第25話 近代化開始

西暦2026(令和8)年9月 エラノス地方


「まさか、殿下よりこの様な仕事を任される事になろうとは、思ってもみなかった」


 陸上自衛隊駐屯地の一角で、騎士の一人であるマリクは呟く。その後ろには、数千人の将兵や騎士達がいた。


 魔王軍が『反則』の手を使っている事が判明し、日本政府はアメリカと協議。その結果、ラティニア帝国に対して条件付きの軍事支援を行う事を決定した。


 例えば、マリク率いる3千人程の将兵。彼らにはこれから、陸上自衛隊と同等の技量を与える事となる。銃火器の取り扱いはもちろんの事、車両の操縦技術も仕込む。今のエラノス基地のキャパシティや弾薬備蓄量を考えると、3千人は教導すべき対象として丁度いい規模であった。


「あのニホン軍の力を得る事が出来るのか…それも3か月で…」


「それまでに、友軍が魔王軍に滅ぼされなければよいのだが…」


「莫迦、あの姫様だぞ。絶対に返り討ちにしてくれるさ」


 背後の兵士達が小声で言い合う中、マリクは教官の小西こにし三等陸佐に顔を向ける。


「コニシ殿、我らは不安を抱えながらこの地に参りました。我らがのうのうと訓練をこなす間に、帝国軍が魔王軍に滅ぼされる不安を…」


「それは十分に理解しています。すでに第16師団が援軍として派遣される予定にあり、貴国の助けとしてきっと活躍してくれる事でしょう」


 小西は自慢げにそう言うが、それでも不安は拭えなかった。

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