第27話

「そうだ。」

オレはもっと広域の地図を広げた。

あの人が電車に乗って通った駅、降りた駅。

そこに印を付けていく。

あの人と接触した人が使う駅。

住んでる場所。

オレがはっきり聞いた事のある地名、小耳に挟んだ地名をとにかく思い出しては印を付けていった。

思い出しては地図で場所を探す。

印を付ける。

ある程度終わったと思った時には随分長い時間が経っていた。


「これからだ。」

そしてオレはそのエリア内で起きた事件を片っ端から調べていくのだった。

何日もかけて。


「出来た。」

そう呟いたオレの完成した地図は、地図が見えない位に黒い文字がびっしり並んでいる。

オレの字が最初大きかったのもある。

だが、想像を超える位に、事件が起こりすぎていた。

人身事故の数も半端ない。

やはりあの人の言うとおり、あの人たちのデマをきっかけで起こった出来事なのか?

人身事故に関して言えば、実際に沢山の書き込みがあった。

「最近〇〇線の人身事故多くない?」

「昨日は〇駅、今日は〇駅。呪われてる。」

控えめに言っても多い方だと思った。


「ん?」

オレはスマホの光に気付く。

「ん?」

最近連絡を取っていなかったどころか、仲が良かったかさえ忘れている位の、そんな奴からの突然の連絡。目を細めながら画面を見た。

「あの2人、60代と30代の親子だって!

訂正しないと捕まるらしい。お前も回しとけよ?」


オレの頭は「・・・」だ。

なぜ?と考える前に

「言ったからな、お前に。オレは!」

続けて届いた、やけくそなのか、捨てぜりふなのか、落ち着きのない文体。


「・・・・・。」

なぜ今なのか?

それから、どういう風の吹き回しなのか。

「今頃かよ。」

スマホをベッドに投げ捨てて、オレは机の前に座り直した。


地図を前に、推理するようなそんな顔をしてみたけれど、

「ぁあー、ダメだ。」

邪魔が入った。

さっきの連絡がオレの長続きしない集中力を

一瞬にして吹き飛ばした。

投げたスマホを鷲づかみして、友人でもない友人に電話を掛けようとした。

そこに、ふと最新のニュースがオレの目に飛び込んでくる。

ありとあらゆる事件事故を調べたせいか、オレのスマホには似合わない最新のニュースのお知らせが届く。

そのタイトルに導かれるように動画を再生した。

長すぎて適当に止めた。

見終わっての感想。

きちんと喪に服する姿をしていながら、なぜか笑みのようなそんな顔をしている人間に違和感を感じた。

そこに所属する人間が1人亡くなったらしい。警察は自殺とみていると。

その後すぐ、その会見は社会から痛烈な批判を受けることになるのだった。


集中力の切れたオレ。

あの人のフリマのページを本当に本当に久しぶりに開いた。

掲載されたあの人の商品に目立って変わりはなかったし、随分と前から更新もされていないようだった。

数えれる程度。

1つ1つ出品されている商品を見ていくオレ。

「ん?」

オレはこんなところでも気付くのだった。

こんな商品説明があった。

今まで読み飛ばしていたのか、商品だけを見て、読みもしなかったのか。

「いつも沢山の方に見て頂いておりますが、〇〇便ですので、遠方の方々も是非ご購入下さい。」

「これって…。」

多分、オレたちの正体は、オレたちが思うよりずっとずっと前から、もしかすると犯罪をやるより前から、あの人たちにばれていた。

絶対にばれていた。

誰も、隠す気がなかったからだ。

やはりオレたちは十分すぎる位に足跡を残している。

まだやっている残党に、今でもあの人たちに悪いことをしようとしか考えつかない残党に、オレは心の底から苛立っている。


言い訳?

あの人たちに、良いことをする気はないのか?

罪滅ぼしする気はないのか?

言い訳をする=自分の事しか考えていない

という事になる。

オレたちは十分に追い詰められている。

あの人はどんな結末を用意しているのだろう。これはもう、小説ではない。

よく分からないが、そんな感覚に陥った。
















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