第24話 新しい魔王軍

西暦2026(令和8)年9月3日 元ロアズ王国領


 かつてロアズ王国という国があった地域に、多くの奇妙な兵が集う。そして都市があった場所では、巨大な城郭の建設が急ピッチで進められていた。そこでは奴隷のみならず、多くの人々があくせく働いていた。そして天幕の一つでは、ラストが自身の使える主君と対峙していた。


「我が王、我が軍は多くの労働力を得た事で余裕が生まれ、十分な訓練を積む事が出来る状態にあります。確実に帝国を滅ぼすべく、半年程の時間をかけて軍を強化すべきだと考えます」


 ラストの進言に対し、王は小さく頷く。確かに帝国軍は今の戦力と部隊でも十分に勝てるが、此度の戦争で対峙する敵はかなり多い。理想的な勝ち方を成すためにも、その進言通りに計画を進めるのもよいだろう。


「よかろう。どのみち帝国は虫の息となる。次はニホン国と争う事を踏まえ、兵力を増やすのだ」


「御意に、我らが王よ」


・・・


「これが、新たに編成した軍団か…」


 魔王軍の高位将軍に位置するオーガロードのラースは、目前に整列する軍団を見やる。


 ここに集うのは、潤沢にして栄養価の高い食事により身体が強化された、ゴブリンロードやハイオーク、そしてオーガに悪魔族といった魔人族の集団。だが身に纏う衣服は迷彩服であり、プロテクターにヘルメットも完備している。そして手に持つ武器はアサルトライフルや軽機関銃、そして擲弾発射器。彼らの背後には数百両もの装甲車両の群れ。


「将軍、こちらが『指導』を下に編制した第1騎兵師団で御座います。定数400名の歩兵大隊が3個と、40両の戦車を定数とする戦車大隊が1個で構成される騎兵連隊を3個、斥候隊員に後方支援部隊も含めて5000人で構成されております。が、火力を踏まえれば、人数換算で6万人もの歩兵軍団に相当する実力がありまする」


 部下の報告に、ラースは頷く。『銃』とかいう武器が数的劣勢を容易く覆す様子を目の当たりにすれば、数千程度でも10倍の兵力と同等の働きをしてくれる事に納得もしよう。


「現在、計画と致しましては、定数8000人の歩兵師団を10個、騎兵師団を8つ編制し、合計20万の陸上兵力で帝国を攻め落とす予定でございまする。また航空戦力の整備も進んでおりますし、そちらも含めれば、総兵力が10万にも満たない帝国など鎧袖一触で御座いましょう」


 そう言った直後、上空を2機の航空機が舞う。それを見上げつつ、オークの部下は説明を続ける。


「アレは新たに導入する戦闘機で御座います。ワイバーンの10倍近くもの速度で飛び、一撃必殺の誘導兵器を用いる事が出来る、機械仕掛けの箒…空飛ぶ魔法使いも一撃で消し飛ばしてみせましょうぞ。ちなみに操縦者は全て『義勇兵』で御座います」


「うむ…『彼の国』は欲望を満たすために大量の『人』を寄越してくれた。魔法も用いて計画を完遂出来る様にしよう。そして我らを利用していると思い込んでいる猿どもに、我らの恐ろしさを知らしめてやろう」


 ラースはそう言いながら、新しい魔王軍を眺めるのだった。

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