第12話 ドラリル一味のアジト
とりあえず、もらえるものは全部もらおうと決めた。この大玉おばさんについてどうするかという話になり、もらえるものだけを受け取った後は、役人にでもつき出そうかということで、3人の中でまとまった。
フェンリルが心配だし、とりあえずアジトに行ってみよう。
それと俺は今、メルに美男子様抱っこをされている。クラリスがメルに「交代の時間です」と言って俺をメルに渡した。献上品みたい。「これも長くご主人様を中心に付き合っていく秘訣です」と言った。独り占めはダメらしい。
「ご主人様、クラリスお姉様、感謝の気持ちでいっぱいです。メルはお二人の支えがあったから生き延びることが出来ました!本当にありがとうございました!」
メルは涙袋一杯に涙をため、俺達に向かって深く頭を下げてきた。
さらに「ご主人様...本当にすみませんでした。危険な目と、痛い思いをさせて...」と俺の右手をさすりながら泣いてしまった。
「せっかく、ご主人様によって強くして頂けたのに」と、噎び泣きながら、しきりに俺に対して謝って来た。
「二度と同じ過ちを犯しません!これからはより一層努力して働きます!ですから、どうか、メルをご主人様のそばに置いて下さい!私を捨てないでくだざい」と、メルは必死な表情で泣きながら俺に頼み込んできた。
「メル、謝らなくていいって。メルは、俺の命令に従ってくれただけなんだから。全部、俺の責任なんだよ。本当に、すまなかった。だから、お詫びのしるしに、メルとクラリスには好きなものを買ってあげるからね」と、俺は2人に謝った。
「ご主人様、頭を上げてください!好きなものなんて...ご主人様のそばにいられるだけで、私は本当に幸せです。ご主人様はすごく優しくて、恰好いいです!本当に大好きです!」と、メルは俺を強く抱きしめた。
すごい、メルの弾力のある胸に顔が埋もれる。さっきまでの痛みとは違い、とても心地がいい。
息子まで元気になってしまった。「ご主人様...やっぱり素敵です♡」
メルにばれてしまった。更に...俺の元気になった息子を、クラリスがガン見している。すごく、目をぎらつかせながら...。怖い。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さあ、メル、時間ですよ。主様を私に」と言った後、メルは「はい、お姉様!」と応えて、大切なぬいぐるみを渡すように俺をクラリスにゆだねた。
クラリスは、俺を後ろから包み込むように優しく抱きしめ、そのまま俺と一緒にゆっくりと腰を下ろした。
クラリスが横座りをした太ももの上で、子供を抱っこするような姿勢で、俺を後ろから抱きしめた。クラリスの慈愛に満ちた表情と、胸に包まれて、心地よさを感じた。
「クラリス、足は痛くない?」と、俺は心配しながらクラリスに聞いた。「痛くなどございませんよ。私の胸に頭を埋めて、こんなに安らかな表情を見せてくれるなんて…感激です♡」と彼女は答えました。
俺を後ろから優しく抱きしめたまま「メル、1人ですべてを抱えてはいけませんよ。それに主様を守ることも、敵を攻撃することにおいても、これからは私がある程度、手伝えそうです。私も風魔法を習得しました。十分サポートできると思います」
俺の頭を胸の中に押し込んだ姿勢で、右手を上空に伸ばし「לום, ܫܠܡܐ, السلام, ειρήνη, שלום, السلام」と唱えた。その瞬間、竜巻のような巨大な風の渦が空高く舞い上がった。
「主様の周りには、これからも新たな仲間たちが増えていくことでしょう。しかし、今のところは、私たち二人で主様を支えましょう。メル、早く用事を済ませて、主様と私たちだけの時間を作りましょう。私は耐えられないです」
クラリスはそう言った後、俺を抱きしめる手に力が入った。クラリスの瞳がウルウルとして、俺を見つめる。
呼吸は先程よりも更に荒くなっている。クラリスはショーツにフードという格好。つまりノーブラ。俺が頭を動かすたびに「あん♡、主様...♡」と甘い声をあげる。
「メル、これが副作用ですか?もう主様のことしか考えられなくなりそうです。主様の視線と汗のにおい...すべてが興奮を招く対象です。危険です。非常に危険です。しっかりとい、意識を保っていないと、ご主人様を後ろから羽交い絞めにして...」
物騒なことを言いだした。早く部屋に帰らないと。
「床に押し倒して...まとめて服を脱がして...」
まだ続いている...。
物騒なクラリスは、俺を胸の谷間にはさみながら、「こんな行為を他の男性に行ったら、トラウマを与えるでしょう。でも主様はこんなにリラックスをして、私の胸を嫌がらないで下さるなんて。ああ、主様。愛しております」熱い吐息をつきながら、腰をもじもじとさせた。
そんな甘い表情を一変させ、「ミルミルさん、物集めはもう終わりましたか?」と、クラリスはミルミルに尋ねた。
「は、はい。終わりました」
そんな俺達3人が、イチャイチャしている後ろで、先ほどからでっかい大玉の様なミルミルが、せかせかと動き回っている。
ドラリルの一味の武器や防具、お金や持ち物を、クラリスの言うとおりに、それぞれに分けて地面においた。かなりの量だ。まあ、30人分だからな。
持ち物は、武器や防具ばかりではなく、薬草や能力を高める素早さの種や力の種などもある。それにミルミル以外にも、もう1人ランが、マジックポーチを持っていた。
中身は、ダイヤモンドやルビーなどの貴金属品と、さらに、ポーション効果(中)が2本入っていた。
すごいなぁ。荒稼ぎしてるのか、大量の貨幣を持っていた。中には、銀貨だけではなく、金貨も含まれている。日本円で、30人から200万円ぐらい手に入ったんじゃないだろうか?荒稼ぎだ。貨幣の価値は、クラリスから聞くと、やはりこんな感じであった。
◇ 貨幣価値
小銅貨(1円)
中銅貨(10円)
大銅貨(100円)
鉄貨(1000円)
銀貨(1万円)
金貨(10万円)
白金貨(100万円)
ミスリル貨(1000万円)
◇ 宝石類
アクアマリン: 1個
ダイヤモンド: 2個
エメラルド: 1個
◇ 武器類
ショートソード、ロングソード、バスターソード、長槍、短槍、斧、メイスなど、珍しい物ではチャクラムやスリングショットなどもあった。
武器や防具類等も沢山手に入った。特に武器は色々な種類を手に入れた。ただそれらの多くは血まみれであり、掃除が必要なようだ。「ゆっくり私たちがやります」と、メルとクラリスが俺のいない時間にやると言ってくれた。
でも、俺の部屋で、血まみれの武器を拭く2人って、何だか嫌だな。それは、ナイメールメールでやってもらおう。
これらのダイヤモンドやエメラルドを日本で売ることができれば、生活が楽になるだろう。現在、住んでいるマンションでは、3人で住むには狭すぎる。 もう少し広いところに引っ越すのが理想的だ。
ただし、売れればだ。素人が簡単に売れる物ではないだろう。変な輩に目を付けられるのも、面倒だ。佐々木教授に相談してみようかな?いい意味でも悪い意味でも、知人が多そうな人だからな。
ドラリル一味の亡骸は、役人が見つけやすいように、道の端に一列に並べた。亡骸になった彼女らを、粗末に扱うのは気の毒だ。
クラリスは亡骸に哀れみの目を向けた。「私たちも彼らと同じ運命になりかけました。ナイメール星は、見た目が醜い者には厳しい世界です。彼らも、最初から悪の道に進んだわけではないと思います」と言って、胸の前で祈りを捧げた。
メルも、「外見が悪い者は、捨てられて奴隷になるか、低賃金で働くか、それとも奴隷落ちするしかない国です。そう...私みたいに」と言った。
クラリスは俺をぎゅっと抱きしめて、首筋に顎を添えた。「私もメルも苦しい過去があります。でも、今は主様の愛で満たされています。一緒に理想の国を築きましょう」と微笑んでくれた。
「メルにも勧められたが、少し落ち着いたらエルフの国に行ってみようと思っている。相当人間たちから妨げられていると聞いたが、辛い生活を送っているのなら助けてあげたいと思うし」とクラリスに言うと、「主様の仰せのままに」そう俺に微笑みながら返事をした。
「メルからも勧められて、少し落ち着いたら、エルフの国に行ってみようと思ってる。人族たちから妨害を受けてるって聞いてるけど、辛い生活を強いられてるなら、助けたいと思ってるんだ」と、クラリスに話した。
「主様の仰せのままに」と、彼女は微笑みながら応えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ミルミルの案内で、ドラリル一味の隠れ家に足を踏み入れた。それは、この山あいの崖下のようだ。
ミルミルが、怪しい行動を取らないように、腰縄を付けて、メルが動きを制限している。
「そ、そんな、こんなものをされなくても、裏切るような真似はしません...から」
そうミルミルは、大量の汗をぼろ布で拭く。信じられるはずがない。用心にこしたことはないな。
ドラリル一味の隠れ家に着くまで、俺たち3人は楽しく談笑していた。「フェンリルって確か狼の様な生き物だったよな」と、クラリスに尋ねた。
「はい、主様その通りです。よくご存じでちゅね。こほんっ!よくご存じで。そ、そんなに見つめないで下さい!」
「そのクラリス...俺は、別の世界から来ているんだけど、その主様と言う言葉は、向うの世界じゃoutだからね」
「じゃあ私は何と呼べばよろしいのでしょうか?智也様でしょうか?それとも、我が愛しき生涯を捧げる偉大なる智也様でしょうか?」と、可愛らしく首を斜めにして聞いてきた。
「長いし。智也で」
「無理です」
彼女はすぐに返事をした。そして、メルに向かって「メル、主様を呼び捨てで呼んだりはしていないわよね?」と、殺気立った口調で問い詰めた」
「し、していません!」
「でも、ご主人様と呼ぶのはどうやら不味いようです。向うの世界では、言葉を理解することは可能ですが、ご主人様の力により話すことは制限されています」
「では、私もそれでお願いします。呼び捨て何ど、不可能ですから」
ご主人様、主様...。向こうの世界じゃ、絶対受け入れられないよな...。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「こっちです」ミルミルは、俺たちを森の奥地に案内した。うっそうとした森の中。こういう輩は、表の世界じゃ生き辛いのだろうか?
また、ずいぶんと奥地だな。こんな場所に、人目を避けるように生活をしているのも、何だか可哀そうになる。
目の前には、大きな崖があり、崖の下には、周りの景色に溶け込むように家が建っていた。
いや結構立派だな。屋敷と呼んでもいいだろう。
ドラリル一味が潜むアジトは、木とレンガのコントラストが印象的な3階建ての建物だ。その外観は黒とレンガ色のハーモニーが醸し出す、どこか陰鬱な雰囲気を持つ。
建物の高さは約10メートルで、その周囲には木々が茂り、まるで自然の一部であるかのように見える。正面には木製の扉があり、その上にはレンガで作られた窓がある。
窓枠は黒く塗られ、窓から漏れる薄暗い光が、建物全体に神秘的な影を落とす。そして、その上部にはレンガで作られた煙突がそびえ立ち、白い煙が立ち上っている。その煙突から立ち上る煙が、建物全体に不気味な雰囲気を与えている。
ふーん。少し不気味だけど...私的には悪くない。隠れ家のようで好きだな。それと、後ろの崖に完全に密着して建てられているんだな。それはそれで、恰好いいよな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「主様。まだドラリル一味の残党が隠れていると思います。すんなり一味の財宝をよこすとは思えません。気を付けて下さい」クラリスは俺の横でそっと忠告をした。メルも周囲を警戒している。
ミルミルが大きな声で、「みんな!死にたくなければ大人しくするんだ!お客様を連れて来たよ!」
そう言った瞬間、ミルミルは慌てて地面に臥せた!どうやら、それが一味の敵が来た時の合言葉の様だ。館の窓の隙間から、ボウガンを狙って打って来た!
「そう、何度も同じ手は喰らいません!」と言って、メルはミルミルをつないでいる紐を引っ張り、自分の前に立たせた。
「ドス!ドス!ドス!」
そう音を立てて、ドラリル一味が放った矢を、メルの代わりに、身体を張って受けるミルミル。
「私に撃ってどうするんだ...い」と言った後、ミルミルはあぶくを吹いて、その場で動かなくなった。
「ミ、ミルミル様。あブサイクめ!」そう言って残党たちが、館から飛び出して来た。
7,8人が、メルを囲むように円になり、メルに向かってボウガンを構えた。
「今度は逃げ場がないよ!ミルミル様の仇だ!死にな!」と、残党たちが息を合わせてトリガーを引こうとした瞬間、「私の存在をお忘れでは?」と、クラリスが残党たちに声をかけた。
そのままクラリスは残党たちに向かって、「שלום אחי, ܐܢܐ ܒܚܘܒܐ ܠܟ, أنا أحبك, ἀγαπῶ σε.!」と、俺には理解できない言葉で何かを唱えた。
メル以外の残党たちに、かまいたちの様な風の攻撃弾を放った。その結果、残党たちは木端微塵に切り刻まれ、足元には原形をとどめない肉の塊だけが残された。
うわっ!グロテスクだな。匂いもきついし。気持ち悪い。
そんな俺とは違い、メルは「お姉様!貨幣まで切り刻んでしまうのはやり過ぎです!」と、クラリスはメルに叱られていた。
そっちかよ...。
「アジトにいたんだから、所持品なんて持ってなかっただろうな。さて、とにかく館に入ってみるか」
血の匂いにつられ、辺りで獣の鳴く声が聞こえる。そう遠くない距離だ。とりあえず館の中に入ってみよう。フェンリルを救ってあげないとな。
そう思い、2人を連れ館の扉の前に立ち、ドアノブに手をかけようとした瞬間、俺の脳内で鑑定が作動した。「警告!ドアノブには、ガラム蛇毒が染み込んだ毒針が仕込まれております!」
「おわっと!」
俺はドアノブを掴もうとした手を、強引に離したため、バランスを崩しメルに身体を支えられた。
「ご主人様!大丈夫ですか!」
凄く心配した表情で俺を抱きしめた。俺が気分を悪くして、立ち眩みでも起こしたと勘違いをしたのだろう。
「ごめんよメル。大丈夫だよ。メルもクラリスもそのドアノブには触るな!俺の鑑定が警告を流した。他にドアノブがあるはずだ!」
3人で中央のドアノブの代わりを探すと、足元にドアノブが、取り付けられているのを見つけた。
「また、手の込んだマネを...」
俺が溜息を吐くと、クラリスが「それだけ莫大なお宝を隠しているという事でしょうね」と、俺を励ますように話しかけてきた。
メルを先頭に俺たちは先を進むことにした。ドアノブの件もあり用心して進んでいく。すると目の前の床を踏もうとした瞬間、また警告音が脳内に鳴り響いた。よく見ると、床のタイルに切れ目があった。そのまま進むと床が開き、下に落ちる仕掛けの様だ。
危ないな。どれだけわなを仕掛けているんだ...。
ただ、俺の鑑定能力とチームワークのおかげで、無事に屋敷内を進んで行く。すると、部屋の前で何やら動く物音が聞こえた。
「ガタ、ガタ、ガタ!」
扉の奥から、なにやら気配を感じる。
「メル!クラリス!用心して進もう。何かいるようだな」
「ご主人様は、後ろに下がってください!私が中の様子を見てきます!」
「いや、俺が先に行けば、鑑定の能力で...」
「いえ私が、風魔法でドアを吹き飛ばしましょうか?」
「でも...中にいるのがフェンリルだったら、傷つけてしまいませんか?」
俺たちの誰が先に進むかを話し合っていると、突然、中から声が聞こえてきた。
「ううぅ...食料をくれ...水もくれ...ここから出してくれ...」
ミルミルから、人がいるなど聞いていなかったが...いったいどういう事なんだ?
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