第4話 インターネットブログによる『宇宙虹人イカホロ』解説

『宇宙虹人イカホロ』

カルト的人気を誇る特撮テレビドラマシリーズ ファンのめんどくささは日本一

大ヒットしたアニメ版との比較もあります


監督:大森マサハル

脚本:杉原和夫、大塚政信、西尾第、里見慶壱

出演:あさひなとしお、高橋寿男、小山田裕、ほか

ナレーター:南場次郎

オープニング:『宇宙虹人イカホロ』


本作は第一次怪獣ブームの六〇年代に制作されましたカラー版特撮テレビドラマシリーズ。

第二次怪獣ブーム(変身ブーム)の前ですので、主人公が変身して戦うのではなく、主人公が正義のヒーローを「呼んで」敵と戦ってもらう形式です。

この頃は特に少年が笛を吹いてヒーロー・悪魔・怪獣等を呼ぶことが多く、現在ではこれらはまとめて「笛召喚系作品」と呼ばれます。

『宇宙虹人イカホロ』もこの笛召喚系作品に該当します。

当時の笛召喚系作品には他に『超怪獣ギゾル』『ミラクルマリン』などがありました。


本作の本放送は六〇年代でしたが、その後何度か再放送されたようです。

後にVHS化もされ、レンタルビデオ屋でよく見かけるようになりました。

再放送で育った子供が大人になり、レンタルビデオ屋でイカホロを借りてきて、自分の子供に見せるという動きもあったようです。

正直な話、『宇宙虹人イカホロ』は「特撮といえばこれ!」と一番に名前が挙がるようなメジャーなタイトルではありません。

順番で言えば三番手か四番手くらいです。しかし濃いファンが多くつき、知る人ぞ知る作品となりました。


『宇宙虹人イカホロ』の転機となったのは、数年前まで放映されていたアニメリメイク版『イカホロUK』の人気でしょう。

『イカホロUK』は元々一年の放送を予定していたのですが、爆発的ヒットを受け、放映が延長されました。登場人物の入れ替えなどを繰り返し最終的に七年間という長い放送になりました。

話のフォーマットは宇宙虹人とほぼ同じ、ただし登場人物の細かい設定やイカホロ召喚アイテムは変えられました。

UKはイカホロを呼ぶときに笛を吹きません。今どきの子供は笛になんて憧れませんので、イカホロを呼ぶアイテムは電子端末と天球儀に変更されました。

このアニメ版のヒットで、オリジナルである『宇宙虹人イカホロ』は大いに注目されました。

DVD&ブルーレイボックスや関連グッズが販売されるようになったのはこれがきっかけだと言われています。


しかし現在『宇宙虹人イカホロ』ファンと『イカホロUK』ファンの間で激しい争いが行われています。

UKが近年の放送ということもあり知名度は圧倒的にUKが上、若年層は宇宙虹人の存在すら知らない人も多く、また宇宙虹人が注目されたのはUKのおかげであることから宇宙虹人派は少し繊細になっているようです。

設定等が違うことからUKのことは全て噛みついて否定するような過激なファンも多数います。

くれぐれも「実写版なんてあるの?」などの不用意な発言は控えてください。


『宇宙虹人イカホロ』で正義の味方イカホロを呼ぶのは主人公の少年アカツキです。

話の大きな流れとしては、怪獣が街に出現。アカツキが笛を吹いてイカホロを呼ぶ。イカホロが怪獣を浄化して消す。イカホロが去る。というものです。

イカホロは怪獣を「倒す」のではなく「浄化する」というのが大きなポイントとなります。

というのも、街を襲う巨大怪獣は皆この街の人間なのですね。

この街の人々が敵の大ボス「宇宙皇帝ダイダイ」に怪獣にされて襲ってくるのです。

街の人々を倒すのは忍びないということでイカホロがするのは「浄化」となっています。

ただし、やっていることは倒すことと大差ありません。殴ったり蹴ったり容赦ないです。

多くの方がご存知だと思いますが、イカホロの体格凄いですからね。物凄い。物凄い肉襦袢。

見た瞬間「こいつは強い!」と理解できる、笑ってしまうぐらいのマッシブな体格をしています。

そういう男の中の男みたいな体格のイカホロに力強く殴られるわけですから、怪獣になった街の住民は本当にお気の毒です。

ただし怪獣の正体が街の人間であることが明かされるのは物語の中盤ですので、それまでは視聴者は「わあ、イカホロに街を守ってもらっている!」という嬉しい気持ちになれます。実に頼もしい存在なんですよ、イカホロ。


ここでイカホロの必殺技についておさらいしましょう。

作品モチーフが虹ということでイカホロが羽織っているマントは虹色です。

このマントが万能で、鉄壁のガードにもなるし、羽根に変形して空を飛ぶことだってできる。

テーマが虹なので色使いも派手です。

先ほど浄化の話をしましたが、イカホロが各話の最後に必ず使う浄化技が「アヌエヌエの矢」です。

イカホロが天に向かって虹色の矢を放つと虹の雨が降り注ぐんですが、これで破壊された街並みが元通りになり、怪獣も安らかな眠りについて霧のように消え去ります。

この技が出ると「そろそろ終わりかあ」というしみじみとした気持ちになります。


最後に番組の冒頭で必ず流れるナレーションも紹介しておきます。

「人は誰しも魂に灯(ひ)をともしている。その灯が七色に輝くとき、人は勇者に選ばれるのだ」

『宇宙虹人イカホロ』で重視されるのは魂の美しさであります。

主人公の少年アカツキがイカホロを呼ぶ笛を見つけたのはその魂が美しく七色に輝いたからだという説明が劇中でされますし、台詞内にも魂という言葉は幾度となく出てきます。

イカホロが肉体担当ですから、我々地球人は魂の担当ということかもしれませんね。


過激な宇宙虹人信者に辟易して食わず嫌いでいるUKファンも多いのではないかと思います。

宇宙虹人もUKもどちらのイカホロも格好良くて頼もしいことには変わりません。

UK世代の人達にも是非見ていただきたいです。

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