第28話 魔王軍襲来
西暦2026(令和8)年12月8日 エラノス平原西部
月が沈み、再び朝日が昇ろうとしていたその時間帯。エラノス平原の西部に幾つもの魔法陣が浮かび上がる。その発光現象は西部防衛線の監視塔からよく見え、隊員は即座に報告を上げる。
「西部地域にて異常現象を目視。警戒態勢の引き上げを求む」
『ベース・エラノス、了解』
そのやり取りの後、今度は空中にも幾つもの魔法陣が浮かび上がる。そしてそこから、数機のジェット戦闘機が現れた。
「…!?」
突然現れたモノに、隊員は驚く。しかし次いで報告を上げる事は出来なかった。
ジェット戦闘機は1発のミサイルを放ち、監視塔を爆破。火だるまに包まれながら倒壊していく様子を尻目に、他の機体は塹壕に向けてミサイルを放つ。地上からも重砲の砲撃が飛び、防衛線を破壊し始めたのだ。
「敵襲!」
報告は直ちに自衛隊基地の地下司令部に通達され、藤田は内藤とともに駆け込む。そして即座に指示を飛ばす。
「住民は直ちに地下のシェルターへ避難!自衛隊は総員直ちに戦闘配備!」
「仕掛けてきましたね…だから私は、以前より魔王軍が用いる魔法について研究を進めなければと…」
実際にその手の魔法を目撃しただけに、内藤の恨み節にも近い発言には重みがある。そして各所では、自衛官が指示を飛ばしていた。
「連中は『転移魔法』なる技術で、突然奇襲を仕掛けてくる!常に周囲に気を配れよ!相手も俺達と同じ現代兵器を持っているんだ、侮るな!」
いつでも奇襲を受けるかもしれないという覚悟を通達しつつ、装甲車両へと乗り込んでいく。そして西部の防衛線では、早速戦闘が繰り広げられていた。
「撃て撃て!撃ち続けろ!ATMは撃ったらすぐに捨てて逃げろ!射点を特定されて吹っ飛ばされるぞ!」
中隊長はインカムで怒鳴りながら、01式軽対戦車誘導弾の発射筒を担ぎ、照準。そして大地を踏みしめながら迫る敵戦車に向けて放つ。
国産対戦車ミサイルである01式は、発射後すぐに真上へ飛びあがり、戦車にとって一番装甲の薄い部分である砲塔天井に向けて急降下。直撃とともにメタルジェットの刃を食い込み、内部を焼き焦がす。瞬時に戦車の砲塔は吹き飛び、轟音が響き渡る。
戦車の後続を成す兵士の群れは、それを避けながら塹壕に迫るが、そこで待ち受けていたのは機関銃と迫撃砲の洗礼。12.7ミリ銃弾の驟雨が複数人を薙ぎ払い、81ミリ迫撃砲の砲弾が着弾地点を中心に吹き飛ばす。その火力の強力さは魔王軍にとって脅威的そのものであった。
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