第3話 悪魔の耳かき3点セット

「マッサージの次といえば……耳かきなんてどうですか? おにーさんは好きですかね?」


 少女は見たこともない耳かき道具を取り出した。耳を徹底的に気持ち良くするようなデザインをしている。


「これ悪魔的な耳かきセットなんですけど、人間さんのお耳にも効果は絶大だと思うんです。やってみましょうか?」


「ほら。私の膝に頭を乗せてください。膝枕です! えっ? も〜! おにーさん? 遠慮しなくて良いんですよ? おにーさんは疲れてるんですから」


 少女の柔らかそうなふとももに、恐縮しながら頭を乗せる。背徳感と幸福感に包まれる主人公。


「ふふっ。もう幸せそうじゃないですか。でも、喜ぶのはまだ早いですよ〜? 優し〜く耳かき、してあげますからね?」


 まず少女は、通常の人間の耳かきに近い形の道具を手に持った。耳を痛めないように、優しく耳かきを始める。カリカリと乾燥した音が耳に響いた。


「かりかり、かりかり。この耳かきは気持ち良さ重視ですから、おにーさんの気持ち良い場所にフィットしているはずですよ。どうですか? 気持ちいいですか?」


 心地よいカリカリ音と感触に包まれる。心を込めて耳掃除を続ける少女。


「おにーさんのお耳、悪魔と違ってなかなか可愛い形してますね〜。まるっこくて、柔らそうで。ぷにぷにですね。よいしょっ。よいしょっ」


 悪魔的な耳かきのあまりの気持ち良さに、主人公の身体は思わず震えてしまう。それを見て、少女は耳に顔を近づけ、小声でそっと囁き始めた。


「気持ち良くてちょっとゾクゾクしてますか? ふふっ。おにーさんのお耳、結構よわよわなんですね♡ ……よわよわおにーさん♡」


「ここですか? ここが良いんですか? いくらでも、気持ち良くしてあげますからね。おにーさんはまだまだ幸せが足りないんですから。そのよわよわのお耳を、私がたっぷり癒やしてあげます」


 耳かきを続ける少女。よいしょ。よいしょ。かりかり。かりかり。と、独特な掛け声と耳かきのカリカリ音が混じり合う。


「ふぅ。たくさん、取れましたね♡ 恥ずかしがらなくても良いんですよ? こんなに取れて、私も気持ちいいんですから……♡ ふふっ。本当にいっぱい、取れちゃいましたね〜……♡」


 一般的なデザインの耳かきを仕舞うと、少女は、ブラシのようなデザインの耳かきを取り出した。悪魔の耳かきの名に相応しい、刺激的なデザインをしている。


「今度はこれで、気持ち良くしてあげますからね。悪魔的ブラシ耳かきです。精一杯、ゴシゴシしてあげますからね」


 ゴシゴシとブラシの音が耳に響き始める。柔らかいブラシは、耳に適度な刺激を与えつつ、心地よい感触と音で癒やしを与える。


「こういう耳かきって人間界では珍しいですか? ほぉ、やっぱりそうなんですね〜。じゃあ、おにーさんには、特別大サービスで、悪魔の耳かきを味わわせてあげますからね? ふふふっ」


「ごしごし。ごしごし。眠くなったら遠慮せず、眠っても大丈夫ですからね? もし寝てしまっても、おにーさんが満足するまで、何度でも耳かきしてあげますから」


「奥の方をゴシゴシと。どうですか? よわよわなおにーさんのお耳は、この快楽に耐えられますかね〜? とろけちゃうんじゃないですか? ふふっ。冗談ですよ。おにーさんが気持ち良くなるように、私は愛情を込めてお掃除しますから」


「おにーさんのお耳に詰まった物が、ごっそり取れてますよ〜。耳掃除で溜まった疲れも、少しは取れると良いんですけど。ごしごし。ごしごし」


 ひと通りブラシ耳かきを堪能した主人公。だが、まだ耳かきは終わらない。次に少女はフサフサの耳かきを取り出した。


「さて、いよいよ仕上げの耳かきです。このフサフサで、全部綺麗にしてあげますからね」


 細やかな綿のようなフサフサは、耳を埋め尽くすような音と感触を与える。


「このフサフサも、悪魔的なフサフサですから。人間界の物とはひと味もふた味も違うはずです。たくさん気持ち良くなってくださいね?」


「ふさふさー。ふさふさー。うんうん。おにーさん、気持ち良さそうですね〜。まだまだ続けてあげますからね〜。よいしょ。よいしょ」


「おにーさんが幸せそうだと、私も嬉しいです。私は、おにーさんの味方ですから。大丈夫。何も心配いりませんよ? おにーさんは偉いです。おにーさんは頑張ってます」


「お耳のように、心もお掃除してあげられれば良いんですけど……。え……? 心のお掃除、出来てますか? 本当に? ふふっ。そうだと嬉しいんですけれど……。ふさふさ。ふさふさ」


「おにーさん、また身体がビクビクしてますよ? やっぱりよわよわなんですね。でも、そんなよわよわなおにーさん、私は好きですよ♡ ……なんて。ちょっと言ってみちゃいました。おにーさんは、私のこと、好きなんでしょうか……? い、いえ、なんでもありません……」


 モゴモゴと口篭りながら、少女は耳かきを続ける。フサフサでモサモサの耳かきの音が、絶え間なく続く。


「おにーさんは、どの耳かきが一番好きですか? かりかりですか? ごしごしですか? ふさふさですか? リクエストしてくれれば、またいつでもやってあげますからね?」


「よいしょ。よいしょ……。ふぅ。とりあえず、こんな感じでどうでしょうか? もう耳はとっくに綺麗になっているんですけどね。おにーさんが気持ち良さそうでしたから、つい、サービスしてあげちゃいました♡」

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