密かな開示

@ccc_mptw

第1話 書き出し

 大切なことを忘れていた気がする。ふと唐突に、そんな思いを抱いた。


 いつからだっただろうか。恐怖と不安に満ち溢れてほかのことには手がつかなくなっていた。今もそのままであるが、、。夢の話をしていて昔のことに思いを馳せた。背景の色を変えるだけで、こんなにも印象が変わるんだなあなんて思いながら話を進める。日常的に夢を見ることはほとんどないが、稀にみる夢の内容を所々鮮明に覚えている。なかなか思い返す、という動作をしないことが原因であろうか。過去のことをあまり記憶していない。厳密にいうと覚えてはいるのだ。しかし、どこか他人事で気持ちが伴わないというか、不思議と記憶に靄がかかって曖昧になるかのような感覚に陥るのだ。近頃は青い色がやけに心地よく感じる。小説を書くというのは、案外面白い。ぐちゃぐちゃと散らばっていた感情が、思いが、考えが、形を成して生み出されている。常に誰かと会話しているかのような感覚になっているのは、あながち間違いではなかったらしい。思えば、わたし、という人間はいつを生きていたのだろ。遠い昔に自分ではなくなっていたような気がする。一時期、解離性同一性障害について熱心に調べたり、当事者の生活が垣間見えるYouTubeを見入っていた。自身も大変さはあるものの、そうなりたい、とすら思っていた。そこで見る当事者たちは、必ずと言っていいほど、パートナーや恋人がおり、どこかでサポートし支えてくれる相手がいたように思う。願ってもいたようなそれに、自分もなれたのか、という驚きが身体の中を駆け巡っている。忘れていた夢の話を、過去のことを思い返して、自分でない誰かがいたような、誰かが過ごしていたような、そんな気がする毎日のことを想った。根本が僕であることに変わりはないのである。どこか、何かが違う。そんなことにふと気が付いたのだ。

 僕の中の何かが、文字を起こすことで消費されている。形成されているとも言えよう。小説を書いている友人を間近で見たため、こんなふうに書き起こしてみているわけである。形として思考の形跡を残しておくというのは面白い。結構好きだ。好きといえば、僕は好きだと感じるものや人に対して、万物すべてや形を成さないものすべてに対して、ほぼ確実に相対した感情を同じくらい抱いている。好きという感情を抱けば、それと同じくらい深層心理の奥で嫌いだと訴えている僕自身もいる。これが先に述べたような、僕の中の何か、の正体に関わってくるのだろうか。

 僕が書いてみたかった小説というのはここではないらしい。形にして気づいたが、存外、ここのの仕様が気に入っている。書くならここが最適だろう。お腹がすいてきた。何か食べたい気分である。ここ何日か家から出ていないおかげですっかり引きこもり気質になってしまった。一体、ここは一話に何字まで書けるのだろうか。文字を紡ぐというのは変換が難しいものである。

 話を紡ぐことで僕が僕をぼく足らしめている気がする。おかしな日本語だろう。僕はなんとなくおかしな日本語のいくつかを、僕の中で大切な何かの一部分であるかのような扱いをしている節がある。一話の中にもかなり文字数を書けるんだななんてことに思いを巡らせながら、だらだらと思考が湧いた順に紡いでいる。僕はたまに、ものすごく狭い世界の中で何もかもにこだわりを持って閉じこもりたくなる。

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