第2話 悪魔のスライムマッサージ
「次はこれですっ! ぷにぷにのスライムっ! それそれ〜っ」
今度は少女の両手から、つやつやしたスライムがモリモリと出現した。その大きさは成人男性を飲み込める程だった。
「ふぅ……。じゃあ、おにーさんはその中に入ってくださいっ!」
困惑する主人公。そんな主人公を同じくキョトンと見つめる少女。優しく微笑みながら主人公の肩を掴んだ。
「大丈夫大丈夫。さっきも言いましたけど、これは癒やしの魔法なので、迷惑なことも危険なこともありませんから! ほら、安心してスライムにダイブしてくださいっ!」
少女に肩を掴まれたまま、半ば強引にスライムにダイブさせられてしまった。ちゃぷんと水のような音に包み込まれた。
「ほら、どうですか? 気持ちいいでしょう? 人間界にもスライムはあるらしいですけど、なかなかこんな体験は出来ないんじゃないですか?」
スライムのちゃぷちゃぷ音で主人公がリラックスし始めたのを確認すると、少女はおもむろにスライムに腕を突っ込んだ。
「では、次はスライムマッサージでおにーさんを癒やしてあげますね? 肩とか凝ってるんじゃないですか? このスライムにも、癒やし効果がありますので! たっぷりと癒やされてくださいね?」
ちゃぷちゃぷとスライム越しに肩を揉まれる。程よいスライムの弾力とサウンドが癒やし効果を発揮し始めた。
「あら〜。なかなか凝ってますね〜。よいしょ。よいしょ。こんなに肩が凝っていたら、そりゃ幸せオーラも湧いて来ませんよね! お疲れ様です……!」
力を込めて肩を揉みしだく少女。本来無音の肩揉みも、スライムの効果でちゃぷちゃぷと音を発している。
「人間界の、えっと、湿布、でしたっけ? このスライムはそういう効果もあるんですよ〜。もみもみ。もみもみ」
「ほぐしがいのある肩ですね〜。おにーさんの身体を触ってると、私もなんだか安心して、癒やされてしまいそうです。な、なんちゃって……。えっと、ここですか? もっと力を込めてあげますね? よいしょ。よいしょ。ふんっ。ふんっ」
「う~ん。まだまだほぐれませんね〜。魔界のスライムを持ってしても簡単にはほぐれないとは、本当に疲れが溜まっているんですね……。よしよし、私で良ければ、いっぱい優しくしてあげますよ? よいしょ。よいしょ」
「肩叩きもやってみましょうか? それっそれっ。とんとん。とんとん。スライム越しですが、どうですか? このくらい強くても大丈夫そうですね」
スライムをタンタンと打ち付ける音と感触に包み込まれる。スライムとの相乗効果で肩の凝りがほぐれていく。
「肩が凝ってるんですから、背中や腰もガチガチなんじゃないですか? こっちもよーく揉みほぐしてあげないと! よいしょ。よいしょ」
肩から背中や腰に、少女の指が移動していく。普段1人では絶対に届かない場所をマッサージされ、癒やし効果は高まっていく。
「ふふっ。効いているようですね。良かったです。では、このままじっくりと、ガチガチな部分をほぐしてあげますね? ほっほっ。ふんっふんっ」
力の入った吐息を漏らしながら、少女はスライム越しにマッサージを続ける。柔らかなスライム音が一定のリズムで鳴り続ける。
「肩の付け根なんかも、気持ちいいんじゃないですか? ほら、ここ。こういうくぼみなんかに指を入れて〜。ぎゅーっと。それっ。ぎゅ〜っ」
「肩甲骨っていうんでしたっけ? この辺りをぎゅ〜っと。力と気持ちを込めて〜。ぎゅ〜。よいしょ。よいしょ。どうですか? 上手ですか? ふふっ。喜んでくれているようで何よりです」
「なんでそんなに上手なのかって? お父さんにもやってあげてたからですかね? ふふっ。お父さんも、おにーさんみたいに鼻の下を伸ばしていましたね〜」
「男の人の身体は、実はお父さん以外触ったことがなくて……。本当に新鮮な気持ちです……。私だって、最初はおにーさんのこと触るの、ちょっとは緊張していたんですよ? もう慣れてきましたけど……。よいしょ。よいしょ。おにーさんの雰囲気が優しいから、安心してきたんですかね……」
「おにーさんを幸せな気持ちにしてあげたい。その気持ちがあれば、恥ずかしさも乗り越えられます! ほら。腰回りも、親指をぐっと押し込んで〜。ぐぐぐっと!」
「足なんかも疲労が溜まっていそうですよね〜。ふくらはぎをぎゅっと。ぎゅっぎゅっ。ほっほっ。人間は空を飛べませんから、足にもいろいろ負荷が掛かりますよね〜。大変ですね〜。偉い偉い、です」
「はいっ。また上から順番にやっていきますよ〜。はいっ、肩〜。よっ、よっと。よいしょっよいしょっ。腰〜。ぐりぐり〜。ぐりぐり〜。足〜。ぎゅっぎゅっ。ぎゅっぎゅっ。ぎゅ~っと」
しばらく身体全体をほぐし続ける少女。スライムの音が心地よく響く。
「ふぅ〜。とりあえずこんな感じですかね。おにーさん、お疲れ様でした〜。スライム回収しちゃいますね〜」
スライムを両手に発生させた魔法陣で回収していく少女。その回収音も、チュルチュルジュボジュボとなんとも言えない心地よい音を立てた。
「どうですか? なかなかリフレッシュ出来たんじゃないですか? さっきより顔色も良いみたいですし」
まじまじと顔を確認する少女。だが、それでもまだまだ主人公の疲労は回復していないようだった……。
「うむむ……。ここまでやってまだ幸せオーラが溢れて来ないとは……。おにーさんはなんと過酷な目に遭っていたのでしょうか……。可哀想に……。よしよし」
主人公の頭を撫でつつ、少女は次なる策を考えていた。主人公が幸せオーラで満たされるまで、彼女のご奉仕は終わらない。
「次はもっと癒やしてあげますから、期待していてくださいね? おにーさん?」
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