第26話 ラブコメ詐欺と言われたら困るので

「そんじゃ、気を取り直して昨日の続きやってくぞ」

「あははは……。結局昨日はオークション眺めてるだけで終わっちゃったもんね」


 未来が苦笑いを浮かべる。


 本当はやりたい企画があったのだが、幸子に配信を食われてしまったので翌日に回す事にしたのだ。


 そういうわけで引き続きルナール商店街での配信である。


《待ってました!》

《さっちゃん大丈夫だったwww?》

《あれでも一応お前んところの生徒会長なんだろwww》


「あぁ。なんでもないって顔で学校来てたぞ。全裸会長とか呼ばれて全方向から弄られてたけど」


《www》

《それはそうwww》

《威厳もクソもないwww》


「さっちゃん先輩、不良には怖がられてたけど、普通の生徒にはクールで格好いい美人の生徒会長って人気だったから、あたし達の配信に出たせいでイメージダウンしてないかちょっと心配だなぁ……」


 不安そうに未来は言うが。


《大丈夫です! 会長のクールなイメージはただのコミュ障と格好つけなので!》

《僕達は素がポンコツなの知ってますし》

《会長S顔してるだけのただのドMだし、むしろ生徒との距離が近づいて美味しいとすら思ってますよ》

《ああああああああ! 言うなバカ! 私のイメージが崩れるだろぉおおおお!?》


 生徒会のメンバーらしきリスナーと幸子がコメントする。


《www本人いる》

《いいなこの学校www》

《お前のイメージなんかとっくに崩壊してるんだよwww》


「まったくもってその通りだな。あと、今後は呼ばれたからって全裸で来るんじゃねぇぞ。アレのせいでセンシティブ判定食らって昨日の配信広告剥がされたんだからな」


《すみませんごめんなさいもうしません嫌いにならないで†unknown†様》

《めっちゃ謝ってるwww》

《絶対泣いてるぞこれwww》


「さっちゃん先輩泣かないで! 九頭井君も先輩が親御さんに怒られないか心配してるだけですから!」


《†unknown†様! もったいないお言葉です!》


「いや言ってねぇし! 捏造すんなよ!」

「絶対言ってましたー! 九頭井君こそ恥ずかしいからって捏造しないでくださーい!」

「生徒会長がバカやって親からクレーム入ったらめんどくせぇって言っただけだ! 心配なんかしてねぇっての!」

「ふ~ん? その割にはお顔が赤いようですけどぉ~?」

「うぐっ!?」


 思わず時継は顔を隠した。


《あら~^^》

《上の顏は正直だな》

《良い人バレワロタwww》

《夫婦漫才もっとやって》

《九頭井に口で勝つとは……。未来ちゃんも強くなったな……》


「えっへん! 私だってやられてばっかりじゃないもんね!」


 ドヤ顔で未来が胸を張る。


「九頭井君も、配信の為だからって無理して悪ぶらなくてもいいと思うけど?」

「だから違うって言ってんだろ……」


 わしわしと時継が癖毛頭を掻く。


「こいつを調子に乗らせたらただでさえ制御不能な変態が余計に暴走するだろうが!」

「……ぁ」


 未来がしまったという顔をするが後の祭りだ。


《†unknown†様……好き……好き好き好き好き好き好き好き好き》


 コメントでは荒ぶる幸子が溢れる想いを連投している。


「はいスパムっと」


 とりあえずそちらは暫くコメント制限をかけておく。


《制限ワロタwww》

《ヤンデレ化すなwww》

《ほんま良いキャラしとるwww》

《もうレギュラーでいいだろこいつwww》


「ここまでキャラが濃いと逆に俺が食われるからな。準レギュくらいの距離感で丁度いいだろ」


《さっちゃんに食われる九頭井概念?》

《なにそれ美味しい》

《さっ×クズファンアートあくしろ!》


「お前らまとめて黙ってろ!」


 必殺のコメント制限を連発しつつ。


「茶番はこの辺にして本編始めるぞ」

「そうだよ! 折角大金手に入れたんだもん! 今日は九頭井君とルナール商店街でショッピングデートしてミライ(戦)の装備を強化しようの巻なのです!」


《デート!?》

《デート!?》

《デートぉおおおおおお!?》


 爆弾発言にコメントがざわつくが。


「デートじゃねぇよ!? なに言ってんだお前は!?」

「えへへ。その方が配信盛り上がるかなぁ~って」


 テヘッと未来が舌を出す。


「アホか! 炎上するわ!」

「え~! でも九頭井君、適度に炎上してるくらいの方が数字盛れるって言ってたよ?」

「今のはガソリン被って花火するレベルだっての! てか俺らは十分数字稼げてんだ! 余計な欲出すなっての!」

「……だってぇ。一応あたしのチャンネルなのに、最近生徒会長ばっかり目立ってるんだもん。九頭井君だって本当はあたしのパートナーなのに」


 不満そうに未来が頬を膨らませる。


《あらあら~^^》

《もしかして嫉妬してる?w》

《可愛い杉》

《『本当はあたしのパートナーなのに』》


「はっ! それも配信盛り上げる為の演技だろ? 騙されるかっての!」

「演技じゃないよ」

「………………」


 真顔で言われて時継の頬が強張る。


《おっと》

《修羅場?》

《流れ変わったな》

《ドキドキ……》


「――な~んちゃって! 騙されたぁ? あたしだって色々勉強してるんだから! いつまでも九頭井君任せの配信じゃないんだからね!」


 パチリと未来が片目を瞑る。


 時継はプイっとそっぽを向いて呟いた。


「……ゲームは相変わらずクソ初心者だけどな」

「それは言わない約束でしょ!?」


《照れ隠し乙》

《赤くなってんぞ》

《毎秒イチャイチャしてくれ》

《カーッ! 春が青ぇ~!》


「うるせぇよ! とにかく買い物すっぞ!」

「は~い!」


 買い物デートが始まった。 


 と、思いきや。


「って、なんで混沌世界なの!?」

「そんなもん普通に買い物したってつまんねーからに決まってるだろ」


 未来に内緒で別の企画を考えていた時継だった。

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