第15話 帰国
西暦2026(令和8)年5月17日 日本国千葉県船橋市 東船橋駐屯地
「ついに帰国か…」
セリアはそう呟きながら、日本の空を見上げる。滞在したのは4日程度であるが、その時に得られた知見は膨大そのものだった。今後、帝国は日本との講和を余儀なくされるだろう。如何に抵抗を試みようとも、そも技術力に大きな隔たりがあり過ぎて、まともに戦闘で渡り合える可能性が見えないのだ。
「殿下、これから帝都にて如何様に動きますか?公然と和平を主張しても、無視されるだけに思えますが…」
「分かっている。とはいえ、このまま無駄に犠牲を積み重ねる結果になるのも望んではいない。帝都に戻る際に連絡係を招く名目で彼らを郊外に進駐させよう。少数ならば父上に元老院も過度に反応する事はないだろう」
部下にそう答えつつ、セリアは別の場所で自衛官達と話すルークを見やる。現在日本国はイルビア王国に対して優先的に交渉を仕掛けているらしく、堅実に『向こう側』での味方を増やそうとしているのが明白だった。
「先の戦争の影響からか、東の蛮族や北の海賊が活動を活発化させつつあり、予断を許さない状況にあります。やはりどうにか和平を結んで味方につけるべきでしょう」
「それは十分に理解している。故に布石は慎重に打っていかねばなるまい。これ以上戦争を続けるのは我が国にとって不利益だ」
セリアはそう呟きつつ、『転移拠点』に向かって静かに歩き始めた。
・・・
「我が王よ、間もなく騒乱が起きまする。これにて彼の国は動揺を露わになさるでしょう」
「ふむ…だが、それでは我らは武器を得られにくくなってしまうのではないのかね?」
「ご安心を。『門』が開いたその時から、すでに私は仕込みを終えております。後はその仕込みが動くだけでしょう…クフフフフ…」
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