第20話 布告

西暦2026(令和8)年8月21日 自衛隊エラノス基地 総合庁舎


「帝国の西側に面する小国で、未知の武装集団が出現した?」


「はい。その数は凄まじく、しかも見慣れぬ武器と魔物を以て攻めてきているとの事です。帝国は我が国と事実上の休戦状態に突入している事を理由に、帝国軍の主力部隊を差し向けるとの事です」


 総合庁舎内の特命担当大臣執務室にて、三田の代わりにエラノスに立つ外務省職員の竹本たけもとは内藤に話す。この世界に進出して1年もの歳月が流れ、情報網はより拡大している。よって情報の収集能力も高いのだが、現地の派遣員が消息不明になった事もあって、把握に相当な時間を必要とした。


「セリア殿下も、親衛隊を率いてこれの討伐に赴くとの事です。しかし、果たして何が起きているというのか…」


「ううむ…」


 内藤が唸る様に呟いたその時。突如として床に魔法陣が浮かび上がる。竹本は思わずあとずさりし、そして一人の奇怪な男が現れた。


「ひょっひょっひょっ…」


「誰だ…!?」


 二人が身構える中、その男は恭しく礼をしながら名乗る。


「異邦人よ、お初にお目にかかります。私の名はラスト、遥か西の山を住処とする、悪魔族の者でございます。どうぞ、お見知りおきを」


「何…?」


 ラストと名乗った男は、床から光の鎖を伸ばして二人を拘束し、そして語る。


「現在、我ら『大魔国』は2000年前の復讐を果たすべく、異邦郷を利用して力を増し、ラティニアへ侵攻を開始いたしました。間もなく、異邦郷においても、あなた方の国に災厄が降りかかるでしょう」


「な…」


 唖然。その後にラストは語る。


「よって私は、あなた方に告げる。我らが魔王シン王の名の下に、大魔国は再びラティニアの地を魔人族の支配せし大地とし、そして異邦郷をも我らが地とする。覚悟せよ、魔法を知らぬ猿共。すでに我らは高度な魔法により、時の針を2000年も進める事に成功している。ただで勝てると己惚れるなよ」

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