第19話

人身事故?殺人事件?

オレの頭は多少パニックになった。

けれど、受け入れられない事ではなかった。

ショッピングモール。

タクシー乗り場の近く。救急車がよく横付けされていた。

色んな所で死んでいる人間がいるのかもしれない。


いつもの休憩室。

次から次へと色んな人が入ってきた。

が、いつの間にかそれと同じ数、消えていった。

その後どうなったか、あの人達の付きまといを続けているのか、それとも死んだのか、それはオレにも分からない。

だが、生きているとも限らない。

そういう事か。

ふと浮かんだ。

あの人のお父さん。

見えないのは同じでも、死んだのと、家族を置いて逃げたのとは全く違う。

死ぬほど違う。

あの人はそれが言いたかったんじゃ。

ブログの最初の方を思い出した。


オレも知っていた。あの人が買った商品。

勿論店頭に並んだ。

それに似たようなもの。

それも間違いなく並んだ。


郵便物の遅延。

それには心当たりがある。

あの集団は、あの人に届く郵便物まで知っていた。

何から何まで調べ尽くしていそうだった。

それなのに、年齢と叔父の事は黙っていた。


何がしたいのか?

どこまでしたいのか?

どこまで行くのか?

このブログもそうだ。

どうして、オレが読めているのか。

なぜ元々は風水のブログだった事をオレが知っているのか。

あきらが教えてくれたのだ。


オレはあの人がフリマアプリで出品している商品も知っている。

でも、あの集団は購入しない。

無意識にオレの顔は歪んでいた。

あの人は普段化粧をしていなかった。

オレが言いたい事。

なかなか言葉でうまく言えない。

あの人が化粧をしている時。

そんな時は、あの人の顔の写真はあまり回ってこなかった。


「化粧をしていない。」

あの集団はよく言っていた。

女には重要な事なのだろう、そう聞き流していたけど。

今は、働いてる奴だけ、自分だけ化粧をしていたらいい、そう思う。

どうでもいいことだ。

そして、次。

「働いてない。」

オレたちのせいだろ?

結婚を邪魔したのも。

オレたちのせいだろ?


オレは最近気付いている。

元々答えを知らないのだ。

やり出した人間が。

こんがらがる頭を整理しながら、頭を働かす。

つまりは、何も知らない人を、あーだ、こーだ、自分たちで作り上げた。

だから正解なんてないのだ。最初から。

あの集団がやっていること。

それは正解が欲しいんじゃない。

一日中付きまとって、一瞬も逃さず何もかも見て聞いて、そして、自分が言い出した事の証拠を探しているだけだ。

言いふらした大多数の人間に、

「ほら、言ってた通りだろ?」

そういう瞬間を夢見ている。

そうか、夢の中か。

だからお前には希望しかなかったんだな?

ずっと楽しそうに見えた。

そういう事だったんだな。

でもあきら、お前の夢の中にオレを一緒に入れないでくれ。

そして、あきら。

お前はこんなオレより、頭が悪い。

それは自覚すべきだ。

オレは今、相当吐き気がする。

不愉快だ。


あの人の言うように、オレは一線超えてしまった。

犯罪をする前と後。

あの集団と共に、ずっとあの人達の毎日を追いかけ、登場し続けたオレは、いつの間にか本当の景色を忘れていた。

オレは馬鹿だ。

景色はずっと同じだった。

当然だ。何も変えてないのだから。

同じ事をずっとやり続けていたのだから。

最近よく思う。

本当に馬鹿すぎると。

頭をグシャグシャに掻きむしっては沈む。

そんな毎日の繰り返しだ。


オレに何か出来る事はないか。

そればかり考えている。

あの人はオレに死んでほしいだろうな。

そうも思った。

何でもかんでも同じにする。

あの集団の発想。

それこそ「お前はうぬぼれている。」

だろ?

「思い上がり。」

だろ?

あの人達はお前らと一緒になりたいなんて1ミリも思っていない。

今、自首しようか?

いや、それはもう少し後だ。

オレは思った。




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