第12話

オレはあきら達の事を考える。

あの集団は、あの人達から離れる気はなかった。何年でも何十年でもあの人達の事を言ってられる。あの人達でなくては困るのだ。そんな執拗ささえ感じた。


ブログに書かれたあの人の家の周囲で起こっていた嫌がらせ。

あきら達と、どこか通ずるような気がするのはオレだけだろうか?


「死んでなんかない。旦那は生きている。」

「良い人よ。」

「亭主に逃げられて可哀想な女。」

「頭が弱い。」

「馬鹿女。」

オレもその話は聞いていた。

あの集団は、あの人達の話で異常なまでに盛り上がる。男でも女でも。


最初は面白かった。こんな話題でも。

次から次へと色んなネタを持ってくるあの集団の事が。

だが、それが出来るのはあの人達の事を1日中付きまとっているからだということに、その時は気付きもしなかった。

オレがその片棒を担いでいる事さえ気付いていなかった。


そしてオレたちは、あの人達を散々な目に遭わせながら、沢山の人と知り合って、仲良くなって。

オレはアルバイトからそのまま正社員になって。

それも、こんな感じで、皆と顔見知りで、他の店の人とも話す機会も増えて、ここで勤めるのが楽かなと思って。

コロナが流行る前は、合コンなんかもあった。この休憩室の中で出会い、付き合い、結婚した人も沢山いる。

ただ、出会いのきっかけはこんな事。

間違った情報で盛り上がり、羽目を外して犯罪をし、そして警察に言われてる。

そんな事などつゆ知らず、子供まで作ってしまった先輩もいる。

いつからかオレたちは、錯覚を起こしていたのかもしれない。

皆と仲良くなれたのはあきら達のおかげだろうか?

いや、違う。

そしてあの集団も錯覚していると思った。

お前たちが人気者になれたのはお前たちに魅力があったからなのか?

いや、違う。あの人達のおかげだ。

ずっとネタにされ続けて、今この時でさえ居場所を流され続けているあの人達のおかげだ。


そしてオレは気付くのだった。

あの集団は錯覚なんてしていない。

分かっているんだ。

あの人達のネタさえあれば人気者になれる。

大勢の中心に立てる。

大勢の人を動かせる。

それを分かっていて手放さない。

そういう事だ。


あの人達がショッピングモールに来なくなれば、あの人達から手を引くのだろうか?

いや、それはない。

なぜなら何処に行っても居場所を流すのだから。

あの人達が引っ越したところで、新たな場所で、また新たに次から次へと協力者を増やしては同じ事をするはずだ。

それをあの人達は分かっている。

だから毎日同じ行動をとっている、きっとそういう事だ。





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