第1話 龍生、DMからビックニュース

ピピピピ 目覚まし時計の音が部屋中に響き渡る

「ふあぁ~、あぁもう7時か、学校だなぁ」

コンコン

部屋のドアをノックする音が聞こえる「龍生、ご飯よ~」

「はーい、今行く」

「おはよう、母さん」

「また、あんた実況してたでしょ」

「うん」

「実況するのもいいけどテストは大丈夫なの?」

「学校終わって軽く残って勉強してるし、家帰っても勉強してるから大丈夫」

「赤点は取らないようにね」

「はーい、ごちそうさま、行ってきま~す」

「行ってらっしゃい」

龍生は、ご飯を食べ、家を出た。


―――――キーンコーンカーンコーン。

龍生が先に座ってスマホを見ていると後ろから光誠の声が聞こえた。

「おは、宮田」

「おはよう、光誠」

「宮田、お前、登録者数一気に増えたな!!!」

「あぁ~、びっくりしたよ、マジで何事かと思ったわ」

「そりゃ!あのエンゼルちゃんからの配信だぜ!?伸びるに決まってんだろ!」

「う~ん、でもなぁ、いきなり伸びてもなぁ」

「なぁに、なんか困りごとでもあるのか?」

「いや特にないんだけど、実況に対するハードルが上がるんだよなぁ」

「別にいいじゃねぇかよ!、それだけ期待されてるってことよ!」

「そうかなぁ、でも俺の実況、趣味でやってるだけだから期待されてもなって感じ」

「でも、趣味の割には、相手チームのことしっかり勉強してるし、Yでの評価いいぞ?ほら」

光誠は、そういってYの検索結果からのツイートを見せてきた

(このウイムラっていう人、実況生まない?)

(ウイムラ氏、相手チームの成績、順位、調子の状態まで把握してるって何者なんだ)

(このウイムラの声、マジ良すぎ!)

(コメントもあんま気にしてないのがいいな)

(ウイムラ氏のファンアート勝手に作っちゃいました(笑))

「うわぁ、マジやん、今日の実況、肩の荷が重いわぁ」

「そんなこと言うなって!!、今日も配信聞いてるからな!」

――ガラガラ。 教室のドアが開く音と共にガタイの良い男性が入ってきた。

「そろそろホームルーム始まるぞ~、席につけぇ」

担任の先生に言われ、光誠は自分の席に着いた。


「えぇ、ここの地形は~」

(今日も授業、中々めんどく眠いんだよなぁ)

(今日のウインナーズ、予想スタメンは、1番 センター 矢沢、2番 セカンド 上川、3番 ショート 奈良、4番 サード 清宮、5番 ライト 忠誠、6番 指名打者 野村、7番 レフト 松本、8番 捕手 虎井、9番 ファースト アリエル、先発投手は上沢。この辺かなこの予想でやってみるか)

「で~、この問題を宮田、お願い」

「はい!!」

(うわぁ、やっべぇスタメン考えてたせいで全然話聞いてねぇ....)

「どした?宮田、この問題分からないのか?

「ったくん...宮田...君」

話しかけられ、振り向いた相手は隣の席の女の子だった

「は、はい」

「この問題の答えはこれだよ」

女の子は、ペンをノートに指し、答えを教えてくれた

「はい!、この問題の答えは、やませです」

「はい正解、ここ定期テストで出すからなぁ」

「ってことで今日の授業はここまで、明日もあるかな~忘れんなよ」

生徒一同「はーい」

「ふぅ~、あぶねぇ、ごめんね!助かったありがとう!」

龍生は、隣の女の子に笑顔でそう言った。

「ううん、困ってる人にはつい」

女の子は首を横に振った。

「それより、真剣にノート見て、書いてたけど何やってたの?」

「あっ、これは、プロ野球のスタメンを考えてたんだよね」

「野球、好きなの?」

「うん、好きだよ」

「私も好きなの!」

「ほんとに?じゃあ、応援してるチームは?」

「私、ウインナーズ、宮田君は?」

「俺もウインナーズだよ。」

「ほんとに!?」

女の子は興奮して前かがみになった

(やっべぇ、ちけぇ、マジいい匂いするぅ)

「そういえば、配信って何時からやってるの?」

「えっ?なんで知ってんの?」

「滝山君と話してて聞こえちゃったから」

「あぁ~、今日は17時45分からかな?」

龍生は、冷や汗書きながらそう答えた。

「わかった!今日、聞いてみるね!」

女の子は龍生に対し、笑顔で答えた。

「えと..名前教えなくて大丈夫?」

「えっ?あっ!ああぁぁ!!い、一応、教えて!」

女の子は顔を真っ赤になりながら焦っている身振りをしていた

「ウイムラのPBR実況チャンネルっていう名前」

「あっ、うん、ありがとうね!あっそうそう、私の名前教えてなかったね、私の名前は、甲斐田優芽かいだゆめっていうの」

「珍しい名前なんだね、ありがとう、名前教えてくれて」

「うん!」



野球用語解説

 ライナーとフライの違い

ライナーとは直線的に低い弾道でボールが飛んでいくこと、フライとは、バッターが空中高く打ち上げた打球のこと。

 指名打者

攻撃時に投手に代わって打席に立つ、攻撃専門の選手のこと。

 ストライク

ピッチャーが投げたボールについて、審判が判定するもので、バッターが空振りした場合や、バッターがスイングしなくてもストライクゾーンと呼ばれる領域をボールが通過した場合などに宣告される判定のこと。

 ボール

ストライクゾーンを通過できなかったときに与えられる判定のこと。ボールが4回続くと、バッターはフォアボール判定となり1塁へ進む。

  フォークボール

変化球の球種のひとつ。。ボールをフォークで挟んだように見える握り方なので「フォーク」と呼ばれるようになりました。バッターの近くで急速にボールが落ちるような変化をする。

 カーブボール

カーブはピッチャーが投げる変化球のひとつで、利き手と逆の方向に曲がっていく軌道を描く。バッターのタイミングを外す目的に使われることが多く、速球との速度差によって打ちづらくなります。

引用:スポランド野球場 

URL https://www.homemate-research-baseball.com/useful/10151_baseball_dic/index18.php


ライト・・・右

センター・・・真ん中

レフト・・・左

ファースト・・・1塁

セカンド・・・2塁

サード・・・3塁

ショート・・・2塁と3塁の間。

流し打ち・・・打者が利き腕の方向へ打つバッティング方法



――――昼休み。

龍生と光誠は、中庭にある桜の木の下で横になっていた

「なぁ、宮田」

「なんだ?」

「お前、休み時間、珍しく女の子と話してたよな」

「ゲッ....なんで知ってんだよ」

龍生は驚きながら言っていた

「なんとなく見てた」

「見るなら話しかけろや!」

「だーてさぁ、お前と女の子と楽しく会話してるところ見たら、友人としてそっとしときたくなるやん」

「だとしてもよ!」

「んで?その子の名前は知ってんのか?」

「甲斐田さんっていう名前」

「はぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!!?」

光誠は、飛び起きながら返事をした。

「でっかい声出すなって」

「宮田、お前、マジで言ってる?」

「マジだよ、なんだよ、知ってんのか?」

「知ってるもなにも、甲斐田さんってめっちゃ美人でボーイッシュで男子、女子共に密かに人気なんだぞ?」

「ほぇぇ」

「で!で!何を話したんだ!」

光誠は興奮しながら言った。

「なんか野球が好きらしく、配信見に来るねって言われた」

「お前、あの人気女子が配信見に来るとかやばすぎだろ」

「なーんか、今日の配信やりたくねぇなぁ」

「あのなぁ、昨日の配信でやるって言ったんだろ?やらないと」

「それはそうだけども....」

ピコンッ!

「ん?通知だ、DM《ダイレクトメッセージ》だ」

「なんだこの時間にDMとか」

龍生は、通知で来たDMの画面を開いた。

「えぇーと、天ノ星事務所から「はじめまして、VTuber事務所「天ノ星」にてタレントの配信サポートや企画を行っております野島と申します。この度、弊社企画を予定しておりますプロパワ甲子園野球大会の実況をウイムラ様にお願いしに参りました。お忙しいところ恐れ入りますが、ご検討のほどよろしくお願い致します」と」

「お、お前、その事務所の名前って...」

「昨日の配信切り抜きで見てた、エンゼル・エンジェルの所属事務所じゃ....」

龍生と光誠は、お互い顔を合わせる

「すっげぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「いや、ビックニュースにもほどがありすぎないか?」

「しかもY公式のゴールドマークついてるぜ?それ」

「ほ、ほんとだ」

「ん?続きがある」

「なんて?」

「んと「追加で大変申し訳ございませんが、弊社のVTuberであります、エンゼル・エンジェルからコラボ依頼が来ております。ウイムラ様には、専用のVTuberの姿もご用意する予定ですので、重ねてご検討宜しくお願い致します。」とだって」

「お前はもう一人前の配信者じゃねぇか」

「いやいや!!!!、配信しはじめたの去年からだぞ!?」

「う~ん、まぁ考えとくかぁ」





―――――その日の夕方。

龍生は、ウインナーズの情報を集めていた。

(今日の登録選手、抹消選手はと....)

17時30分、龍生は配信準備に取り掛かっていた

「音量よし、マイクよし、画面よし、ユ・リーグライブ画面良し、スタメン表はこれから入力すると」

ピコンー!

「ん?通知?、エンゼル・エンジェルさんのツイートか」

龍生は、エンゼルのツイートを見ていた。

『こんばんエンジェルー!、みんな!今日の配信は!22時頃からとなっています!もしかしたら遅れるかもしれないのでよろでーす!』

「ほぇぇ、あっちもあっちで忙しそうだなぁ」

「あっやべ、時間だ」

17時45分、配信開始。

「皆さん、お待たせしました。ウインナーズ対ワイヤローズ戦、今日も連勝できるように応援してがんばりましょう!」

龍生は、ガッツポーズするような身振りをして話す。

(待ったぜ!)

(ワクワク)

(今日の先発は上沢投手だね!)

(連勝できるといいけどな(;'∀'))

「それでは、初めに本日の出場登録選手及び登録抹消選手です。出場登録選手は、宮西選手、山田選手、今川選手の3名、登録抹消選手は、北山選手、加藤選手、マイケル選手の3名です。」

(偉人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!)

(山田選手、ここで使うのか?)

(北山、マジお疲れさん)

(加藤選手は、しばらくは調整が必要やね)

(ここで山田選手が来るとは思ってもいなかった)

「昨シーズン、打たれまくっていた宮西選手ですが、今シーズンのファームでは、ここまで15試合連続、無失点となっています。また、山田選手、今川選手は、選球眼も良く得点圏内に入っていて、また守備においても文句なしということから出場登録されました」

(なるほど)

(15試合連続無失点の宮西とか2016年の全盛期をここで出すか)

(山田は守備、うまいからねぇ)

(今川って確か3試合連続ホームラン打ってなかったけ)

(そうだね)

「それでは17時55分になりましたので、本日のウインナーズのスタメンを紹介いたします。1番 セカンド 奈良、2番 センター 矢沢、3番 サード 清宮、4番 ライト 忠誠、5番 キャッチャー 虎井、6番 レフト 松本、7番 指名打者 江越、8番 ショート 上川、9番 ファースト アリエル、先発ピッチャーは上沢となっています。ここまでの投球数は、100回越えが多く、疲労も心配されていますが、上沢選手本人は150球ぐらいまでなら全然余裕だと公言しています。」

(5番に虎井って....)

(監督の采配はよくわからん)

(上沢選手は今日は勝利へ導けることやら...)

(ウインナーズ、特有の貧打線は今日あるかどうか)

「個人的な話をしますが、今日のスタメンの中で気になるのがDHの江越選手ですね~。普段ならセンターを守備として使えたり、代走起用としても使うことができますね。でも新城しんじょう監督は、江越に何かしらの期待をしているからDH起用をしたように思えます。そんな江越はその期待に応えることができるのか、今日の試合の見どころでもあります。江越ガチャは果たして成功となるのか?」

(あぁ~言われてみればDHに江越はめずらしいな)

(代走って五十畑いそばただけなのか?)

(代走1人はまずくない?)

(えご兄頼むよぉぉ!!!)

(江越って今シーズンからトライガーズから移籍してきた選手か)

(トライガーズファン曰く、江越は当たればホームランとか行けるらしい)

「 ちなみに代走起用は、五十畑選手、細井選手の2名です。」

(そうだ、完全に忘れてた細井居たわ)

(そういえば居たわ)

(なら代走関係は大丈夫やね)

「セガドームOSAKA、ただいま試合開始です!」

―――1回表。

「1回表、ワイヤローズの攻撃。上沢がマウンドに上がります。上沢が和山に対し初球です。足を上げて、ボールを投げました!、空振りぃ!145km/h高めストレートです」

「上沢が2球目をグローブを構えて、足を上げて投げました。見送ったっっつ!ボール!、横に外れてフォークボール130km/hです。」

「ワンボール、ワンストライク、上沢が3球目を投げました。和山が打ち上げた、レフトの方向へたかーく詰まったあたり、松本が足を止めてボールを掴んでアウト。レフトフライでワンアウトです。」

(フライを打たせる方向に変わったか。)

(案外悪くねぇな)

(こぇぇぇ)

「ワンアウト、ランナーはありません。続いての打席がゴンザレスです。」

「上沢がゴンザレスに対して、足を上げて構えて1球目を投げました。見送った!ボール。高めストレート外れました。」

「1《ワン》アウト、1ボール、ランナーなし、上沢がゴンザレスに対して2球目を投げました!、打ちました、ファールボール。」

「1アウト、1ボール、1ストライク、上沢がゴンザレスに対して、3球目を投げました!打ちました、サードライナー!清宮がゴンザレスの打った打球に対してジャンプしてボールを掴みました、niceプレー!2アウトです。」

(きよみーないす!)

(打球早すぎるやろw)

(よく取ったわ)

「2アウト、ランナーはありません。次の打席が森です。」

「上沢が森に対して初球です。足を上げて構えて投げました。空振り!129km/hカーブです。」

「2アウト1ストライク、上沢が森に対して2球目投げました。打ちました、レフト方向への流し打ち、ショートゴロだ。ショートの上川がボールを掴んで1塁に送球!ファーストのアリエルがボールを掴んでアウト!3《スリー》アウトです!上沢投手、この回はバッターを塁に出すことなくしっかりと抑え、3者凡退となりました。1回裏へと入っていきます。」

(今年のうわっち、なんかこぇぇぇ)

(niceプレー)

(エラーしなければ強いんだよな)



次回 第2話 江越ガチャとウインナーズ打線の行方



~あとがき~

ご覧いただきましてありがとうございました。そしてプロローグから続いて読んでくれた読者の皆さん。本当にありがとうございました。本命のラジオ実況ですが、長すぎたので次回に回しました。新キャラも登場して、作中に出てくるあの女の子の正体が気になるところですね~。次回も見て頂けると幸いです。

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