第16話 マジックポーチの中身

 マジックポーチの中には、まず桐箱が三個入っていた。そこには、ミスリル貨が10枚ずつ、計30枚入っていた。


 これだけで3億だ。どうしよう...大金持ちじゃんか。


 さらに、見たことのない宝石類が、同じような桐箱に手厚くしまわれている。鑑定が発動し、それぞれの宝石の名前を教えてくれる。入っていた宝石と数は以下の通りだ。


 宝石類 

 ダイヤモンド:5個

 ガーネット:2個

 サンゴ:3個

 アメジスト:4個

 アクアマリン:2個

 エメラルド:4個

 翡翠:2個

 パール:2個

 ムーンストーン:3個

 ルビー:4個

 タンザナイト:2個


 ドラリル一味のランが持っていたダイヤモンドと、桐箱の中の物を比べたら、その大きさと輝きは歴然の差がある。


 俺からすれば、それらはただの綺麗な石にしか過ぎない...。でも、これだけの宝石があれば、地球でも遊んで暮らせるだろう。まあ、遊んでは暮らさないけど。ただ皆で広いマンションで暮らすことは十分可能だろう。


 佐々木教授に相談しよう。俺じゃ販売方法など良く分からない。


 あと、絵画も結構な量が入っていたが、地球に持ち込んだ場合、顔料などを調べられると異世界産とバレるかな?厄介だな。なるべくはダイヤモンドなどの貴金属だけにした方がいいかもしれないな。


 他には、特殊な能力が施されている剣や盾、それに防具、さらには魔石や本に絵画などなど、まだまだ詳しく知らべれば沢山入っていそうだった。


 ただ特に気になった物が数点ある。何ぞやのカギが3つと、デスマスクみたいなお面が4つ。しかもそのデスマスク、喜怒哀楽みたいな表情をそれぞれにしている。


 そして、一番驚いた何かの右腕。精巧にできている。いや、できすぎている。アンドロイドの物かな?なぜ分かったって?血が出ないから。まるで今にも動き出しそうだし。


 さて、すごく気になる物も沢山見つかったが、一回地球に戻ろう。明日は学校サボろう。サボりたくはないが、人命がかかっている以上、仕方のないことだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「さて、俺達は向こうの地に一旦戻るね。明日のお昼過ぎには、ここに帰ってくるよ。そうしたら奴隷商会に行って正式な契約を結ぼう」


 そう、皆に伝えた。獣人達、特に俺の奴隷の皆さんは大きく頷いた。そして、契約が終わったら、みんなでケインズ村で美味しいご飯でも食べようという話になった。


 ロジンたち、暗部の皆さんに「お金はたんまりあるから、とにかく美味しくて、みんなで気楽にご飯が食べれる場所はないかなぁ」と聞いてみるた。


「高級なお店は、奴隷の入店を拒みます。失礼ですが、容姿にも重きを置き、入店を断られます。奴隷や容姿に難がある場合は、一般のお店でも断られるでしょう」


 はっきりとロジンが言い切った。いやな言い方ではない。あくまでも、事実を言った感じであった。


 少しロジンは考える素振りをした後、「ここにいる皆で楽しく食べるなら、大衆食堂の「マリナのお店」が一番良いと思います」と、俺たちに教えてくれた。


「マリナのお店?」 


「はい。容姿や身分関係なく、食事やお酒を提供するお店です。ですから、粗暴の者も多いですが、皆マリナのお店を慕っていますし、他のお店では入店を断られている者も多いです。ですから、よほどのことが無い限り、揉め事は起こりません。出入りが禁止となったら、他に行くところがありませんから」


 ロジンが教えてくれた。何でも「マリナのお店」の大将マリナも、人族の女性の中では非常に好ましくない外見をしているとか。まだ22,23歳前だが、両親が貴族で、食堂と獣人の数名を護衛兼従業員として付けてくれたようだ。


 メルは「マリナの話は人族の貴族の間では有名です。「何であんな娘の為に無駄なお金を使うんだと...」と。本当にまれですが、マリナの親の様に見栄えが悪い娘に対しても愛情を注ぐ親もいるようです。ただ、非常にまれな話です」と、寂しそう呟いた。


 メルの一言で、場が静まり返った。「ごめんなさい!でも、今は幸せです。最愛のご主人様と皆さんのように、普通に接して下さる方に出会えましたから!」と、場の重い空気を振り払うかのように、明るい声でメルは話した。


「じゃあ、契約が終わったら、そこでご飯をたらふく食べよう。それまではここにある食料で我慢してくれ。ここにある食料は全部食べてしまっていい。またロジンに頼んで新鮮な食料を買えばいいだけだから」


 そう言うと、豚族の皆は非常に嬉しそうな顔をした。よほどお腹が空いていたのだろう。


 さて、地球に帰るか。


 皆に「本当に一旦戻るわ」と告げた。コロは寂しそうな表情を一瞬見せるも『クン!』と元気に吠えてくれた。気を使ってくれるフェンリル様だ。そんなみんなに見送られ、俺らはドラリル一味の館を後にした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 館から洞窟まで、徒歩でなら約1時間だがメルに頼めば1分ぐらいで着く。


「メルお願い」そうメルに頼むと、「かしこまりました」と可愛らしく微笑み、俺とクラリスを両脇に抱えた。そして、もの凄い勢いで森を走り抜けた。風圧がすごい。浮遊型のジェットコースターに乗っている気分だ。深夜で辺りが見えないからより怖い。よくメルは見えるな。


「ご主人様、お姉様!洞窟に着きました!」


 満面の笑みで、俺に報告をしてきた。早いな~。1分ぐらいだな。ジェットコースターに乗っているより早いな。


 ああ、疲れた。何だか色々あった。日にちが変わったから2日前か...その時は死にかけるし、昨日は手が吹っ飛ぶし...色々あり過ぎ。でも美少女2人を助けることが出来た。まぁよしとするか。この洞窟にある地球につながる扉を見ると、何となくホッとする。


「ここから...いよいよ主様のお家に行くのですね?緊張してきました。私の様な者が、主様のお宅に突然訪れても問題が無いでしょうか?お子様やご年配には、私の外見は刺激が強すぎて、問題が起こらないとよろしいのですが...」


 クラリスは今までとは打って変わって不安そうな表情をしている。


 違う意味で刺激が強いかもしれない。フード付きの薄めの汚れたパーカーに、ショーツとチョーカーにみえる奴隷の首輪のみ。ブラも付けていないしTシャツも着ていない。すごく悩ましい太ももがあらわとなっている。俺もさっきから興奮が隠せない。19歳には刺激が強い。


「誰もいないよ。それに何度も言うが、2人は俺の世界では絶世の美女だ。俺と立場がそのまま逆転する。蔑まれたりすることは無いから安心して欲しい」


「主様の言う事に嘘はないと思います。でも...そんな世界、どうしても信じられません...。私たちは美しい存在で、こんなに恰好よく、プロポーションも優れている主様が蔑まれているなんて...。愚民たちに神の裁きを与えてやりましょうか?」


 そう言った後、辺りの太い木々を真っ二つに切り落とした。


 また物騒なことを言い始めた。メルよりも攻撃的なのかもしれない。元教会で働いていた聖女だったのに。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「さあ、クラリス。こっちだよ」と、ややこしくなる前に、クラリスを自室に呼び入れた。クラリスは、扉を開けて俺の部屋に招き入れると、どうしていいか分からずに、ただ暗い部屋の中で立ち尽くしている。


 先ほどいた屋敷とは違い狭い。ただ両親が田舎の感覚で1Rや1Kじゃ可哀そうと、1DKを借りてくれた。大学からは少し離れているけど。そのおかげでキッチンスペースがある。本当にありがたいことだ。


「ごめんね。今、電気を付けるからね」


 シーリングライトをONにして、部屋を明るくした。


「キャ!」


 突然明るくなった部屋に、クラリスが驚き、可愛い悲鳴を上げた。


「ごめんよ、びっくりした?メルにも言ったけど、狭くて。3人だと、もっと狭く感じるかもしれないね。ドラリル一味から頂いたダイヤモンドなどを売って、もっと広い部屋に引っ越そうね。コロも待っているだろうし」


「凄い、見たことのない物ばかりです。何です⁉かこの凄くお洒落な空間は?わ、私たちは、こんな素敵な部屋に泊めて頂いてもよろしいのでしょうか?こ、わ、私たちは、軒下か、馬小屋でもあればそこで寝かさせて頂きますが...」


 非常に心配そうな表情をして、オロオロと辺りを見回している。


「お姉様、お気持ち分かります。私も、初めてここに来た時は不安でいっぱいでした。ですが、主様は追い出すような真似は致しません!朝までずーと一緒です!大丈夫です!」


 メルがクラリスを安心させるかのように、クラリスの両手を強く握りしめた。


「メ、メルありがとう。分かっているのよ。主様はそういうお方だって...。メルからも主様からも聞いているから。でも、やっぱり...その、ほ、本当にご慈悲を頂けるのでしょうか...こ、こんな素晴らしい部屋で?わ、私はじ、じ、自分に自信がございません...」


 やっぱりメルと同じなんだね。自分に自信が持てないなんて。俺も分かる。俺も自分に自信が無いもん。


 自信が無いと言ったクラリスは、急に涙ぐんでしまった。


 先程まで気高かったクラリスは、急にか細い態度に変わってしまった。肌を触れ合う時が現実味を帯びてきて、急に怖くなった様だ。


「主様の住んでいる世界に連れて来て頂き、ついに私も主様とお風呂に入って、ご慈悲を頂けると思ったら、急に嬉しさを通り越して不安になってしまって...。抱きしめられ、私の醜い二重の目や仰月型の唇を間地かで見られると思うと、主様に嫌われるのでわないかと...」


 そうクラリスは床に跪き、震えながら俺を見上げる。


 震えるクラリスの目線に合わせるように、少し前かがみの姿勢となり、「こっちの世界では、君たちがすごくモテて、俺は全然モテない。俺もクラリスに聞きたい!俺の目を顔をそらさずに俺の顔を見れるの...?俺の傍にこれからもずっといてくれるの?」


 俺まで自信が無くなって来た。この世界のどんな娘達よりも可愛い二人が、外見に自信を持てないなんて...。


「あ、当たり前です!主様!主様以上に心優しく気高いお方はいらっしゃいません!私は、いえ私もメルもずっと主様のお傍におります。そんな自信の無さそうな表情はおやめ下さい!」


「それならばもうこの話は無しだ。時間も遅いし...クラリス、メル。その...よかったらだけど、一緒にお風呂に入ろうか?その...よかったらだけどね」


「もちろんです。ご主人様!お背中をお洗いします!」


 そうメルは元気よく俺に言ってきた。そして何ともう、ブラとショーツのみの恰好になっている。ま、まだ、お湯を入れていないよ。


 俺の息子はそんなメルの姿を見て、喜びを爆発させている。お願だからクラリス、息子をじーと見つめないで...。恥ずかしいから。


「お姉様...大丈夫です。ご主人様は、お姉様をかばって右手を切り落とされたんですよ?私たちを愛してくれております。どんな男性よりも素敵なお方から...。私も自分の容姿に自信はありません、ですから、ご主人様に負けないぐらいの愛を、全身全霊でお返ししましょう!」


 そう言ってメルは、俺を抱きしめた。


「メ、メル。そうですね。他の者は関係ありません。ブサイクだろうがプロポーションが悪いだろうが関係ありません!主様が私たちを気に入ってくれれば問題ないのです。メル、背中を洗うのは譲ります。私は前を丁寧に洗いますので...」


 そう言って、いつの間にか俺の息子に手を伸ばしと刺激を与えてきた。


「ズルいです!お姉様!100万倍の性欲を抑えるなんてもう無理です!もう開放です!」


「もう、私も耐えられません主様!愛しております、主様...」


 クラリスは、俺の首を強引に自分の顔の方に向け、唇を重ねてた。


「お姉様ズルい!」


 メルも、俺の首を自分の方に向け...。


 その後のメルは素早かった。俺の着ている服を素早く全部脱がし、そして...。


 こ、こらメル!まだ下の息子を洗っていないから、いきなりそんなことをされたら...。


「主様に汚いところなどありません!」


「ご主人様に汚いところなどありません!」


 俺が言おうとしていたことを、2人から力強く言われた,,,。


 いつの間にか、奴隷の首輪以外は身につけていないクラリスとメルに囲まれ、眠れない深夜のバトルが今、開演した。

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