第35話 礼文島沖海戦

西暦2027(令和9)年1月8日 北海道北部 礼文島沖合


 ロシア海軍太平洋艦隊の本格的な艦隊行動は、当然ながら海上自衛隊を強く刺激させた。艦隊旗艦を務めるミサイル巡洋艦「モスクワ」を先頭に、2隻のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦、4隻のウダロイ級駆逐艦、12隻のステレグシチー級フリゲート、12隻の各種コルベット艦、6隻の揚陸艦、その他補助艦艇からなる30隻超の大艦隊がウラジオストックより出航し、北海道北部の占領作戦に動いたのである。航空宇宙軍も作戦を開始し、40機程度の戦闘機と10機超の輸送機、そして虎の子の10機程度の戦略爆撃機を展開し、本格的な戦闘を始めていた。


 対する自衛隊は、北海道にある戦力だけでも第2・第7師団と第5・第11旅団が戦線構築を行い、2個師団相当の侵攻戦力に対して粘り強い抵抗を見せていた。第1特科団は洋上に展開する敵艦隊へ攻撃を仕掛け、航空自衛隊も第2航空団が制空権の保持に全力を傾けていた。


「よって、我らが海自は陸自に対して巡航ミサイルで攻撃を仕掛けるロシア艦隊に対し、強襲を仕掛ける。相当な死闘になる事を覚悟する様に」


 海上自衛隊第1護衛隊群旗艦、ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」の旗艦用司令部FICにて、艦隊指揮官の海将補はそう言う。すなわちそれだけ相手は侮れぬという事であった。


「敵戦力は数でこちらを圧倒している。よって我らは相手の攻撃を全て受け止めつつ

然るべきタイミングにて反撃を仕掛ける。我が国に対して不埒にも侵略を仕掛けてきた者どもは、しっかりとお帰り頂こうではないか」


・・・


 さて、戦闘は1月9日の深夜3時、ロシア艦隊がレーダーで敵艦隊を捕捉して始まった。


 スラヴァ級ミサイル巡洋艦の特徴でもある16基の発射筒から、P-1000『ヴルカーン』艦対艦ミサイルが一斉射され、同時に2隻のウダロイ級駆逐艦に2隻のソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦からも、3M24『ウラン』艦対艦ミサイルが発射。計40発のミサイルが日本艦隊に迫る。


「対空戦闘開始」


 対する第1護衛隊群は、2隻のイージス艦が前に出て敵ミサイルを照準。自慢のフェーズドアレイレーダーで全て捉え、そして矢継ぎ早にVLSよりSM-2『スタンダード』艦対空ミサイルを発射し始める。


 最大射程100キロメートルを超える大型対空ミサイルはマッハ3の超音速で敵ミサイルに迫り、そして直撃。これを破壊していく。そうしてミサイルの数を半減させたところで、今度は電子攻撃を開始。ミサイル弾頭部のセンサーを狂わせ、墜落を誘発させていく。

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