第27話 第1鉄騎兵旅団
西暦2026(令和8)年12月1日 陸上自衛隊エラノス基地
騎士は、目前に並ぶ集団を見つめながら言う。
「本当に3か月で、ここまでのものになるとはな…流石は親衛隊に選ばれた者達だ」
9月始めに始まった訓練から3か月が経ち、3千人弱の集団は一つの軍隊として鍛え上げられていた。陸上自衛隊より供与された96式装輪装甲車を移動手段とする3個普通科大隊に、120ミリ重迫撃砲を運用する砲兵大隊。そして16式機動戦闘車と87式偵察警戒車からなる偵察戦闘大隊。後方支援を担当する部隊も含め、1個旅団に相当する戦力へと成長していた。
この訓練の内容は帝国上層部も知るところであり、魔王軍がやけに静かにしているのをいいことに、セリア親衛隊や軍主力の将兵を数百名でエラノスやアテリカに送り、指導を受けさせている。訓練プログラムの記録も取っており、賠償金の低減を条件に自衛隊の装備を購入したいと打診してきていた。
「これでも、我らからすると不十分なのですがね…それぐらい、現代の戦争というものは恐ろしいものなのですよ。数年かけて研鑽し、鍛え抜いた者達は、たった1秒で死ぬ可能性を抱えながら死地へ赴かなければならない…」
「不本意、だとでも言いたいのですか?」
「ええ。争いは生きる上で避けられぬ、人の原罪ですが…殺し合いで収める方法に固執するのはそんじょそこらの獣と大差ない。言葉を解せるのならば、人命を賭ける事のない手段で穏便に済ませたいところです」
・・・
巨大な建築物の一室にて、魔王は1杯の盃を掲げる。
「諸君、間もなく我らは帝国を攻め滅ぼす。すでに我らは陸上の兵力を十分に取りそろえ、空の兵力も確保した。必ずや、200年前に祖先を苦しめた猿共に復讐を果たす事が出来よう」
魔王の言葉に、その場に集った多くの将が笑みを浮かべる。王は言葉を続ける。
「さぁ、7日後の夜に全ては始まる。我らに媚びを売る猿共も同時に戦を始めるだろう。今ここに、全ての猿共に
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