第21話 帝国軍対魔王軍①
帝国暦226年8月25日 帝国西部地域
ラティニア帝国軍と大魔国の正規軍『魔王軍』が衝突したのは、侵攻が始まって7日が経った時の事である。
「攻めよ!そしてあまねく全ての猿共を殺せ!それこそが2000年前の雪辱を晴らす好機である!」
オークの中でも一際大きく、そして強い種族であるオークロードの命令に従い、1万にも及ぶ大軍は広大な地平を進む。その軍勢は驚異的の一言であり、多くの人々を驚嘆させる。
「怯むな!我ら帝国軍の精強さを、野蛮な魔人共に見せつけるのだ!」
対する帝国軍も負けていない。数は4万と敵に比して多い。さらに彼らは建国以来長年に渡って祖国を守り抜いて来た自負があり、そして装備も周辺国に比して優れていた。
だが悲しい事に、その多くは異世界からの来訪者との戦いを知らぬ。それ故に、奇怪な装備を引き連れた魔王軍に対して、初見で当たる事となってしまった。
広大な平原で相対すること数分後、互いの距離は凡そ500メートルにまで迫る。そしてそこで、敵は一斉に攻撃を仕掛けた。ゴブリンやオークが持つ武器は槍でも弓矢でもなく、その圧倒的な攻撃を浴びて、多くの兵士が倒れる。
「な、なんだあの攻撃は!?」
「に、逃げーぎゃああああ!」
一度に数十人が鮮血をまき散らしながら倒れ、隊列の両側にいた騎兵も爆発に吹き飛ばされる。その被害は甚大そのものであり、指揮官は敵の攻撃に動揺する。
「な、なんだあの攻撃は!魔物どもめ、全てが魔法を使える様になったとでも言うのか…!」
そう唸る最中にも敵は迫る。そして僅か100メートルにまで接近したところで、喊声を上げながら突っ込んできた。魔人達の持つ武器は一見杖の様に見えたが、その先にはナイフが取り付けてあり、ゴブリンはそれを兵士の喉元に向けて刺突。直ぐに引き抜くと、杖の先より火が発せられ、後続の兵士は血反吐を吐きながら倒れる。
その背後に位置する怪異もまた、強力であった。長大な角からは炎が噴き出し、同時に放たれる一撃は大爆発を引き起こす。それに対してまともに抵抗する事など出来る筈もなかった。
斯くして、帝国軍は文字通り全滅した。そしてこれが、『帝国の涙すべき1年の幕開け』となるのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます