第16話
「針都家が今どんな状態かわかっているでしょう!?」
「だからと言って人を了承もなしに売るとは非人道であるとは思わんのか!?」
「まあまあ、じいさん。落ち着いてください。こちらの理由も聞いてくだせえや。」
この舐め切ってるような言い方をしているのが現糸踏家当主、糸踏殊金。
その隣にいるのがこの前の明金。
人を舐め切っている感じが昔と変わっていないなと凛は思った。
「実はね、うちの明金が駄々こねてさぁ。こいつがこんなに欲しがるものなんてなくって。んで聞いてみれば、なんと仰天、針都家の家出者だったんだよ。」
「それで商談を持ちかけたのか?」
「あぁ。な?明金?」
「はい!」
明金は嬉しそうな顔でこちらを見てくる。
目の奥の暗い部分と目が合ってゾクっとする。
「そんで、それを何も報告せず、勝手にやったのか?」
「そうだな。」
「ふざけるな!!!花夏の気持ちも知らずに!」
自分のことを話していて、すぐにでもここから逃げ出したい。
「なあ、どうしてじいさんそんなにその子にこだわるんですか?」
「彼女の身の上が心配だからだ。」
「本当か?」
「なんだ?何が言いたい?」
「彼女の目が目的なんだろう?彼女の目には今は一体、何が写っているのか?知りたいとは思わんのか?私は、それが欲しいのだ。」
『本当?みんな、私の目が目的なの?』
彼女の目は未来が見える、なんていう強さが誰もが欲する力なのだ。
本当はそんな力はない。だが、彼女は頭が良かった。
先の先まで考えるからこそ未来が見えるなんて言われてる。
だからこそ、この入れ替わりの世界で彼女の力は喉から手が出るほど欲しいのだ。
『やっぱり、私の能力が目当てなんだ。』
なんて辛いことも考えていると、後ろから大きな音がした。
と思ったら彼女の目の前には3人がいた。
「うちの総長を物扱いするな。」
「そうっす!!どれだけあんたが偉いからって許されることと許されないことがあるっす!!!」
「嫌な会話を聞いたのはまだいいとして、うちの総長に何しようとしてんだ?」
左牙とイオリと右牙の発言はこの場にいる全員を包み込んだ。
彼らの敵意は凛以外の全員に向けられている。
もちろん、当主にもだ。
そんな中、1人が声を上げた。
「元はと言えば、お姉ちゃんが悪いんじゃないんですの!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます