第33話 魔王会議

帝国暦226年12月22日 魔王国首都 魔王城


 新たに築かれた魔王城の謁見の間にて、魔王は七人の幹部と十数人の軍人を集めて会議を開いていた。


「現在、我らは20000エーカー8.1万平方キロメートルを占領し、シナより得たものを含めて500万の奴隷を有しております。これらの利用と使役により、魔族は11の部族が同調し、計40万の集団となって一つの国を形成しつつあります」


 ラストの報告を聞き、魔王は満足げに頷く。200年前の人類勝利以後、魔族の大半は迫害を受けて壊滅したとはいえ、未だにその規模が世界で生き残っている事に、感動すら覚えていた。次に報告を上げるのは将軍であった。


「現在、我ら魔王軍は戦線を東へ押し上げつつ、ニホン軍が拠点を置くエラノスにも強襲を仕掛けました。これにより幾分か被害を与える事に成功しておりますが、我が軍も損害を大分被りました」


「…すでに1万もの兵が死に、戦線は停滞を余儀なくされているか…ニホンも抵抗が非常に激しい。さて、どうするか?」


 魔王の問いに、ラストは答える。


「はっ…先ずは3か月の期間を用いて陸海空三軍の戦力を整えまする。我らは20万の帝国軍を返り討ちにしたニホン軍の戦力をやや過小評価しておりました。よって歩兵師団に加えて騎兵師団を3個、騎兵旅団を7個揃え、海軍は3個戦艦連隊、空軍は4個飛行師団を揃えまする。すでにシナやルーシの操り人形共は我らの意のままに支援を行い、我らも独自に軍事力を揃える力を得ております」


 ラストの言葉を聞き、魔王は頷く。


「うむ…3月初頭に我らは再度攻勢を仕掛ける。先ずは周辺の小国を悉く滅ぼし、盤石な領土を固める。そしてより強大となった兵力で以て、帝国本土へ侵攻。同時に再びエラノスへ攻め入り、ニホンも押し潰すのだ」


『御意!』


 一同は頷いて応じ、その日の会議は終了する。そして玉座から立ち、城の外にある軍の駐屯地へと赴く。


 シナより大量に供給される食料は魔族の栄養状態を著しく向上させ、多くの種族の基礎能力を高めていた。ゴブリンはホブゴブリンへと、オークはハイオークへと進化を遂げ、より精強な肉体を得ていった。そしてそういった魔族達は今、シナで作られた軍服を身に纏い、日夜訓練に勤しんでいる。


「我らは必ずや、勝利で以て200年前の雪辱を晴らさねばならん…」

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