第7話

別に最初からあきらと友達ではなかった。

オレはショッピングモールでバイトをしていた。オレの方がそこに出入りしていたのは早い。


いつもの休憩室。オレは違う奴等と談笑していた。

そこにあきらが現れる。

何気ない会話をかわした後、友達になってくれと言われ、早い段階で、連絡先を交換した。


あきらはこれもまた早い段階で、あの人達の写真を見せた。

37才のあの人を指さす。

「こいつ、生意気なガキ。」

それが、あの人達とオレが繋がった最初の日だった。


「次はボーダーだって。」

あきらが言った。

「お前が着ろよ。」

「だな。笑。」


何となくオレの表情を見て、感情を読むのは早い奴だったと思う。

今となってはボーダーなんか着なくて良かったと思った。もちろん、赤色も着ていない。

なぜボーダーなのか?

あの人、37才のあの人に、彼氏がいるんだと。その彼氏がボーダーを着ていたから。


それで、ボーダーを着る。それで、どう助かるのか?


あの人に彼氏はいない。この数年間。

そして、ブログの最初の方を思い出した。


「ウラタだ。」

言葉が勝手に出た。

あきらはよく言っていた。

あいつらは嘘つきだと。

あきらの仲間もそう言った。

「あいつらは、ウラタって書いてたから。」


あきら、あの人達は噓をついてない。

その事を、お前はいつから知ってたんだ?

オレは何となくスマホを触った。


ウラタ。

その言葉をきっかけに、オレの記憶は蘇る。

こんなに喋りたい事は山ほどあるのに。

何で誰にも言えないんだろう。

情けなくなった。


そう、あきらが次から次へと話題を変え始めたのは、話をすり替え出したのは、あの時からだ。

変えるとは言っても、全てあの人達の話。


オレは他の奴等からの噂を小耳に挟んだ。

その事をあきらに言った時。


「あいつら、警察に言ったって言ってるらしいぞ。やばくないか?」

あきらは警察にひどく反応した。


あきらみたいな奴は、他にも沢山いて、オレたちのようなグループを作っては連絡を取り合っている事は知っていた。

たとえグループが違っても同じ行動をしている。オレたち男だけではない、女も、老人も。子供も。

皆がスマホを持つ。居場所を流す。

写真を撮る。流す。


他の場所でもこんな事が起きているのだったら、あの人達の行動は、透け透けで丸見えだという事になる。

気ちがいのような話。

だが、現実に起こった。

オレも加担している一人だ。


事実、あの人達がどこに行こうとオレたちは知ることが出来た。知ろうと望んでなくてもだ。

あの人達のその日の服装はもちろん、行った場所、入った店、買った物、誰と会っていたか。鮮明な画像付きで回ってくる。

噂では、あの人達と接触した人間の近くに家まで借りる奴もいると、そんな話も聞いた。


何のために?

今になったら思う。

なんでここまでする必要があるのか。


そして思った。

きっとあきらは連絡をよこさない。

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