、奴隷たるもの、ご主人様の起きる前に正座をして待つのが作法です」


 それならなにか着てよ。どこを見ていいのか迷っちゃうから。


「じゃあクラリス、それにメル。起きるのを待っていてくれるのは嬉しいけど、今度からは布団の中で待っていてね。まだ寒いから、横で寝ていてくれるとありがたい」


 そう二人に伝えた。


「む...さすがは我が主様です。何たるご配慮のあるお言葉...本当に感激してしまいました。その可愛らしいお口を食べちゃいまちゅよ♡」


 そう言った後、俺の唇を自分の唇で塞いできた。


「お姉様!何度言ったら分かるのですか!一人だけズルいです!お姉様がその気なら私は息子様の方を...」と言って、また2人いっぺんに襲ってきた。


 昨晩も二人がかりで襲われ、もう無理だと思うとクラリスが超回復をかけてくる。その繰り返しで、いつまでもハッスルしてしまった。やっとこ解放されたのが、明け方の5時であった。一応大学生だしこんな生活をしていたら留年してしまう。


 留年なんかしたくない!何とかしないと...勉強をする暇もない...。


 まあ、贅沢な悩みだ。あとで考えよう。今はこの状況に身を流されよう...。


 後、嬉しい知らせがLINEで送られていた。本日、午前の講義が休講になったらしい。元々午前のみだったから、一日お休みとなった。


 という分けで、サボりではなくなった。ラッキーである。


 ただ、二人に寝起きを襲われてから、あっという間に1時間が経ってしまった。 


 9時に目覚めたのに現在もう10時。三人でシャワーを浴び、ご飯を食べてクラリスの服を買いに行かないと...。


「さあ、行動、行動!」


 クラリスが再び俺の息子を刺激しようとしたが、夜まで待つように頼みこみ、何とか誘惑を断ち切った。メルよりもクラリスの方が超、超積極的だ。


「主様にすべてを捧げると言った言葉に嘘はございません。主様は私の為に右手を捧げて下さいました。私は主様に、全身全て捧げる所存ですから...」


 ちょっと怖い。まあ、あまり考えすぎずに、まずはご飯でも食べよう。ご飯とレトルトカレーというメニューで、二人には我慢をしてもらった。


「主様、私たちも朝からご飯を頂いてもよろしいでしょうか?私たちなど、二日に一度で十分ですが...」


 クラリスが不安そうな顔をする。さすが、奴隷道を極めただけはある。でも、そんなものはもういらない。


「クラリスは、今の俺たちにとっての生命線だ。クラリスがいなくなったら、ナイメール星で暮らす俺たちは、死んでしまう可能性も高まる。クラリスは沢山食べて、俺たちを守って欲しい。それに...夜もお願いしたいし。しっかりと体力と気力を備えてもらいたい」


 照れながらも俺は、しっかりとクラリスに思いのたけを伝えた。


 メル同様、とてもいい表情をしてくれた。


「主様...。私の心と身体は、いつでも主様のために準備ができています♡はい、あーんでちゅよ♡」と言いながら、彼女はスプーンを俺の口に運んだ。


 すると横から「私のもよかったら、た、食べて下さい。私もいつで準備ができております。ご主人様、メルの事も忘れないで下さいね♡」と、少し心配そうな表情をしたメルが、自分の存在を主張してきた。


 エロくて、見た目が清楚な元聖女と、おどおどしながらも身体をすりすりしてくる可愛いメル。


 もう、息子の休む暇を与えてくれない。


 カレーがよほど美味しいのか、最初は遠慮をしていたクラリスも、自分でご飯をお代わりして食べ始めた。俺と同じくらい食べた。まだ食べられそうだ。それにつられてメルも沢山食べた。


「こんな美味しい物、始めて食べました。このカレーですか?主様と同じくらい刺激的です♡それにいくらでも食べてもいいなんて...幸せです!本当によろしかったのでしょうか?この容器の中の「ご飯」という物が、無くなってしまいましたが...」


 申し訳なさそうな表情で俺に伝えてきた。


 炊飯ジャーを買い替えないとな。お米は実家から送ってもらえる。いくらでも食べてくれればいい。これだけ食べてくれると気持ちがいい。


 ちなみに、今俺のマンションにある物は3合炊きの炊飯ジャーだ。5.5合炊きに変えるか?思い切って1升炊きにするかな?


「どんどん食べて。お米は親がいくらでも送ってくれる。遠慮しなくていいよ。もちろんメルも腹いっぱい食べてね」


「「はい!」」と満面の笑みで二人から返事が返って来た。


 それにしても二人のお腹は、ぺったんこだもんな。その代わり、はちきれんばかりのお胸。お胸に栄養が全部行っているのかな?


 それなら...もっと食べてもらいたいものだ。


 さあ、準備をしてファッションセンターシロクマに行こう。あと、食料品も買わないとな。二人には悪いけど、ちゃんとしたショーツとブラの専門店に行くのは、まとまったお金が入ってからだ。まずはシロクマで、その至宝のお胸を守ろうね。


「言語能力のスキルを調整して、日本語が話せないようにするからね」と二人に伝えた。街中で、「主様...」や「ご主人様...」はさすがに不味い。


 ちなみに二人の服装は、クラリスが俺のお古のサンダルと、メル用に買った白のパンツ、それに俺のお古のTシャツとパーカーだ。


 メルはカーゴパンツと淡いピンクの半袖サマーニット、ストラップサンダル、それに俺のお古の帽子だ。何を着ても絵になるな。もう、本当にモデルさんみたいだ。


 洋服以外にも購入したい物が沢山ある。ぼやぼやしてはいられない。食料品もそうだしメルたちの歯ブラシや化粧品。それに食料品も買わないと。ああ、あと炊飯ジャーも。


 この部屋にも遂に野菜と果物が降臨するかも。今までの俺は、グレープ1つ買うならレトルトカレーを選んでしまう。メルとクラリスは果物や野菜も必要だろう。買っておかないと。


「さあクラリス、外出するよ。その、ナイメール星と全然違うから驚かないでね」


「全然違うとは主様?」すごく可愛い顔で俺に聞いてきた。


 俺が少し見とれていると、クラリスはクスっと笑い「主様...そんなに私のお顔が気に入られたのなら...」と言って、ねっとりと唇を重ね「スッキリと...なさいますか♡」と、息子をなでなでしながら聞いてきた。


 こら、元聖女!変わり過ぎだろ!「もうお姉様!私も我慢しているんですから!」


 メルも荒い息使いで、俺の後ろから胸を押し付け、クラリスから俺を奪って唇を押し当ててきた。俺の胸を撫でまわす手もエロい。


 何たる朝からご褒美。生きていてよかった。でも夜まで我慢だ。買い物やら奴隷契約などをしないと。


 でも、二人は性欲100万倍だもんな。発情しちゃうよな。ごめんよ。夜まで待ってね。


 泣く泣く二人を身体から離し、外に出た。


「こ、これが主様の世界...」


 数秒間、クラリスの動きが止まった。いや、眼球と脳内の思考回路は、ものすごい動きをしているはずだ。


「凄いです。馬車よりも早いものが動いております!そして...高い建物ばかりです。城壁も見られません...。ここは王都ですか?すごく人が沢山おります!女性ばかりではなく男性も沢山いますが、その...何でこんなにブサイクばかりなのですか?」と、げんなりとした表情で俺に聞いてきた。


 こら元聖女!口が悪いぞ。


「男性が多いのですが、若い者ほどブサイクばかり...。背も高く、栄養失調そうな者が多いです...。そればかりか二重で鼻筋が通り、細長い顔の者が殆ど。主様の恰好よさを引き立てる脇役たちばかりなのですか?より主様に惚れてしまいます♡」


 そう言って、またすりすりと俺の息子を右手で触り始めた。


 こら、外ではダメです。


  「もう、身体が反応してしまうのです。100万倍の性欲を抑えるのは本当に大変です。いつでも、どんな時でも主様を感じていたいのです♡ねえ、メル?」


 そう俺の右側から、左側の腕に絡まっているメルに話しかけてた。「そうですよ、ご主人様!自分の自制心を絞り出しているんです!そうじゃなかったら今でも...」


 こらこら、獲物を見つめるライオンのような目をしないで!怖いから。


 離れてと言っても無理だろう。特にクラリスは絶対に離れようとしない。断固拒否。命令しても無表情のまま窒息死しそう。頼むから息子を刺激しないでとお願いした。もう...どちらがご主人様か分からない。


 クラリスもメルも、身長が170cmを優に越えている。だから俺に合わせて屈んでくれる。クラリスも173,4cmかな...メルと余り変わらないな。


 メルもクラリスも、左右から俺にぴったりとくっ付く。


 三人で街を歩くだけで、周囲は騒然となる。モデル級の美女二人に囲まれた、一匹のブサイク。その組み合わせは、まるで幻想のようだった。


 奇想天外摩訶不思議。


 知らない人たちからの視線が痛い。交番の前ではお巡りさんが、俺に声をかけようか、一瞬迷った態度を取った。


 お、俺たちは悪いことはしていません!色々な事を合意の上では沢山しましたけど...。


 もうしょうがない。噂になろうが興味本位の目で見られようが、もういい。二人が幸せなら。ただ無断で写メをとっちゃだめだよ。スマホが壊れるよ?


 クラリスに、周囲の人間がスマホを俺たちに向けたら、エアブローを炸裂させるよ言ってあるある。


 ガシャーン!


「うわ、何だかまいたちか?」


「いやー!私のスマホが!」


 スマホがあちこちから手元を滑り落ち、地面に落ちる音と驚きの声が聞こえる。どれだけ無断で撮ろうとするんだよ。マナーが無いな。


 クラリスとメルに街の風景や美味しい食堂を紹介しながら、前回メルと訪れたシロクマに向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 シロクマのお店を見たクラリスは、「凄く大きなお店...。本当に主様、よろしいのですか?私はもうこの主様のTシャツとズボンで十分です」と謙遜してきたが、「色々な洋服を着て俺を楽しませて欲しい。俺の為だ」とクラリスに伝えた。


「主様ったら♡本当に愛しております♡もう部屋の中でなら、上着をちぎって押し倒しています!」そう物騒なことを言いながら抱きしめてきた。


 最近の俺だが、言動だけは二枚目になった様な気がする。あっ、クラリスたちからすれば外見も何だな。そりゃ興奮させてしまうよな。


 まあ何だかんだあったがベージュのペプラムトップス、ブラックとモカのクラシカル ニット ワンピース、Tシャツをメルの分と合わせて5枚ほど、レモンイエローのシアーロングカーディガンを購入。


 更に、スポーティなマウンテンパーカー、カーキブルゾン、それにアンクル丈のジーンズをメルと兼用で2着とブイネックワンピース、追加でショーツを5枚ずつとブラを2枚ずつ買った。必要だもんね。


 あとスニーカーも購入した。パンプスやサンダルでは、異世界の舗装がされていない道は歩き辛いだろう。スニーカーソックスも4枚ずつ購入した。


 特に、クラリスはクラシカルニットワンピースをとても気に入った。それならとブラックと、モカの色違いを買ってあげた。「修道着みたいですごくお洒落です!」と大喜びだ。


 すごく喜んでいる。「昨晩以上に、真心を込めて奉仕させて頂きます。主様!」そう言って自分の胸を、俺の背中に押し付けるように抱きしめてきた。嬉しいけど、シロクマの店内中の注目を集める。


 ようやくシロクマでの買い物が終わった。でも、もうメルとクラリスと一緒にスーパーで食材を買いに行く元気がない。この後、ビッグハムの所でモリジン達との奴隷契約と、その後には歓迎会も控えている。


 スーパーでの買い物は、明日一人でサクッと済ませるつもりだ。そして、週末には二人を連れて行ってあげよう。


 ふ~。最低限だがこっちでの用事が何とか終わったかな...?


 さあ、二人と一緒にナイメール星に行こう。いや戻ろうか。バタバタだな今日も...。

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