自由への闘争(2)

「ムゥゥゥゥゥウン!!!」


 怒りに身を任せ、ハシムは竜巻のように回転しながらショテルで切りかかった!


 通常、人間が斬りかかる場合は体が半回転する。

 つまり通常攻撃は0.5回転となる。


 だが今のハシムは怒りに任せた連続回転により、数え切れないほど回転している。

 これにより∞回転!! 斬撃は無限大のパワーとなっているのだ!!


「すごい、これならやれるかも!!」


「御柱を汚す不信心者が――喰らえぇぇぇぇぇい!!!」


 白刃の大車輪がキラーチワワを襲う。が――


<ブルゥゥンワガァァ!!!>


「ムッ?!」


 キラーチワワの大暴れで斬撃が弾き飛ばされた。

 常軌を逸した回転力があっても、基礎となるパワーが違いすぎる。

 いくら技を駆使しても、魔獣の力を超えることは叶わなかった。


<ズサァァァッ!!>


 弾き飛ばされたハシムはコロシアムの地面を転がる。

 その全身は傷だらけになっていた。


「ムゥン……やりおるわ」


「クソッ、単純なパワーが違いすぎる……アイツには弱点がないのか?」


 キラーチワワの全身は鋼のような毛皮と筋肉で包まれている。

 ウォシュレットの最大パワーでも果たして貫通できるだろうか。

 何も出来ない東都は、悔しさから歯噛みした。


「何か……何か決め手となるものがないか?」


 コロシアムの中を見渡す。

 なにかこの現状を打開する一手がないか?


 彼の視線はコロシアムの中を縦横無尽に走ってそれを探す。


「……あった――ッ!」


 その時――東都に電流走る!!

 東都の視線は、キラーチワワに汚されたトイレに注がれた。

 握り込まれる拳。逆転の一手があった!


「……これしかない!」


 東都は口の中で小さく唱えた。「ウォシュレット」と。

 するとトイレの中から水が漏れ出してきた。

 しかし、その水流は弱い。

 ウォシュレットの力で攻撃するつもりでは無かったのか?

 否、これでいいのだ。


 漏れ出した水はトイレの周りに泉を作り、池になる。

 すると、キラーチワワがそれに気づいた。


<フゥーン……>


 キラーチワワは、コロシアムに突如として現れた池に気付く。

 魔獣はゆっくりと水面に近づく。

 そして、ヘビのように長い舌を池に突っ込んだ。

 そう――魔獣は運動の後の水分補給を始めたのだ!


 コロシアムの客席はともかく、血戦のバトルフィールドには日よけひとつない。


 おまけに今日はカンカン照りの晴れだ。

 激しく動けば喉が渇くのは自明――確定的事実!!

 水――飲まずにはいられないッ!


<ペチョペシャペショペペペッ!!!>


 怒涛の如き舌使いで水を舐める魔獣。

 その暴虐ぶりを見たハシムは、喉の奥で唸った。


「むぅ、御柱様の水を――」


 傷だらけのハシムは傷ついた体にムチを打って立ち上がる。

 彼の闘志は尽きることはない。

 しかし、その体力は限界に近いように見えた。


「待ってくださいハシムさん。御柱様には何か考えがあるはずです」


「ムゥン? 考え……だと?」


「はい。御柱様が不信心者に恵みを与えるとは思えません。あの水には何か隠された意図があるのではないでしょうか」


「ムムム……確かに」


「はい、なので今は見守りましょう。少しでも休んで体力を回復してください」


「――仕方あるまい」


(チャンスは1回しかない。それを逃すな……)


 果敢としてキラーチワワに斬りかかろうとしたハシム。

 だが、彼は東都の説得により剣を収めた。

 東都はいったい何を考えているのか? それはすぐに明らかになった。


「おい、見ろ! あいつまたやるつもりだぜ!」

「ヒャハハーッ!」


 キラーチワワはすっくと立ち上がったかと思うと、白亜の柱に再びまたがった。

 そう、水分補給したら自然と起きる生理現象……オーシッコだ!!


「ムゥン! 懲りずにまたしても!」


 怒り狂うハシム。

 だが、その陰で東都の顔には笑みが浮かんでいた。


「――いまだ! 冷房全開ッ!」


 東都はトイレの冷房設定を〝絶対零度〟に設定した。


 瞬時に冷気がほとばしり、空間が凍結する。

 池は凍りつき、湯気を上げるオーシッコも凍てついた。


 冷気はトイレの表面からさかのぼり――

 当然、キラーチワワの〝チワワ〟部分も凍結した!!!


<アァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!>


 急所中の急所!!!

 不可避の一撃がキラーチワワに入った!!!


「ハシムさん、今です!!」


「ムゥン!!」


 東都が叫び、ハシムが反応する。

 ヘルメットが白い軌跡を描きなだら砂の上を滑り、短槍を突き出した!


<アビャバギョグォォォォォゥ!!!!!>


 キラーチワワの〝チワワ〟は、魔獣の体の中で唯一筋肉のない部位だ。

 凍りついた魔獣のチワワが砕け、さらに進んだ鋼鉄は悪鬼の内蔵を貫く。


「フンッ!!!」


 ハシムは刺した部位を大きくえぐる。

 それによって、魔獣の生命の核たるボールが完全に破壊された。


<パキンッ!>


<ォォォォオオオオオオオオンッ!!!!!>


 小さく、可憐な破裂音の後、魔獣の切なげな絶叫がコロシアムに響き渡る。

 キラーチワワは砂の上に横たわり――そして、絶命した。


「まさかの展開だぁぁぁぁぁぁぁ!!! なんとなんと! ティンキーちゃんを殺したのは、初出場の謎の男だぁぁぁぁッ!!!」


「ワァァァァァァァァッ!!!」


 司会者のコールにより、観客が熱狂する。

 勝利に沸くコロシアムは、いつまでも歓声に包まれていた。





※作者コメント※

これはひどい(


あ、もう完全に忘れてましたけど、カクヨムコンダメでした。

うん、その原因はこのお話でわかると思います。

そもそもの話、なぜトイレで中間通ったし…(

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