第12話 エラノス基地にて
西暦2026(令和8)年5月13日 エラノス平原 自衛隊エラノス基地付近
「これが、貴下達の造り上げた城か…」
CH-47JA〈チヌーク〉の機内にて、セリアはそう呟きながら、眼下に広がる要塞を見下ろす。
自衛隊が展開して8か月程度が経ち、エラノスの基地施設は立派なものとなっていた。何せ3個師団と1個旅団が常に駐屯する施設である。『転移拠点』を中心に幾つもの鉄筋コンクリート製の堅牢な建造物が立ち並び、その周りには永久陣地や塹壕が張り巡らされている。その外側にも防衛設備が充実しており、セリアはそれを見て、帝国軍や連合軍がどれ程の被害を受けたのかを理解する。
「間もなく飛行場に到着します。が、先ずは空中哨戒機の離陸を待たなければいけませんね」
内藤がそう言った直後、滑走路より2機のF-16C〈ファイティング・ファルコン〉戦闘機が離陸する。まるで
「アレが我が国に於いてワイバーンに該当する航空戦力です。ワイバーンの10倍近くもの速さで飛び、視界の外より一方的に攻撃する手段を持つ…任務はそれ以外にもありますが、あなた方の戦力で太刀打ちできる戦力ではない事は確実です」
内藤はそう説明し、セリアの表情が歪む。そして機体は着陸し、藤田達が出迎える。
「ようこそ、エラノス基地へ。第16師団長の藤田と申します。これより案内いたします」
藤田はそう言いながら、一行を官舎へと案内する。その道中、セリアの部下の一人である騎士のドーゴが尋ねる。
「にしても、あの獣共は何だ?全く身動きせぬが…死んでしまっているのか?」
「いえ、あれは乗り物の一つです。普段使わない時は普通に止めているのですよ。人の手で作り上げられたものですので」
藤田の説明に、ドーゴの目が丸くなる。そして官舎へと案内され、それぞれ個室へ案内されていった。
夜を迎え、鎧を脱いで普段着となり、御付きの隊員の案内に従って風呂場に来たセリアは、服を脱ぎながら説明を受ける。その際同じ脱衣所にいた女性隊員は言葉を失う。
今年で18歳を迎えるという彼女の身体には、幾つもの傷が残っている。白い肌は渓谷が如き切り傷の痕で無残な状態となっており、皇女という帝国の中枢にて安穏とした日々を送れる立場にいる筈の彼女が、どれほどまでに死線を潜り抜けてきたのだろうか。それを想起せずにはいられない程に多くの傷を背負っていた。
そして翌日、一行は『転移拠点』をくぐって日本国の土を踏んだのである。
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