第5話 魔王と勇者と、王国の軍隊!
//SE 草の上を歩く音。
「連日の会議をするのも疲れたからのぉ。お散歩じゃ」
「お前も、座ってばかりで疲れたじゃろ。わらわが軽いとはいえ、ずっと膝の上に乗っけていると足もしびれると思っての」
//SE 草の上を歩く音。
「魔王城にはな、こんな感じで草地もあるからの。たまにわらわと散歩するのもよかろう」
「なあ、勇者よ。また街へ行って、クレープというものを食べさせて欲しいぞ」
「それ以外の甘いものがあれば、それも食してみたい」
「あんなに甘くて美味しい物を作れるなんて、人間も悪いやつばかりじゃないのかもしれないのだ」
「爺やも、お前のことを信じてくれたようだし良かったぞ。最近の会議もお前の発言に一目置いてくれているようじゃ。やっぱり、お前は見込みのある男じゃ!」
//SE 手を握る音。
「なんじゃ、振りほどこうとするな。仲良くお散歩するときは手を握るものだと、爺やが言っておったのじゃ」
「父上も母上もいないわらわは、爺やだけが肉親みたいなものじゃ。爺やは何でも知っていて、優しくて。今や、父上みたいなものじゃな」
//SE コツコツと、石の床を歩く音。
「そろそろ、休憩も終わりにするかの。わらわの椅子になるお前を気遣ってじゃな、みんな途中休憩というものを入れるようになった。お前が来てから、なかなか良い循環が出来ておるぞ」
//SE コツコツと、石の床を歩く音。
「ぬ、なんじゃ。王座の魔の様子がおかしいぞ! 魔物達があんなにも倒れているぞ」
//SE コツコツと、石の床を走る音。
「……これは、どういうことだ」
//SE コツコツと、石の床を走る音。
「誰か、誰か喋れるものはおらぬか! 爺やはどこじゃ! どうしたんじゃ、誰もおらぬのかーー!」
//SE 門が開く音。
「爺や! そこにいたか」
//SE コツコツと、足を引きずりながら石の床を歩く音。
「大丈夫か、その怪我は……。これをやったのは誰じゃ……」
「まさか、人間ども……。じゃと?」
「わらわの言いつけを守って、爺や達は人間へ手は出さなかったのじゃな。偉いぞ」
「けれど、だから魔王軍はこんなにやられてしまったのか……」
「わらわが勇者とぶらぶらと散歩をしている間に……。すまぬ」
「今すぐ回復させたいが、傷薬も切らしていて。わらわは回復魔法などは使えぬし……」
「ココにいるものは、闇魔法しか使えぬか……。回復魔法など誰も……」
「そうじゃ、勇者よ! 回復魔法! 勇者よ、回復魔法を頼む!」
「ためらっていないで助けてくれ! 爺やをどうにか!」
//少しの間、沈黙。
「……勇者よ。まさか、これが作戦じゃないだろうな。わらわを信頼させて連れ出して、その間に魔王城を襲わせる」
「手の込んだこともするものじゃ……。信じてしまったわらわがバカだったのじゃな」
「……勇者よ」
//SE キラキラ。回復魔法の音。
「回復魔法……。集中力が必要だったのか。すまぬ」
//SE カタッ。
「爺やよ! 大丈夫か! 気をしっかり保ってくれ。幾分か先ほどよりかは顔色が良くなったが」
「勇者よ。かたじけない」
「……まだ、疑いが晴れたわけじゃないが。」
「なんじゃ、こんな時にまた脱ぎおって……」
「わかった。お前のことは信じるから大丈夫じゃ。クレープの借りもあるしな。」
//SE 岩壁が崩れる音。
「まだどこかに残党がいるぞ。攻撃を仕掛けて来るかも知れないから……」
//SE コツコツコツ。石の床を走る音。
「いたぞ人間じゃ! 危ないぞ勇者よ、柱の陰に隠れろ!」
「なに? 人間どもを説得すると? また脱ぎだして。武器を持たないのはいいが、せめて鎧くらいは着ておれ」
「あちらも、勇者がいると気付いているから大丈夫じゃと?」
「いや、待て勇者よ、いきなり飛び出すな! 万が一ということも」
//SE ピューン。光線銃が打たれた音。
「ううっ。凄まじい光じゃ。こんな撃を仕掛けてくるのじゃな」
「……勇者? おい、どうした! 倒れてどうしたのじゃ!」
「だから言ったじゃろ、鎧くらいは着ていけと! 大丈夫か? すぐ手当てが出来ないが、一旦そこで待ておれ。わらわがあいつらを追い払おう!」
//SE ファサッ。飛び立つ羽の音。
「おい、人間どもよ! ここから出て行ってくれ! わらわはお前たちに手は出したくないのじゃ!」
//SE ピューン。ピューン。光線銃が打たれた音。
「おい、人間どもよ! 攻撃をやめるのじゃ! この城から去れ! わらわは、攻撃などしないから、もうやめるのじゃ!」
//SE ピューン。ピューン。光線銃が打たれた音。
「くっ……。多少の被弾は仕方ない……。けれども、手は出さないぞ……」
//SE ピューン。ピューン。ドスッ。光線銃が当たった音。
「くーっ……この光線威力が……」
//SE ファサッ。羽ばたきながら地面へと降りる音。
「くっ……。人間ども! わらわ何もしていないぞ! 攻撃をやめて話を聞くのじゃ! こちらには勇者もいて、平和への道を探っておるところなのじゃ!」
//SE ピューン。ピューン。ドスッ。光線銃が当たった音。
「ぐっ……」
//物音がしなくなる。
「……光線は終わったかの……。やっと、わかってくれたか。……それでは、人間どもよ、ここから去るのじゃ」
//何も物音がしない。
「……被弾しすぎたか、耳が聞こえずらい……。追い払えたかの……? 勇者よ。待っておれよ、今行くぞ……」
//SE コツコツと、足を引きずりながら石の床を歩く音。
「勇者よ、生きておるか……? わらわは、ちょっとやられてしまったが、ちゃんと約束は守ったぞ……」
「誰も殺してない……。えらいだろ……。良い子良い子してくれ、勇者よ」
//SE ドサッ。倒れる音。
「勇者よ……。わらわを膝の上に乗せて、いつもみたいに撫でてくれ……」
「……いつものようにくだらないことを真面目な顔で言ってくれ。お前の言葉の一つ一つがわらわに響いてきて、くだらないことが、とても面白かったのじゃ。嘘偽りの無い、真っ直ぐな言葉で……」
「のぉ。勇者よ。ぐはっ……」
//ポタポタ。口から、血が垂れる音。
「……どうしよう。わらわ、血が出すぎているようじゃ……。お前の膝の上でなら、死んでしまうのも悪くないかの……」
「……しかし勇者よ、お前も血が酷いな。お前ももう長くは無いか……」
「お前がこの城に来てくれた時から、わらわは楽しかったぞ、友達もいないわらわに付き合ってくれたのだ。嬉しかったんだぞ……」
「なんだか眠いな……。寝るなって……?」
「大丈夫、いつもの時間に起きる。日が昇ればまた目が覚める……」
「ははは……。わらわは弱くなってしまったのかの。お前と過ごした日々で」
「勇者よ。お前と出会えて、良かったぞ……」
「……どうした」
「先ほど見た、回復術式……?」
「おい。止めるのじゃ、そんな力を使うでない! お前が死んでしまうぞ!」
「おい勇者! やめるのじゃ! わらわのために、力を使う出ない! 勇者一一!」
//SE キラキラ。回復魔法の音。
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