fil.4 再会
「メアリー様、た、大変です!爆発しそうです!」
顔を上げると結界は壊れており、黒渦が、巻き起こっていた。中心にいるのはテルキ。テルキから大量の魔力が放出され、爆発寸前だった。
「全員、魔法を。『
「「「『
爆発から身を守るため、
さらに、周りに被害が起きないように結界も張る。
「『
白い魔法陣ができ、黒渦を覆う白い光を出す。
「来るよ!!!」
結界に囲まれたテルキが、黒渦を作る魔力を放出した。
ドガーーーーッッッン!!!!!
爆音とともに、魔力が反応を起こし、爆発。
魔力が無い場所だったため、魔力が急激に『無』で圧縮されたために起きた。
さらに勢いが増していく。
パリッッン!!!
結界が壊れる音が鳴り響いた。
「魔風(魔法を発生させた時に出る風)にも気をつけて!」
爆風が起き、次々と魔法使いたちを吹き飛ばす。
「うっ、あの、魔力暴走を止めるには、私では足りない。どうすれば・・・」
頭をフル回転させるメアリー。その時―
「『
どこからか来た黒い光が黒渦を飲み込む。
全ての魔力をその魔法が飲み込む。魔力が飲み込まれたテルキはその場で崩れ落ちた。
誰かと思い、メアリー、そして皆が振り向く。
そこにいたのは、元勇者パーティーのメンバー3人だった。
勇者のパーティー。
魔法使い、ロイ・オオタ。
エルフ特徴の長い耳、ふっくらとした体つきの男で、短髪の黒髪。名前の通り、『異世界人』の子孫。全属性の魔法を使い、魔法では総合的にテルキを上回る。
アーチャー、ルイス・ルーレンス。
金髪の長髪を後ろで結ぶで顔の整った男。メアリーの兄であり、この国の王子。シスコンである。
シールダー(盾使い)、グレース・レイター。
銀色に光る鎧を身に纏う、赤髪の可憐な女性。メアリーの姉のような存在だ。
「久しぶりですね〜!!」
キャシー並みにのんびりとした声で声をかけてきたのが、ロイ。
「メアリー!久しぶりー!」
「グレース姉様!久しぶりね!」
女子二人が抱き合う。
「メアリー、久しぶりだな」
ルイスが妹に声をかけるも、チラ見しただけで、グレースとの話を続けた。
「メアリー〜〜!」
抱きつこうとするルイスをかわし、一喝する。
「兄様、いえ、王太子様!何回も言いますが、抱きつかないでください!」
重度のシスコンである兄に呆れるメアリー。この兄のせいで、テルキとメアリーの恋が妨げられていたのは、別の話。
一方、急に来た勇者パーティーを他の人々は、呆然と眺めていた。
「どうして、英雄様たちが・・・」
「は、初めて、生で見ちゃった!」
「ルイス様だ!!」
辺りが騒がしくなる。
「オホンッ!静粛に。しかし、どうして英雄の方々がここに?」
アルラスが聞く。
「実は、私が呼んだのです、先生。万が一のために」
「それはそれは・・・。ご足労いただきありがとうぞざいます」
「大丈夫で〜す!」
「宰相様、私達に任せてね!」
「そうだぞ、アルラス」
三人が答える。
「ルイス王子。父君には話しているのですか、ここに来ることは?」
「・・・す、少しぐらいいいだろ!」
「はぁ〜、わかりました。陛下には私から説明しておきます」
「よろしくな!」
能天気に親指を立てる王子であった。
「それより、だ」
ルイスは怖い表情を浮かべ、よろよろと立ち上がるテルキのところに向かっていく。
「お、おお!ルイス、久しぶり・・だね」と、テルキ。
無言で向かう。
「ル、ルイス、すごい表情で、どうした?」
テルキの前に立ち、手を上げる。
「あ、兄上!」
「『
黄緑に光る光が、テルキの傷を治す。
治ったテルキを見て、ルイスは口を開いた。
「歯を食いしばれ!」
そう言って、拳を作りテルキの頬めがけて振り下ろす。
ボゴッ!
テルキはギリギリのところで、倒れなかった。
「妹を困らせている分だ!」
「あ、ああ。すまない」
その言葉を聞き、満足そうに笑みを浮かべる。
「兄上!」
「どうだ、兄としてしっかりと・・・」
バッッッッチーーーーンンン!!!!!
大きな音が響く。
メアリーは兄の頬をひっぱたいていた。
「私の夫を殴るとは、いい度胸ね」
「ち、違う。これは、男としての・・・」
「そんなの関係ないわ!
魔法使いの皆さんは、施設の修復を。騎士の皆さんは仮施設を建てて。テルキは仮施設に休ませて。グレースたちは私についてきて」
「わかったよ、妹よ」
「・・・。兄上は別よ。そこら辺をうろついていて下さい」
「ま、待ってくれ〜〜!!!」
ルイスの叫び声が鳴り響くのであった。
「で、私たちを何で呼んだのメアリー」
グレースが聞く。
「私も聞いておりませぬが・・・」
アルラスも言う。
「すいません。色々と立て込んでおりまして。
それで、何でパーティーメンバー呼んだかと言うと、兄様。説明して」
「オーケー、妹よ!
僕が提案したのは、名付けて『テルキボコボコ作戦』!」
「兄様!!」
メアリーに睨まれ、作戦名を撤回する。
「作戦としては、俺たちが暴走したテルキと戦い続けるというもの。正直効果は分からないが、一度試してみる価値はあると思う」
「ルイス。あんた、それ、ただテルキを殴りたいからって理由で提案したね」
グレースに指摘され、黙るルイス。
「兄様!どっちなの!」
「・・・少し、いや、半分ぐらいは」
「正直に!」
「いや、8割ぐらいは正直思ってました。で、でも、もちろん救いたいとも、もちろん思ってるよ!当たり前だろ!テルキは親友だし、戦友であり、何より・・・俺の義弟だ・・・」
最後は消え入りそうな声でボソボソ言った。
「何も行動しないよりは、とりあえず、やってみる価値はあると思う」
「わいも、賛成で〜す」
ロイが同意する。
「昔の戦闘を~体に思い出させることで~もしかして~反動で治るかも~」
「ほら、ロイもそう言っているし」
「う〜ん。私は気が乗らないけど、ここで待っているよりは、何かやらなくちゃいけないしね。メアリーの意見は?」
メアリーは少し考え、答える。
「兄様の思惑が入っているのは気に入らないけど、テルキお治すためには心を鬼にしなくちゃいけないし。うん。私も戦うよ」
「よーし。我が妹メアリーも賛同したことだし、いくぞー、みんな!打倒、テルキ!!」
べッッチーーーンンン!!!
「兄様。いい加減にしてください!」
「あ、ああ。悪い悪い。それでは改めまして、もう一度!
必ず、テルキを治すぞお!! エイ・エイ・オーーー!!!」
「「「オオオーーーーー!!!!!」」」
その昔、幾度も彼らパーティーを支援し、指導もしてきたアルラスは、彼らのその様子を少し離れたところから見ながら、こっそりと涙を流していた。
久しぶりに、勇者バーティーが戻ってきたのだ・・・
◇
「さっきはすまんな、テルキ!」
会議は終わり、真っ先にその足でルイスは親友のところへと向かった。
「いや、大丈夫だよ、王子様・・・プッ、ハハハ」
「おい、やめろ!その呼び方は嫌いだ。それに、距離も感じる。昔と同じで呼び方でいい」
「分かってるよ、ルイス」
しばらく沈黙が流れる。
久しぶりの再会で、話題が見つからない二人。
「王子として、最近はどうだ? 忙しいのか?」
「大変だぞ!・・・」
話し始めたら止まらない。
夜になるまで、彼らの話は続いた。
酒を飲んでいたため、次第に酔う二人。
「いいか、テルキィ〜!我はまだ、認めてないからな!」
「またその話?何回目だよ。俺らには子供もいるし、お前のかわいい姪っ子、甥っ子だぞ。もういい加減認めろよ・・・お義兄さん!」
「うるせ〜!!妹は我だけのものだ!!!!!」
「シスコンすぎるだろ。聞かれたらまたメアリーに殴られぞ!」
苦笑いを浮かべるテルキ。
「でもな、テルキ」
「うん、何?」
「我はメアリーの苦しんでいる姿は見たくないんだ!だから、彼女を悲しませる真似だけはするな!」
「僕も同じ気持ちだよ!いつか、この病気も治すさ」
「今回は妹のために行動してるんだ!お前のためじゃない!」
「分かってる、分かってるよ!」
親友の想いは、親友が一番よく理解している。
「だから聞いた通り、暴走したお前と俺たちは戦い、潰してやる!だから、全力で向かって来い!いいな」
「ああ。言われなくてもな」
二人は握手を交わす。
あの日、魔王を倒して以来の握手を。
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