第10話 天に代わって悪を討つ、天誅チャンネルの天誅裁人です
「皆さんこんばんは。天に代わって悪を討つ、天誅チャンネルの
爽やかなイケメンボイスで話すのは、銀髪白学ランを着たクールな二次元キャラ。
天誅チャンネルのch主であるVチューバーの天誅裁人である。
本人は混沌としたAOに自浄作用を促すダークヒーローを自称しているが、大半の人間からは炎上系、又は迷惑系として認識されている。
有名プレイヤーや人気配信者に難癖をつけ、裁きと称して害悪行為を行う配信スタイルで、界隈の人間からは
デビューしてまだ二年ほどだが、登録者数は30万超え。
女性人気も結構あり、アングラAO界隈の闇のプリンスなんて言われている。
「という事で、本日のターゲットはこちら。最近話題急上昇中の新人配信者、愛敬堂ミライchの愛嬌未来ちゃんとその相棒、†unknown†こと九頭井時継君です」
手配書風に飾られた配信画面に邪悪な笑みを浮かべる二人の画像が表示される。
〈可愛いじゃんwww〉
〈絵に描いたような清楚系ビッチ〉
〈なにこのムカつくガキwww〉
〈カップルチャンネルかよ〉
〈ガキはガキらしく家で勉強してろ〉
〈しねしねしねしねしねしねしねしね〉
荒れたコメントが流れるのはいつもの事。
よく知らないが目立っている奴をボロクソに叩いてスッキリするのがこのチャンネルの趣旨である。
そんな所に集まるリスナーだから、民度はお察しだ。
「同志からのタレコミによれば、彼女は実家の売れない和菓子屋を救う為に配信者になってAO内で宣伝活動をしてるとか」
〈は? 良い子じゃん〉
〈そんなの嘘に決まってるだろ。絵畜生の設定みたいなもん〉
〈お涙頂戴でスパチャ稼ぐ作戦だろ〉
〈このコメントは削除されました〉
「ところがですね。僕が調べた所では、愛敬堂という和菓子屋は実際に存在するみたいです。こちらが証拠画像」
〈ボロwww〉
〈これ本当に営業してんのwww〉
〈食い物売るってレベルじゃねぇwww〉
〈これは売れなくて当然www〉
「見た目はともかく、彼女の実家が売れない和菓子屋で、それを救う為に配信活動を行っているのは本当みたいです」
〈良い話じゃん〉
〈なにが悪いんだよ〉
〈ここまでがいつもの前振り〉
「確かにそれだけなら良い話と言えなくもありませんが」
画面に愛敬堂のバター餡子最中が不自然に小さく表示される。
「こちら、この店で売っている最中みたいなんですけど、いくらだと思います?」
〈ちっさwww〉
〈精々100円だろ〉
〈50円でも買わない〉
〈最中だろ? 高くても200円がいいとこじゃね〉
「と思うでしょ? それがなんと400円」
〈wwwwwwwwww〉
〈ぼりすぎwww〉
〈この大きさでwww〉
〈はぁ? 舐めてんのか?〉
〈今時和菓子にそんな大金出す奴おらんやろwww〉
「ですよねぇ? これじゃ売れなくたって当たり前。自業自得という奴です。それを配信を利用して善意のリスナーに売りつける。これってはたして良い事でしょうか?」
〈悪だろ〉
〈邪悪すぎる〉
〈詐欺〉
〈AOを宣伝に利用してんじゃねぇよ〉
「その通り! 本来AOはただのネットゲームです。それがいつの間にかこの通り、企業の宣伝やインターネットアイドルモドキのプロモーションの場になってしまいました。まったく、嘆かわしい事です。さらに許せないのは、彼女はろくにAOを知りもしないのに見た目で登録者を釣っていること」
画面が切り替わり、体操服姿の未来が表示される。
〈エッロwww〉
〈百万回抜いたwww〉
〈メス穴ムーブうぜぇ〉
〈これだからオンナ配信者はクソ〉
〈言うほどエロいか?〉
少しでも相手を擁護するようなコメントがあれば即座に消される。
「このように、彼女はツイッターに卑猥な画像をアップして露骨に登録者数を稼いでいます。バズる為なら手段を選ばない。まさに承認欲求のバケモノ、Z世代って感じですね。これでは真面目に頑張っているAO配信者が救われない!」
〈ほんそれ〉
〈配信者なら面白さで勝負しろっての〉
〈裁人様の言う通り〉
〈こんなのがバズって5年やってる俺のchが二桁とか絶対おかしい〉
「そして、最近の彼女の異常なバズりを裏で演出していると言われているのが先程紹介した、†unknown†こと彼女のクラスメイトの九頭井時継君です」
再び画面にバカ笑いする時継のドアップが表示される。
〈クラスメイトwww〉
〈殴りてぇこの笑顔www〉
〈見てるだけでムカムカする〉
〈†unknown†ってなに? 痛すぎだろwww〉
「詳細は不明なんですが、どうやら彼は高校一年生ながら、かなりの配信オタク&AO廃人みたいですね。ちなみにこちらがこの二人がバズるきっかけになった配信の切り抜きです」
〈我が静寂を邪魔する者は誰かwww〉
〈イタタタタwww〉
〈キャラ崩壊早すぎだろwww〉
〈こいつ普通に面白くねwww〉
予想外にウケてしまい、裁人は慌てて動画を止めた。
「確かにこれだけ見れば面白い少年に見えますが。僕の調査によると、そもそもこの配信自体が彼の仕組んだ台本、でっち上げだったという噂もあります」
〈マジ?〉
〈そこまでやるかwww〉
〈こわっ〉
「真偽は定かではありませんが、後に彼女は配信上で収益の半分と和菓子食べ放題で彼を雇ったと発言しています。クラスの冴えないオタク君がアイドル級の美少女に言い寄られたら、多少汚いお願いだって聞いてしまうでしょうね」
〈絶対そう〉
〈そもそもクラスメイトと偶然同じ鯖でネトゲしてたとか出来過ぎなんだよ〉
〈
「他にも疑惑は色々ありますが、この辺で十分でしょう。それでは同志諸君! 審判の時です! 愛敬堂ミライチャンネルは裁かれるべき悪か、それともなんの罪もない無垢な子羊か!」
〈悪だろ〉
〈完璧悪〉
〈悪に決まってる〉
〈ぶっ潰せwww〉
お決まりの流れに裁人がニヤリと笑う。
「よろしい。ならば天誅を! 神も仏もない世界、天に代わってこの僕、天誅裁人がこの世の悪を裁きましょう!」
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