第2話 家族

 思考がばらばらになりすぎた文章のため、読み返してみると恐ろしく読みづらい。今回は、背景を生成りに設定して書き進めている。背景色によって書く気分も変わってくるみたいだ。色の認識とは面白いものである。

 さて、話を進めよう。一話を書き終えたばかりで、思考の書き出しにより、幾分か落ち着いた気がする。読み直して気づいたことは、曖昧な表現を好む傾向にあることだ。


 一話で説明すべきであっただろう、僕について話していこう。僕がどんな人間であるかについて。僕は大学生である。東京にも横浜にもその他関東圏にも住んでいた。幼いころは、長期休みの間だけ東北にある祖父母の家で過ごしていた。現在は進学に伴い、関西で一人暮らしをしている。現在の僕を語るうえで、家族関係が大きく関係しているのでここで掘り下げて説明していこう。

 家族構成は、父、母、僕、弟、妹の五人家族である。僕の家庭では父の絶対権力の元、生活が回っている。世にいうDVが横行しているが、僕の家族はそのことに気づいていないらしい。気づいていないというより、それだと認識出来ていない、というべきか。怒鳴られることは日常茶飯事である。実家に近づく道路からすでに父の怒鳴り声が響いている。家に限らず、出先のお店で、仕事場で、旅行先や遊びの場でも、どこにいても構わず怒鳴りがちである。何度か通報されたこともある。父による主なその手段は、(父本人にしてみたらそれの自覚は全くないが)怒鳴りつけることによる人格否定や精神攻撃である。気にしなければいいだけの話なのかもしれない。しかし、長期間それを受けた身からすると、体の芯から震え上がって恐怖で身がすくみ、呼吸がままならず、不安で何も考えられなくなるのである。それだけではない。父はたびたび物を壊したり、人に向けて投げることや、癇癪を起して場を荒らしてはその片づけをやらせたものである。その根本にあるのは、教育心であろうが、人として大人として親としては間違っているだろう。

 父は世間でいう厳格な人だ。人としての考え方は尊敬できるところがある。特に勉強や仕事に関して打ち込むその態度や姿勢は素晴らしい。決断力や行動力は目を見張る。一部上場企業の立ち上げから管理職だった父である。自営業に転向したいと現在、農家を営んでいる行動力は、尊敬している。自身のやりたいことに対しての熱量や努力量は尋常ではない。しかし、それに反して、仕事以外になると悪い面ばかり見えてくる。父の家庭環境は都会育ち裕福でありながら、祖父の高学歴、それに伴った学力を求められること、また、祖父もかなり厳格であったため、温かい家庭ではなかった。色濃く男尊女卑も残っている親族であった。昔ながらの男を立て女はそれをしたたかに支えるといったような家庭構図であった。そんな家庭環境で育った父だからであろう。仕事に関しては本当に尊敬しているが、人として父を見た際に、人格が子供で幼く、自身の考えが通らないと癇癪を起すのである。父自身の気分によって世界は回っている。そこに何の疑問も否定も用いてはいけないのである。一人が寂しくて耐えられない節があり、かといって一人の時間がないと生きていけない父である。

 父のそれの対象は主に母である。大学卒で勉強好きの父と異なり、母は高卒で勉強もめっきりできない。その代わり、芸術面に関しては人一倍優れている。美術や作り出すということに関して、母は秀でている。父と母は、同じ職場で出会った。結婚したのは母が二十歳、父が二十代前半のことである。母は、よく言うとどこまでも疑うことを知らず純粋な人である。何よりも母の強みは忍耐力である。母は田舎の貧しい大姉妹を抱える家庭で育った。長女で会った母は、貧しい家庭で、妹たちのためにも学生時代からアルバイトをしてよく働いていた。母の親族も男尊女卑が色濃く残っている。母は高卒で会社の寮に入り、そのまま務めて父と出会い、結婚した。彼女は、考えることを嫌う節が目立つ。勉強に限らず、考えたり自分で何かしなければいけない作業を見つけたり、察して動くということが苦手な人である。父は母のそんな部分が気に入らないのであろう。常に向上心を持っている父は、母に何かと考えさせて勉強させたがっているようにも感じ取れるのだ。その度に母は感情を閉ざし、会話をする気もそぶりも一切なく、言われた言葉を反芻することだけしかしないロボットのようになる。本当に、一切、会話する気がないのだ。至極簡単なことでさえ、取り合おうとしない。全くと言っていいほどである。母のこの態度が父をより怒らせている原因の一つだろう。

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