第14話 ありふれた波乱の前振り……?
超絶バズった天誅裁人逆天誅配信から一週間が経った昼休み。
いつものように二人でお昼を食べながら企画会議をしていると、わらわらと集まって来たクラスメイトが一斉にクラッカーを鳴らした。
「「「愛敬さん! 九頭井君! 登録者数5万人おめでと~!」」」
「わぁ! みんな、ありがとう! 早すぎて全然実感ないけど……。これも全部九頭井君のお陰だよ!」
サプライズのお祝いに、目をウルウルさせながら未来が言う。
「全くだ。収益半分じゃ足りないくらいだぜ」
「うっ……。じゃあ、七割でもいいけど……。古くなってる業務用の餅つき機とか買い換えたいから、三割くらいは残して欲しいな~なんて……」
未来が気まずそうに胸元で指をイジイジする。
時継は呆れた様子で言った。
「本気にすんなよ、ただの冗談だ。俺だって全部が自分の手柄だと勘違いする程バカじゃねぇ。一番難しい時期に頑張って数字増やしのは委員長だし、俺と組んでからもなんだかんだ上手くやってるだろ。正直、普通に配信上手いと思うぜ」
「九頭井きゅんッ……」
感動した様子で未来が時継を見つめると。
「……素直に褒めるなんて熱でもあるの?」
心配そうに額に触れる。
「ねぇよバカ! ボケた事言ってんじゃねぇ!」
突然のお触りにビクリとしながら時継がツッコむ。
「あははは!」
「配信みたいだな」
「笑かすなよ!」
二人のやり取りにクラスメイトは大爆笑。
最初はこんな奴が委員長の相棒だなんて! と否定的な見方をする者が多かったが、いつの間にかすっかりみんなファンになっている。
最近では学校に来るたびに「昨日の配信も面白かったよ!」「†unknown†様最強!」「次の配信が楽しみだぜ!」と声をかけられる程だ。
時継の人気は一年二組に留まらず、学校全体に広がっていた。
今朝なんか上級生の見知らぬギャルに「サイン貰えませんか!」と緊張した様子で頼まれた。
気分はまさに有名人である。
「あははは。でも、感謝してるのは本当だよ? 九頭井君を雇って一ヵ月もしない内に3000人が50000人になっちゃっうんだもん。やっぱり九頭井君はすごいよ」
しみじみと未来が言う。
「運が良かっただけだって。元々委員長のチャンネルはそこそこ登録者数いたし。AO配信は人気ジャンルだから、上手くバズりが続けばトントン拍子で数が増える。特に裁人を懲らしめたのがデカいよな。あいつはあちこちで恨み買ってるから、アンチの連中がご祝儀気分で登録してくれたんだろ。実際に同接がついてくるかはまた別だぜ。むしろ急に伸びた分期待が上がり過ぎて大変まである」
「平気だよ。あたしには頼れる†unknown†様と九頭井君がついてるもん! でしょ?」
「……まぁ、な」
未来のウィンクにドキッとして頬を掻く。
一応相手は学校のアイドルなんて呼ばれている美少女様だ。
画面越しならまだしも、面と向かってそんな事を言われたら照れ臭い。
「お? 九頭井の奴赤くなってね?」
「ひゅ~ひゅ~!」
「いけないんだ~! ガチ恋勢に怒られちゃうよ?」
「ながっ!? なってねぇよ! 目ん玉腐ってんじゃねぇのか!?」
慌てる時継にクラスメイトが大笑い。
変わり者のボッチのオタクが、いつの間にかすっかりクラスの一員になっていた。
「くっだらねぇ!」
ガシャンと机を蹴り飛ばしたのはクラスの不良の
元々は一年二組を支配するリーダー的存在だったのだが、時継が未来と配信するようになってから徐々に影が薄くなっていた。
最初はクラスメイトも大吾の顔色を伺っていたが、今ではすっかり過去の人である。
本人も自覚はあるのだろう。
「九頭井なんかただの痛いオタク野郎だろ! それをたまたま運よくバズっただけで掌返してチヤホヤしやがって。お前らみんなばっかじゃねぇの!」
言うだけ言うと、逃げるようにして教室を出て行った。
「なにあいつ」
「ただの妬みだろ」
「自分以外の人間が目立つと拗ねちゃうんだよね。本当ガキなんだから」
「気にすんなよ、九頭井」
クラスメイトが口々に励ます。
「……別に気にはしてねぇけどよ」
なんだか面倒事の予感がする時継だった。
†
大吾がやってきたのは封鎖された屋上に通じるひと気のない階段だ。
周りに誰もいないことを確認すると、ガツンガツンと壁に頭をぶつけながら、神に許しを請うようにして叫ぶのである。
「うわあああああ! ごめんなさい†unknown†様! これもあなたの為なんです!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。