第37話 礼文島沖海戦③

西暦2027(令和9)年1月9日 礼文島沖合


 戦闘が始まって2時間が経過し、第5護衛隊を構成する4隻の護衛艦は単縦陣でロシア海軍太平洋艦隊に接近。砲撃戦に突入していた。


「各艦、撃ち方始め」


 ミサイル護衛艦「あたご」の戦闘指揮所CICより、艦長の桐野きりの一等海佐が指示を出す。そして命令一過、主砲が火を噴く。


 「あたご」のMk45・62口径12.7センチ単装速射砲は自身をイージス艦たらしめる装備たるAN/SPY-1Dフェーズドアレイレーダーと、Mk46光学照準システムによって狙いを定め、発射。敵フリゲート艦に重量30キロの砲弾を叩き込む。


 続く「たかなみ」は、イタリアで開発されたものを国内でライセンス生産したオート・メラーラ54口径12.7センチ単装速射砲を装備。国産の射撃管制システムであるFCS-2によって照準し、砲撃。後続の艦も7.6センチ単装速射砲で続く。


 共に電子攻撃で射撃精度に障害を与えてきているが、海上自衛隊は元々光学照準を基本とした射撃訓練に力を入れており、その命中率はアメリカ海軍と比しても高いものがあった。対するロシア海軍は、近年になってようやく演習頻度が増えた程度であり、練度や関連機器の整備度合いで日本に後れを取っていた。


 撃ち合いは10分に渡って続いた。海自側が2隻、数発の被弾に留まったのに対し、ロシア艦隊はミサイルVLSやら艦砲を破壊され、大半が無力化されたのである。


 

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