第32話 新たなる帝国軍

帝国暦226年12月14日 ラティニア帝国帝都 皇宮


 玉座の間にて、兵部大臣は皇帝ユリウス4世に報告書を出していた。


「陛下、こちらが新規の徴兵・軍整備計画で御座います。これらは全て来年度予算と」


「ふむ…兵部大臣、セリアはニホンより直接支援を受けて、義勇兵を募っている。それとは別か?」


「はっ…皇女と言えども異邦人の妾が母親です。陛下もいざとなれば、その命を捨てさせる事を考えておられるのでしょう?」


 問いに、皇帝は苦笑を返すにとどめる。確かに血縁上のつながりはあるとはいえ、皇位継承順位に含まれぬ存在。彼女自身もそれを理解しているからこそ、命を惜しむ様子を見せていないのだ。


「現時点でセリア殿下は、3千名程度の兵員で構成される鉄騎兵旅団を5個、ニホンの支援で編制しつつあります。ニホンも魔王軍を脅威と見て支援に注力しておりますし、我らが十分な兵力を得るまで時間を稼いでくれる事でしょう」


「うむ…4か月前の雪辱、必ず晴らせ」


「御意に、陛下」


・・・


帝都北部郊外 演習場


 この日、ガラードは兵部大臣より与えられた『新部隊』を見に来ていた。


「ふむ…これが、セプティ・コリニアによって指導された『旅団』か…」


 そう呟く彼の目前には、数十両の装甲車両とその目前に並ぶ6千人程度の将兵。


「主力戦車41両と3個機械化歩兵連隊。これが基幹編制となります。自動車をいちから学ぶ事になったとはいえ、よく4か月でモノになったものです」


「何…騎士に選ばれた者は徹底的に教育と訓練を施すからな。卿らの指導プログラムについていけるだけの素地はあるという事だ。余り我らを無礼なめないでほしいものだ」


 指導将校は苦笑を返し、そしてガラードは一同に敬礼をする。


 斯くして、帝国軍は新たな兵士と部隊を手に入れたのである。

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